第68話 魔王様と勇者さま、日本で初の【牡蠣】を食べます! (5)

「ん? と、殿~! こ、これは、本当にお酒なのか~? 喉越しの方も大変に良い飲み物のようだが……」


 日本のビールを飲み、最初に味に驚愕して、俺に言葉をかけてきたのはレヴィアの方だった。


 だから俺はレヴィアに、


「うん、それでも。ビールはお酒だよ。レヴィア。少しばかり苦みもあるけれど本当に飲みやすく、喉越しがいいお酒だろう。ビールは?」


 と、言葉を返す。


 すると我が家の魔王な奥さま……だけではなく。勇者な奥さまも、二人揃ってビールの味に感無量!


「あああ、殿の言う通り。大変に喉越しも良く。ジュースみたいに大変に飲みやすいお酒のようだ。このビールは……」


「はい、旦那さま、レヴィアの申す通りで、本当に喉に頭に『キ~ン』とくるこの感じが大変にいいですね。旦那さま。本当に美味しいですよ。このお酒……。もう一杯、エヴァに注いでください。旦那さま~」


 まあ、こんな感じで、ビールの味と喉越しの方が気に入り、奥さま達二人は、もう一杯グラスにビールを注いでくれと催促してきたよ。最初の時とは違ってね。


 だから俺は二人の奥さまに。


「は~い、どうぞ~。二人とも~。じゃんじゃん飲んで~。それに二人ともビールが足りなくなれば直ぐに注文をするから、気にせずに沢山飲んで、二人とも~」

「うむ、すまんの~、殿~」


「あっ、はい~。ありがとうございます、旦那さま~。本当にこのビールは大変に美味しいですね~」


 先程は傍から見ている皆さんも知っての通りで、二人とも揃って、ビールを口に含むことを少し悩み拒んだ。


 だから最初は、異世界の人達には、ビールが口に遭わないのかな? と、思った。


 でもね、二人は、今の状態を見ればわかる通りで、一度ビールを飲みだすととまらなくなってきたみたいで、ピッチの方も早くなり始めたよ。こんな言葉を俺に告げながら。


「よ~し、ビールを飲むぞ~。殿~! もっと、もっと注いでおくれ~、殿~! 儂はまだまだ飲みたりないから~」


「エヴァもレヴィアと一緒で、未だ飲みたりませんから、旦那さま~。だからエヴァのグラスに、もっとビールを注いでください~。お願いします~。特にエヴァは、この喉にくるシュワシュワ感が大変に気に入りました~。これなら、このビールというお酒はいくらでも、喉に通りそうですよ。旦那さま~」


 まあ、こんな感じで、夫の俺に笑顔を振り撒く、奥さま達二人なのだ。俺は二人の奥さま達のこんな笑顔を見ていると、本当に嬉しくなり安堵するのだよ。


 だってさ、この日本にくるまでは、二人は魔王と勇者として、多々ある物語のように、生死をかけて争っていたわけだから。


 でも、そんな二人が仲良く俺の左右で、お酒を飲み、宴をしているのだから本当に俺は嬉しくて仕方がないのだよ。


 それと今晩からは俺も一人でない食卓だから。そのことも含んで、とても嬉しい。本当に幸せだと実感もできる。


 まあ、そんな夜だから、俺はいつもよりも酔いが早く回りそうだ。

 そしたら、奥さま二人の膝で転寝でもしようかな? と思う。幸せな俺だった。




 ◇◇◇◇◇


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