第105話 魔王と勇者は、日本で初の販売をしたかも? (8)

 更に困惑と動揺を続ける、乙女面したエヴァだが。


 このまま、動揺をさせておく訳にはいかぬから、儂はエヴァの許へと近寄り。


「隣の御主人が言っておる。女子おなごが好む長い物といえば、殿の腹部の下にある。お前を射止めた聖剣のことだよ」と。


 儂は小さな声で、エヴァの耳元で囁きながら説明をしたのだ。


「えぇ~っ、うそ~?」


 エヴァは儂の説明を聞き、声を大にして叫んだ。


 儂等の正面と左を通行するお客様達が、エヴァの叫びを聞き、驚きこちらを振る向くぐらい。


 だから通行するお客様達はワッと騒めいたが。直ぐに隣の店の御主人と我が家の殿が、騒めきながらこちらを向くお客様達へと順に。


「ほら~。これを食べてみ~? 日生にきたから牡蠣を食わなければいかん~」


 と、隣の御主人が勇んだ声をかければ、我が家の殿が優しい声色でお客様へと。


「さぁ~、どうですか~? 今は朝なのでまけますよ~」


 二人がエヴァの声に驚きこちらを注目するお客さまへと次から次へと試食を渡し始めだした。


 我が家の殿がお客様達に、試食として差し出し振る舞う物は。


 先程から女子おなごである儂とエヴァが注目──。


『ポリポリ』と、音を立ながら試食をしていた。黄金色に輝く芋ケンピ──。


 それに対する隣の御主人は、この日生で養殖された牡蠣の佃煮──!


 両者龍虎の如く、お互いの御店の看板商品をお客様達へと試食として振る舞いながら。


 お客様達の反応を伺う──。


 特に先程我が家の殿に言われたのだが。


「ちくわのオジサンの売り方はよく見て学べばいい……。俺もこの日生の五味の市にくる迄は、何処で販売をしても一番良く売り上げをあげていたけれど。ここにきて始めて、ちくわのオジサンに売り上げを負けたぐらい。販売の上手なオジサンだから……。多分死んだ家のお袋よりも販売の方が上手だと思う……」




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