第7話 緊急依頼
美香の朝は、まあまあ早い。
元々夫が早起きで、勝手にコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。そのコーヒーの香りで目覚めるのだ。
「おはよう。何か面白いニュースある?」
「おはよう、いや、今日は特にないな」
何気ない会話を交わしながら、さっさと朝食の準備をする。今日の朝食はパンだから、支度にもさほど時間はかからない。お弁当がいるのは自分だけなので、昨日の晩御飯の残りをさっさと詰めてすぐに出来上がりだ。
一番の難敵は何といっても子どもたちだろう。
「起きなさーい!」今朝もまた、美香の声が響く。
家族を順に送り出してから、自分もヒマワリマートへ。
今日は倉庫の日。また新しい冒険が始まる。
今度の依頼は雪が降っている所らしいので、美香もコートの下に薄いダウンベストを重ね着して、靴下も二枚履いている。
モコモコの美香に、店長が笑いながら「倉庫は寒いから、しっかり着ないとね。うふふ」と声をかけていった。
相変わらず、店長の笑顔は癒しだ。そう思いながらドーアを開けた。
アシドに着くと、いつもと違ってダダだけが立っている。いつもは閉じている羽も広げていて、パタパタとせわしなく落ち着かない様子だ。
「どうしたの?何かあった?」
「ああ、美香!緊急の依頼が入りました。一度ギルドまで来てください」
美香はそのままダダを肩に乗せて、ギルドまで走っていった。
最近は冒険で歩くことも多く、戦いで運動も足りているせいか、走っても息切れすることが少なくなったようだ。そのままの勢いでギルドに入ると、すぐさま二階に案内された。
そこにはギルド長の他にガットとズーラがすでに待っていた。
「ああ、美香か、来てくれてありがとう」
「ギルド長、緊急の依頼と聞きましたが……」
「それなんだが……」
本来、今日の依頼は前回とは別の山間の村で、雪の魔物が出たので退治して欲しいという依頼だった。
しかし2日前から別の村に巨大なオークが現れた。オークは村人を手当たり次第に捕まえようとするので、ひとつの村が住人全員避難するという事態になっている。
「そんなに長い時間そこに居るわけではないんだ。この二日というもの昼近くになると現れて、家を壊したり住民を捕まえようとしたり……。美香やタッキーとは似ても似つかぬ姿で、オークと呼ばれる魔物なのだが。もしかして美香と同じ世界から来たのではないかと言うやつがいてな。同じ位置に現れることから考えて、そこに未知のドーアがある可能性もある」
最近美香の顔が売れてきて、近隣の住民もみな、物珍し気に見に来る。その中の一人がオークを見て、美香と似た服を着ていると言い始めたのだ。
今日現れるかどうかは分からないが、出来れば行って、暴れるのを止めて欲しい。そんな依頼だった。
「オーク……わかりました。行ってみます」
場所はアシドからも遠くない、歩いて2時間ほどの小さな村だ。昼までには間に合うだろう。
地図や被害者の様子などが書かれた報告書を確認してから、4人は急ぎ足で現場の村に向かった。
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