第53話
その夜も早めに寝た。瞼を閉じる直前、窓に映った月に雲がかかっていくのがやけに瞼に焼き付いていた。
夜遅い時間だろうか、酷い夢を見ていた。
敵は怪物さえ引き連れた圧倒的な大軍だった。
だがこちら側は防衛線の構築が間に合わず、野戦に持ち込まれて次々と蹴散らされていく。ほどなく王都の城門が破られ、王宮も火の海に。
気が付くと自分は捕らえられていた。振り向くとヒトミもエリも捕らえられ広場に連れていかれる。
待っていたのは巨大な斧を持った怪物のような大男が三人。
「やめろ……」
乱暴に壇上に押さえつけられる三人。ソウタが横をなんとか振り向くと、エリめがけて斧が振り下ろされる。
「やめろ!」
台を斧が叩く音と群衆から湧き上がる歓声。何も、何もできなかった。
「ちくしょう ちくしょう!」
次はヒトミの番だった。
何とか振りほどこうともがくが何かがのしかかってきて動けない。
かろうじてこちらを向いたヒトミが懸命に口を動かしていた。
「ごめんね……ソウタくんごめんね」
直後に斧が振り下ろされる。
「やめろぉ!」
だが、直後に場面が変わる。
何かに圧し掛かられて体が動かないのは同じだが、先ほどと打って変わって柔らかな桃色の、まるで母親の胎内にでもいるかのような優しい暖かさに包まれているのだ。
乾いた口に温めの僅かに甘い水が流し込まれるので飲み干す。五臓六腑に染み渡る甘さだった。
ほどなく火照っていた身体が開放されたのか上半身から楽になっていく。やがてゆっくりと下腹部から股間まで開放されていき、その心地よさに敏感に反応して股間が立ち上がる感覚が。
するとそこに、人肌の温かさの何かが塗りつけられるのを感じる。心地よく気持ち良い感覚だが、このままでは絶頂に達してしまうと思った時、唐突に世界が切り替わってしまった。
外からは屋根を叩きつける大きな雨音が聞こえてくる。豪雨のようだ。
ゆっくりと目を開けると、誰かが傍にいるのがすぐに分かった。ほんの間近にやわらかい匂いが、肌に触れる髪の毛が、そして見知った顔があったからだ。
夢から覚めたばかりで頭がほとんど機能していないので状況はよくわからなかったが、ヒトミが自分に馬乗りになって、顔を覗き込んでいたように見受けられた。
「なんだ、ヒトミか……」
「!!」
その直後、ヒトミは声も挙げずに脱兎のように飛び上がると、部屋の隅に離れて小さく丸まる。
そして壊れたスピーカーのように、滅茶苦茶な声を挙げて泣き崩れてしまった。
「……ぁぁあ!あああ!!」
「なぁ……何があった?」
ヒトミは突拍子も無いことをしでかした直後に、我に返ってうずくまって泣きじゃくってしまう癖があった。
ソウタは起き上がったところで異変に気が付く。着ていたパジャマは上着の前ボタンが全て外され、シャツも上に上げられ上半身はむき出しにされていた。
さらにズボンもパンツごと膝下まで下ろされて下半身が露にされていたうえに、ぬるぬるとした生暖かい粘液が、股間に塗りたくられていた。
電気を点け、何とかズボンを戻したソウタは、這うようにヒトミの傍に向かう。
足元に蓋の開いたチューブが転がっていた。それはローションで、しかも髭剃り用ではなく性的な用途のものだった。
「っ!!来ちゃダメ!来ちゃダメぇ!」
ソウタの接近に気が付いて、必死に喚くヒトミ。
「……。いいから全部話してくれ」
ソウタはヒトミの眼前に腰を下ろす。ヒトミの姿を見ると、着ていたのは彼女用のパジャマでなく、サイズが大きすぎるソウタのTシャツ一枚だけ、それも自分が昨夜着ていたものだった。
「私、最低なの!最低のケダモノなんだよ!!」
「さっきは……何をしようとしてたんだ?」
「……ぁぁあ!あああ!!」
ソウタは弱々しく、そして優しい声で尋ねるが、ヒトミは髪を振り乱しながら泣きじゃくっていた。
Tシャツの首まわりは彼女には大きく広がりすぎていて、今のソウタの体勢からは、そこから彼女の胸からお腹まで、あられもない姿が見えていた。
上は胸の先端まで見えているからやはりTシャツ以外に着ていない。
裾も腰元までまくりあがって、こちらも太ももから腰まで丸見えになっていたが、ショーツを履いている様子が無い。
自分の着衣を上下とも開放し、股間にローションを塗りつけ、文字通りTシャツ一枚だけの格好で、ソウタの腰に馬乗りになっていたという事は……。
ダウンした当初はともかく、ここ最近回復が芳しくなかった理由は、そういうことだったのだろう。
