第67話 魔王様と勇者さま、日本で初の【牡蠣】を食べます! (4)

「さあ~、飲んで~、飲んで~、二人とも~。早く~、早く~……。ほら~、ほら~。注いであげるから~。おっ、とっとと……」


 まあ、俺は、とにかくこんな感じで、上機嫌!


 今二人のコップに注がれているビールを早く飲むようにと急かしている最中──。奥さま二人が飲み終えたら、また俺が優しく注いであげようと思ってね。


 う~ん、でもさ、もしかしてだが? 今の俺の様子って、傍から見ると只の酔っ払いのオジサンにしか見えないかも知れない?


 でもさ、奥さま二人の様子を見ると嫌がる素振りもない。


 どちらかと言えば、嬉しそうに見える。


 それに、俺自身も今日はハッピーな一日……。


 俺の顔も先程から笑みを浮かべては緩みっぱなしで、笑いもとまりそうにないぐらい嬉しいから、お酒の方もジャンジャンと飲んでいくつもりだから、奥さま達二人にも次から次へ注いでいくからね。


 と、いうことで、俺にビールを注がれた二人の奥さまは。


「おっ、すまんの~、殿~」


「あっ、おととと、すいません~、旦那さま~。では、いただきます~」


 俺が二人の奥さま達に、急かすようにグラスに注いだビールの泡が、吹き漏れしてこぼれそうになる。


 すると奥さま達二人は、モコモコと膨れ上がるビールの泡に対して驚愕──。


 二人揃って大きな目を見開いて驚愕をしているようだから。俺は、そんな二人の奥さまの様子を見て、レヴィア、以前こちらの世界にきた時には、ビールや炭酸飲料は飲まなかったのだと直ぐに思った。


 それと二人の奥さまを見て面白いと思ったのは、中々コップに唇を当てない。只、グラスに泡立つ様子を『じぃ~っ』と見詰め睨めっこ──。


 余程炭酸の泡が珍しいらしいみたいだ。二人揃って大人しく凝視をしているから。そんな二人の様子を見ていると、俺の顔が更に緩みそうだ。


 だって俺の口から『クスッ』と笑みが漏れるくらいだから。


 う~ん、でもさ、俺の大事な二人の奥さま達は、炭酸の泡に違和感を覚えるのかも知れないが?


 二人ともビールって本当に美味しいのにと、俺は内心思いながら、最初に自身の唇をコップへと当てて──。『ゴクゴク』と、喉を鳴らしながら二人の奥さまの面前で、一気にビールを飲み干してみせた。


 飲み終えると、俺の口から自然と。


「旨いんだなぁ~、これがぁ~」


 と、安堵したような声が漏れる。


 だって、皆も知っての通りで、本当にお風呂上りのビールは美味しいのだ。

 それに俺は先程迄、奥さま達二人に、沢山の奉公──。


 お風呂の中でも長風呂──。


 茹でタコになった俺だから、尚更風呂上がりのビールは格別美味しい気もする。


 まあ、そんな様子の俺を奥さま二人はね。


 多少は猜疑心もあるようだが、取り敢えずは、主人の俺のビールを飲み干した様子を見て。ビールを飲める物と認識し飲み始めた。


〈グイグイ〉


〈ゴクゴク〉


 と、喉を鳴らしながら。我が家の魔王な奥さまと勇者な奥さまは、ビールを飲み込んだのだ。


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