第96話 五味の市で魔王と勇者さま、販売するかも? (14)
「はぁ~、上島の嫁さん。この二人のお姉さんが?」
「う、うん、実はオジサン、そうなのだよ……」
「でも、上島……。お前以前、嫁さんがいないとか言っていなかったか?」
う~ん、またまた、でた~、でた~。と、いった感じなのだよ。
今日はこれで何度目なのだろうか?
我が家の魔王な奥さまと勇者な奥さま二人を見て驚愕──。
俺に嫁さんなどいたのか?
と、いった様子で大騒ぎになっているのだよ。
まあ、それは、それで仕方がないのかも知れない。
だって俺が五味の市で販売をさせてもらうようになって十年近く……。
いや、十年は越えたかな?
それぐらいは年月も経っているからね。
そして俺は、毎年の如く五味の市に販売にきている。
その都度、皆さんに言われ続けてきた言葉は、『上島さん、嫁さんは未だかぁ~?』とか、『早く結婚しろ~?』とかね。
その他にも、『今年も独身か、上島は~』と、最後の言葉を漏らしたのが、竹輪のオジサンなのだよ。
特に竹輪のオジサンは俺に何度も、「上島~。嫁さんは誰でもいいじゃないか~?」と、何度も訊ねてくるから。
俺も最初の頃はね、「はぁ~、そうですね~」と、気落ちをした声色で言葉を返していたのだよ。
でもね、竹輪のオジサンは、歳の為もあるのか……。
まあ、竹輪のオジサンは、九十歳を過ぎているからね。
もしかすると? 俺に告げたことすらわすれているのかも知れない?
だって彼は、毎年の如く俺に訊ねてくるから。
「俺はねぇ~。オジサン~! 女性の趣味にうるさいのよ~。だから誰でもいいと言うわけにはいかないのだよ~。もう誰が見ても驚愕するような美人じゃないと結婚をしない~。わかった~? オジサン~?」
俺はこんな感じで竹輪のオジサンに、不満をあらわにしながら何度か告げたことがあるのだよ。
それをさ、今俺は、竹輪のオジサンに、奥さま二人のことを訊ねられて、ふと過去のことを思い出した。
となると? ここは、竹輪のオジサンに、『どうだぁ~、家の嫁さんは~? 大変に美しくて、美味しそうな容姿をしているだろう~? オジサン~?』と、自慢をするしかないと。俺は思ったのだよ。
だから俺は竹輪のオジサンに。
「ん? まあ、生きていたら色々あるじゃない? 色々とねぇ~。オジサン~? 昨日、家のやつが、やり直したいって、俺に電話をかけてきたから迎えに言ってきたのだよ。だから今日は、家の女房を二人連れてきたのだよ~」
俺はね~、『エッヘン~!』と、いった様子で、竹輪のオジサンに告げた。
と、いうか。竹輪のオジサン告げてやったのだ。
でッ、告げ終えると、俺の奥さま二人のギュッと締まった。縊れた腰に手を回して、俺の方へと引き寄せる。
「ど、どうした~。殿~。急に~。儂は、び、びっくりするではないか~」
「あぁ~ん。旦那さま~。どうしたのですか~。そんなにエヴァに甘えたいのですか~?」
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