第13話 奴隷商

 



  9日目 17:30 交易都市リカリス



 奴隷商にやってきた。


 マックロン商会。


 ここは大店おおだなの一つで、三階建ての立派な建物である。

 一階は銀行みたいなつくりになっていて、窓口の職員と相談者がカウンターを差しはさんで真剣に話しこんでいる。奴隷商というと何か裏社会の後ろ暗い感じがしていたのだが、こちらの世界では人材派遣会社みたいな位置づけのようだ。求職者が自分の持っている知識や経験や技能そして希望する待遇を登録しておいて、雇用者との仲立ちをするのが表の業務である。



「ようこそマックロン商会へ」

 エントランスをくぐると執事みたいな初老の店員がこちらにやってきて用向きを聞いてくる。奴隷の購入希望である旨を伝えると、待合の席を勧められ、茶がでてくる。

「すぐに担当の者が参ります」

 といって一礼し去っていった。



 現在手元の資金は16Mゴルドと、

「財布の中が不安だと肝心なとき腰が引けるからね」

 と杉原たちから強引に押し付けられた50Ⅿゴルド。こちらは名目上ダンジョン利用料と税の前渡しということになっている。だが借りは借りだ。なるべくなら使わないでおいたほうがいい。



 担当として現れたのは気の弱そうな小太りの男。二十代後半といったところか。交渉力60以上。交渉が真っ赤に表示されるのは俺の能力が低いからで、それ以外の能力やスキルにもこれといって目立つところはない。

 戦争奴隷から見ていくことを伝えると地下へと案内された。



 戦争奴隷、おもに戦争中に捕虜になった者たちの事で、能力が高い者が多いのだが通常の業務に使うと事故が多い。反乱を起こしやすいのだ。だから購入者には抑え込めるだけの力が必要とされる。使用はもっぱら大規模農場や鉱山での強制労働、闘技場の闘士にするなど使い潰しが前提である。身体に欠損のある者は数百Kゴルド、五体満足なものでも1~2Mゴルド程度で取引される。命の安い世界だ。



 地下はいくつもの石牢に分かれていて多くの奴隷たちが中に詰め込まれていた。常時二・三百人は用意しているとのことだ。今日は大口の取引があったため在庫が一掃してしまったのだそうだが、ちょうど今しがた補充の人員が届いたところだということだった。



 ざっと二百人。

 俺は一人一人鑑定にかけていった。

 そして一人目を見つけた。



 名前 イチゴウ・モブオ

 年齢 14 

 職業 戦争奴隷・登山家


 武力 74前後  知力 80以上

 魔力 68前後  政治 75前後

 交渉 60以上  運   66以下 


 スキル 奇策        lv5

     建築        lv4

     そこに山があるから lvMax



 杉原のところで戦闘中に山に登ってしまった馬鹿野郎だ。

 つうか馬謖。

 万能型でどの能力も申し分ない。山にさえ近づけなければ問題は起こさないだろうから生産ダンジョンの奥で内政に専念させておこう。

 にしても酷い名前だな。杉原は1人目の配下の孔明以外はどうでもよかったらしく、せっかくのSランク武将でもモブ扱いになっている。ちなみにガチャの結果は杉原がSとE、野口がC、田原がDの武将を引き当てている。



 馬謖の値を聞くと800Kゴルドとのこと。能力は高いが、ここでは単純に労働力としてだけ評価される。屈強に見える方が高値が付くのだ。馬謖は武力が高い割に、線の細い文官タイプの見た目なのでこの値段だ。超お得である。買いだ買い。

 


 さらに人物鑑定を続ける。

 すると、


 

 名前 イチロウ・シーランク

 年齢 14 

 職業 戦争奴隷・マラソンランナー

 

 武力 80前後  知力 38前後

 魔力 32前後  政治 34前後

 交渉 35前後  運  66以下 


 スキル  大鍘刀  lv7

      怪力    lv8

      千里馬  lvMax



 うわ、名前の発想が杉原と同じだし。

 屈強そうな半裸の体に、シャンプーハットみたいな帽子。

 周倉だよなこれ、周倉だったら関羽との絡みで田原のところのような気もするが、姓がシーランクっていうのは人物鑑定を持たない野口のメモともとれる。まあどっちでもいいか、武力特化で充分期待できし。値を聞くと1.8Mゴルドとのことだ。もちろん買いだ。



 そして、



 名前 マルデ・ダメオ

 年齢 14 

 職業 戦争奴隷・鬼武蔵


 武力 75前後  知力 20以下

 魔力 35前後  政治 20以下

 交渉  1前後  運   75前後


 スキル  人間無骨ひゃっはぁー    lvMax

      SATUGAI    lvMax

      NARAZUMONO  lvMax



 これ、アカンやつや。

 名前が酷いというのはこの際どうでもいい。

 初の日本人武将というのもこの際どうでもいい。

 職業「鬼武蔵」ってなんやねん!

 スキルの「殺害」と「ならず者」も痛々しい。

 見ると、焦点の定まらない虚ろな目で「ケケケケケケケケケケケッ、殺す、殺す」と独り言を言っている。

 森長可。戦国DQN四天王の一人。


 値を聞くと600Kゴルド。納得だ。いくら屈強そうでも、あそこまでイッちゃってたら誰が見ても使い物にならない。安い、安いけどイラネー。

 イラナいけど、杉原と野口だけ臣下を買い戻して、田原のは買い戻さなかったなんていうのはマズいよな。見なかったことにしようとしても、俺のコミュ力じゃ、隠し通せる自信ないし。買うか、嫌だけど、帰り道は周倉さんと馬謖さんに守ってもらおう。いちおう鬼武蔵は保留ということで残してもらった。


 

 そしてとうとう俺はあのお方に出会ったんだ。



 名前 ニゴウ・モブオ

 年齢 14 

 職業 戦争奴隷・挑戦者


 武力 52前後  知力 45前後

 魔力 42前後  政治 42前後

 交渉 45前後  運   86前後 


 スキル  大斧      lv4

      逃走      lvMax

      即死回避  

      HIPのYOU lvMax

      GO栄道じゃないよ



 な・ん・だ・と!

