第二話

地上、紅葉に染まる北海道のどこか。

洋酒の空きビンの山が、そこにはあった。

山腹にはあまりにも似合わない光景に、山岳ガイドをしていた俺は、ゾッとした。


空きビンの山の中に、尚も酒をあおる幼女がいたからだった。

「む…………」

こちらの視線に気が付いたからか、少しむっとした表情でこちらを見つめ返してくる。


「酒をわし寄越よこしんさい」


幼女にあるまじき威圧感に気圧けおされ、言われるがまま、偶然持っていたワンカップを渡す。

「これは酒でないぞ、儂が言うとるのは洋酒 じゃきに、このたわけ」

何か怒られた。




【鬼門】王宮。

槐と三鬼はなおも会議する。

「柊……ですか」

「噂でしか聞かぬ名ですわね」

「……柊……強い」

「そうじゃの。奴はここには最初から居らん事にされておる鬼じゃからの、訳ない」

「でも、復活した……」

「しかも同じ、この北の地で…………」

「奴は京で封印されたと聞いたがの……」


王宮から漂うその異様な雰囲気は、【鬼門】の住人皆を不安にさせた。

と、王宮の周りを囲うようにいた民衆の中に一人、やけにニヤニヤとしている奴が。


榎だった。




「――――まぁ仕方ない。洋酒を持って山何ぞ登っとる阿呆はおらん」


ワンカップを持って山登りしているたわけはいるけどな。

俺は心の中でそう毒を吐き、幼女が洋酒の雫を一滴すら残さず飲み切る様を見ていた。


「折角じゃ、そのうち地上を支配するであろうこの儂の名を、特別に教えてやろう」


まるで少年マンガでよくある様な『達成出来ない』フラグを立てて、偉そうに幼女は無い胸を張った。


「儂は『柊様』の贋作、椿つばき……。純血の鬼を守る為、命を費やす者じゃ」

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