第71話 魔王様と勇者さま、日本で初の【牡蠣】を食べます! (8)

 ……ん? なぬ? なぬ、なぬ、何ですと~!


 何と~、これは⁉ 一体どう言うこと~? なの、でしょう~?


 というか? 魔王レヴィアタンにやられてしまいました。勇者エヴァは~。これでもう、エヴァは轟沈です~。


 流石魔王レヴィアタン! 一国の女王! エヴァの隙を狙い。旦那さまへと、自分は可愛いでしょう~? アピールをし始めました。


 だってレヴィアタンは魔王の癖に、我が家の旦那さまに、自分自身はこんなにも可愛いこともできるし甘えることもできる女性なのだぞ~。アピールをしながら、自身の口の中に牡蠣の身を運び、入れて欲しいと、甘え声色を駆使して嘆願を始めだしたのですよ。


 それも『あぁ~ん』と、自身の口を大きく開けながらの催促──。


 そんな彼女の様子を凝視すると。先程からエヴァが不満を漏らしている通りで、『魔王にしてやられた……』と、自身の脳裏で思っている最中なのです。


 ……ん? そんなに、してやられた、と思っているなら、エヴァ自身も旦那さまへと、甘え声色を駆使して、牡蠣をお口の中に入れてもらえばいいのではないか?

 と、傍からエヴァ達家族のことを見ている者達は思う? ですか。


 う~ん、まあ、確かに。傍から見ている皆さんの告げている通りでは御座いますね。


 実際我が家の旦那さまは、人種の殿方なのに、えらくエルフであるエヴァのことがお気に召したようで。事あるごとにエヴァの身体に触れ触られてきます。


 まあ、その辺りは、傍から見ている皆さんもお気づきだと思うのであえて説明の方をしなくてわかると思うのでしません。


 まあ、そんなエヴァLOVEの旦那さまですから。


 エヴァが『あぁ~ん』と、甘え声色を漏らしながら、雛鳥のようにお口を開けば直ぐに、牡蠣の身を入れてくれるとは思うですが。


 先程からエヴァが申している通りで、エヴァはどうも食べ慣れていない海の特産品が苦手でして……。


 魔王レヴィアタンのように、我が家の旦那さまに、牡蠣の身を添えてくださいと嘆願をすることができません。


 う~ん、でも、魔王レヴィアタンも内陸部育ちの筈ですからこのように生臭い食べ物は苦手だと思うのですよ?


 でもレヴィアタンをエヴァが横目でチラチラと見て確認をしても不快感があるようには見えないのですよ。


 それどころか? 魔王レヴィアタンは、我が家の旦那さまに、自身の口へと添えてくれた牡蠣の身を。


〈ムシャ、ムシャ、パクパク〉


「ん? 殿~。これはまた大変に美味しいではないか~。儂も初めて牡蠣と言う物を食するのだが。こんなにも美味しいとは思わなかったからのぅ~。少々驚いたぞ、殿~」


 魔王レヴィアタンは、この牡蠣と言う名の異形な物を美味しいと言っては食している状態なのですよ。


 それもビールを次から次へと、旦那さまに注がせながら勢いよく飲んでいる状態──。


 そしてこんな感じで、我が家の旦那さまに、牡蠣は大変に美味しい物だったと絶賛の言葉を送るのです。


「う~ん、余りこの牡蠣という物は、器量は良くは無いが。この柔らかい歯ごたえと濃厚な味わいが堪らないの~。それに先程殿に絞ってもらった果実の酸味の味もよく合い美味しいから。お酒の方も次から次へと進む……。本当に食べてみないとわからんものじゃなぁ~」


 レヴィアタンから牡蠣は美味しいと絶賛の言葉をもらった旦那さまは。何故だか、エヴァにはわかりませんが上機嫌──。


 だって満面の笑みを浮かべながら。


「でしょ~、でしょ~、レヴィア~。俺も子供の頃は、わりと牡蠣が苦手な方でね。中々食べることができなかった。でもさぁ~、ふと俺自身気付いたら。牡蠣を食できるようになっていてさ。今では、毎年冬になると、この牡蠣を食べるのが大変に楽しみなのだよ」


 と、魔王レヴィアタンへと告げた。


 ん? あれ? 今の旦那さまの台詞の中に、自分自身も幼少の頃は牡蠣が苦手だったと申していましたね。


 と、なると? もしかして? 旦那さまも幼少期は、牡蠣の容姿に惑わされて、食わず嫌いだったのでしょうか?


 エヴァはそんなことを思案し始めると。


「儂が以前きた時もそうだが。この日本の食事は本当に美味しい物が多々あるな? 殿?」


「えっ? そうなの? レヴィア?」


「うん、そうなのだよ~。殿~。儂は以前この世界にきた時も、殿から色々と食べさせてもらったが。本当に美味しい物ばかりだった~」


 魔王レヴィアタンは、何だか遠い目──。


 以前この世界に着た時にも、旦那さまに日本の食べ物を色々と食べさせてもらったと説明をしていました。


 そして彼女が食した物はみな大変に美味しい物ばかりだと、遠い目──。


 そう、走馬灯を見るように、旦那さまへと説明をしていました。


 そんな彼女の様子をエヴァは見ていると──。


 彼女は若い頃の自分……。旦那さまと逢い、恋に堕ちた時の、過去の様子を懐かしく思い出しているのだろうと思いました。


 だから、自身の愛する旦那さまが、今宵の宴の為に用意をしてくれた食事ならば、先ず間違え無しに美味しいと確信ができたから平気で、この牡蠣を食べることができたのだろう?


 と、エヴァは傍から二人の様子を見て思い感じました。


 だからエヴァも安心をしてこの牡蠣を食してみようと思います。


 エヴァの大事な旦那さまが用意をしてくれた食事ですから。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る