 万夫不当の荒武者KDA様じゃないか!

 諸葛亮に舌戦を挑み、張飛、趙雲と一騎打ち、真の勇者KDA様。

 スゲー、スゲー、戦闘特化なのに武力低っ。けど即死しない。

 匹夫の勇で突撃し、どんな敵でも即死しない。そして逃亡の最強コンボだ。

 運だけでいけちゃう口じゃね?

 俺と組んだら弱いけど運だけでなんとかなりそうだ。

 欲しいー欲しいー、KDA様となら俺はドラゴンにだって突撃できる!


 値を聞くと戦争奴隷では破格の3Ⅿゴルド、闘技場の闘士として売りに出すつもりだとか。見た目も強そうだしな。安い!KDA様だったら10Mゴルドでも安いぜ。



 俺は杉原たちの元配下だった四人とあと二人、気になった奴隷の購入を決めた。

 残りの二人は戦闘力は並み程度だったが、政治能力が70を超えていて、知力も高い。前の国では文官として勤めていたのだろう。このくらいなら戦闘奴隷でも普通に生活させておいても問題にならない。反乱を起こしたところで、うちにはポンコツとはいえ関羽や張飛がいるのだから。

 二人とも骨折や怪我をしているので値も安かった。

 


 六人の購入代金しめて7.4Mゴルド。これで人口が29人になった。 

 俺直属の部下としても、武の周倉、治の馬謖、信のアンダくん、アイドルのKDA様、問題児の鬼武蔵。少しは組織っぽくなるだろう。まだ国として機能しておらず、村にすらなっていない弱小勢力ではあるが、少しずつ力をつけていけばいいのだ。



 続いて、犯罪奴隷とリカリス市民の借金奴隷はパスして、借金奴隷のうち孤児だけを見せてもらった。こちらは能力値よりもスキルの方で七人選んだ。能力値というのは実際には才能値と呼んだ方が適切で、表示されているパフォーマンスが十分発揮されるのは15歳の成人後1~3年してからのことになる。



ニルくん   12歳  忠義lv5    

       武力58と体力も少し期待できる。


オルガくん  11歳  料理lv0 

       武力62 戦士?料理人?


アデルくん  11歳  真面目lv4

       知力と政治が60越え


マイルスくん 10歳  空間魔法lv0

       魔力68と適性はある


シェリーちゃん13歳 空間魔法lv1  

        魔力72の逸材


シオンちゃん 12歳   鑑定 

        交渉能力も55くらいはある


エルマちゃん 11歳   慈愛lv3 家事lv2

       能力値は普通



 1年間のレンタルで3.2Mゴルド、購入で32Mゴルドだ。

 ニルくんは忠義に篤いということなのでアンダくんに付けてあげよう。交渉力のないアンダくんは俺について街で動くより森やダンジョンの4Fまでで得意の狩でもしててもらおう。空間魔法持ちの二人もポーターとして付いて行ってもらう。空間魔法も使用回数が増えれば徐々にレベルが上がっていくだろう。あとニルくんが槍術でも覚えれば少しは前衛としてアテになるだろう。そうなればPTとして安定感が増す。暇があったら周倉にでも修行をつけてもらうか。槍といえば鬼武蔵だが、アレに物を教えさせると、間違ってSATUGAIしかねんし。


 オルガくんとエルマちゃんは料理や家事で役に立ってもらえそうだ。田原が近くにいるときは料理を教えてもらうのもいい。


 アデルくんは馬謖の手伝い。内政でそこそこ役に立ってもらえるように何か専門知識を勉強させてもいい。レベルが上がればその分野には能力値的にはプラスになるのだから。


 シオンちゃんはとりあえず俺について街での豚肉の販売だ。鑑定は俺も持っているけど、彼女は交渉も普通以上にできる。空間魔法持ちのどちらかと組ませて、いずれは物品の納入や販売、買い付けなどで動いてもらうことになる。



 にしても奴隷商エグいな。子供を拾ってきて、粗末な服と粗末な食事を与え、まだ小さい内から奉公に出させる。奉公中は衣食住は奉公先が面倒みるので費用がかからん。つうかレンタル料丸儲けだ。そんで成人したら養育費用だと言って借金ごっそり背負わせて、こき使う。弱者には辛い世界だよ。とにかく帰りに服や着替えを買ってメシ食わせなきゃな。みんな痩せてガリガリだよ。風呂にも入れないと。温泉エリア開放しておいてよかったよ。河原で穴掘れば温泉湧き出すんだからな。


 ただ、レンタルか購入かということで俺は迷っていた。レンタルはいわば掛け捨て。長い目で見れば購入の方がいい。でもそうなると杉原たちから借りている金に手を出すことになるんだよな。

 

まあ、決定はもう少し考えてからでいいや。

 なんせ今から、本日のメインイベント、奉仕奴隷を見なきゃなんだし。いろんな奉仕をしてくれるっていう高級な奴隷だ。


 ワクワクしてくるぜ。

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