「いいかヒトミ、俺は何も怒っちゃいない……。教えて欲しいだけだ……」
「私は、私はぁ!」
そこから、関を切ったようにヒトミは自分の所業を話し始めた。
およそ一週間前の事。ソウタが深夜にうめいていたので、それに気が付いたヒトミは、ソウタのパジャマを脱がせて体中の汗をタオルで懸命に拭っていた。
懸命に拭っているうちにソウタの裸体と熱気にあてられて、段々とヒトミの気が高ぶっていく。
そしてその時、ソウタが疲労困憊の時に起こる生理現象で、ズボンを突き破らんばかりに股間を猛らせていたのを目にしてしまったのだ。
ヒトミは戸惑いながらも、体の奥底から込み上げてきた欲求に抗えずに、ごくりと息を呑みながらソウタのズボンを下着ごと下ろしてしまう。
すると中で屹立していた猛りがヒトミの眼前に勢いよく飛び出したのだ。
ヒトミはさらに大きく息を一飲み。
そして理性に基づいて、ソウタの股間の汗を恐る恐るタオルで拭っていたが、とうとう堪えきれずに、ソウタの猛りに直に素手で触れ、愛撫してしまう。
ほどなく彼女の柔らかな指先が与える刺激に反応して、ソウタの屹立していた猛りから、白く濁った命の雫が勢い良く噴出してしまう。
「ひゃっ!!」
その白く濁った濃厚な雫をその手に浴びたヒトミは、大騒ぎしたり取り乱したりせず、べっとり濡れた自分の手を見入ったまま、しばし呆然としていた。
そして何を思ったのか、その場でその雫で濡れた手の匂いを嗅ぐと、そのまま自分の秘所に当てがい、己の慰めに没頭してしまったのだ。
「私……、最低だ……」
気をやってからようやく我に返ったヒトミは、身もだえするほど激しい自己嫌悪に襲われ、逃げるように浴室に飛び込むと、服を着たままシャワーに打たれ、うずくまって泣きじゃくってしまう。
そしてようやくソウタをそのまま放置していた事に思い至ると、慌てて戻って証拠を隠滅した。
ソウタは翌朝に目を覚ましたが、意識は朦朧としたままで、昨夜の事は全く感知していなかった。
ヒトミはそれを見て安堵したが、その日から彼女はもう己の感情を、噴出してくる衝動を抑えることができなくなっていた。
「ソウタくん……」
その夜からというもの、ソウタが目覚めず寝ながら喘いでいれば、水分補給として薄めたスポーツドリンクを口移しで飲ませたり、汗を拭う際に地肌に舌を這わせるなどの行為を繰り返していた。
それでもソウタが目覚めないのを確認すると、ヒトミは噴出してくる衝動に駆られるままに、ソウタの下着を下ろして猛りを露わに。そして購入してきたローションをそこに塗りつけ、ついに馬乗りになった。
「っ!!」
ヒトミはソウタの股間にそそり立つ猛りを自分の秘所に乱暴に埋め、そのまま息を荒げて身悶えしながら一心不乱に身体を揺らす。
その際にヒトミは自身の純潔を散らしていたのだが、その破瓜の痛みを全く意に介さずに行為を続けた。そしてついに自らが達すると同時にソウタの命の雫を膣内に吐き出させてしまったのだ。
「……」
ヒトミはソウタの上からゆっくり退くと、ぐったりと壁に持たれかかって、自分の秘部から溢れるソウタの雫を呆然と眺めていた。
やがてソウタに掛かっていた命の雫と自分の純潔を散らした真紅の証を拭い去ると、ソウタの服をきちんと整え、自らは何ら痕跡を拭うことなく下着を履いて眠りに就いた。
ヒトミがその身を清めたのは翌朝になってからだった。
そしてその行為はその一夜限りに留まらなかった。
以降ヒトミはソウタに飲ませる薬に栄養剤と称して精力剤を混ぜるようになった。
そしてソウタが目覚めず、刺激して股間がそそり立つのを確認すると、またも馬乗りになって行為に及び、ソウタの命の雫を、夜な夜な搾り取っていたのだ。
「私は寝込んだソウタくんを毎晩襲っていたケダモノなんだよ!ソウタくんの体調が戻らないのは、毎晩私が襲っていたからなんだよ!それにさっきだってソウタくんを襲おうとしていたんだよ!」
全てを洗いざらい告白し、顔をぐちゃぐちゃにしているヒトミに対して、ソウタは言葉が出てこなかった。
意識が無い自分を何度も襲っていた事に腹は立たず、嫌悪感も全く湧かなかったが、どうしてそんな行動に出ていたのか、その疑問だけがゆっくりと湧いてきた。
「……。どうしてそんなことを?」
「……」
するとヒトミは、向こうでの己の置かれていた状況を途切れ途切れになりながら話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます