第8話 コボルト最高!(内容とは関係ないけど)

 冒険者ギルドは通りの中でも賑やかな場所にあり、その周りにある多くの商店も客であろう人たちでごった返していた。


「町を出入りする冒険者たちの為に門の近くに作られたギルドですが、ここにはダンジョンでとれた物資がいったん全て集まります。そして自然と周りにその物資を取り扱う店ができました。アシドでも指折りの繁華街です」


 様々な人種が溢れている町だが、小さい者も、時折みられる背の高い者も同様に歩きやすいように工夫されている。清潔な印象の町だった。

 ギルドのドアをくぐると、鎧を着たコボルトが数人、入り口近くに居てこっちを振り返った。

「まあ!」

 なんて可愛い!

 コボルトたちの顔は引きつっていたが、美香はこの世の天国を見たと思った。


 身構える冒険者たちを抑えるようにズーラとガットが前に立ち、ダダが受付に行った。

「依頼が完了したので、報告を兼ねてマスターに会いたいのですが」

「後ろの方々は?」

「私が召喚契約したオーガと、そのお知り合いでオーガにしてSS級冒険者のタッキー様です」


 隆行がギルドタグを見せると、恐る恐る近寄ってきた冒険者たちが一斉に「おおぅ!」とざわめいた。赤い文字が彫られた黒いタグは、この国全体でみても数少ない勇者の証だ。


「タッキー……あんた、本当にタッキーなのか?」

「あたりめーだろ、ギルドタグ持ってるオーガなんて、そうそういる訳がねえ」

「まじか」「すげえな」

 あちらこちらから、ため息が漏れる。

 隆行の評判はかなり良いらしい。




 だんだん遠慮なく集まってきた冒険者たちの人波の上を飛んで、奥から妖精族の女性が美香たちの前にきた。

「ギルド長が待っていますので、こちらにいらしてください。さあ、あなたたち、避けて!ほら、通しなさい!」

 すれすれのところを飛びながら、冒険者たちの頭を左右に押しのけて道を作ってくれた。奥へ進むとダンジョンよりは上りやすい階段がある。

「大きな足の方にも踏みやすいでしょう?一段か二段ずつ飛ばして上がってくださいね」

 ダダはもちろん歩かずにパタパタ飛んでいるけれど。


 部屋の中にはリザードマンが一人。

 案内してきた秘書の彼女はお茶を準備しに下がった。

「ようこそ、サリチル国へ。私はこのギルドの長をしているジーグという。ここまで来てくれてありがとう」

「こんにちは。美香と言います。よろしくおねがいします?」


 秘書が用意してくれたお茶を飲みながら、簡単に自己紹介をする。

 さすがギルド長だけあって、美香に対して怯えた様子は見せないけれど、少し落ち着かないみだいだなとは、この遠征中のズーラや他の冒険者たちの様子から、うっすらと分かるようになっていた。


 実際は張り詰めた緊張感で部屋の空気は凍っていた訳だが……


「美香、ここまで来てもらったのは、あなたにお願いがあるからだ。冒険者登録して魔王を倒し、この世界を救ってほしい」


 冗談かしら?と周りを見るも、みんな真剣な顔をして美香の返事を待っている。隆行はひとり笑顔のまま、うん、うんと頷いている。


「えっと……もう少し事情を聞かせてもらえる?」

 時間の許す限り、まずは話を聞こうではないかと、部屋の中にある大き目のソファーに腰を落ち着けた。


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