あなたのドラゴン、差押えます~アラサー公務員の異世界徴税~

作者 飛野 猶

真っ直ぐな思いが人を動かし、世界を変える

  • ★★★ Excellent!!!

かつて「滞納税金の差し押さえのために異世界召喚された主人公」などあっただろうか、いやない……たぶんないと思う。異世界モノはもはや何でもあると聞くので自信はない。
そんな前置きはさておき。

本作の主人公・佐久間は作者様の前作「この財産、差押さえます!」に登場した主要人物の一人だ。
なので本作はそのスピンオフや外伝に相当すると言える。もちろん前作を読まなくとも今作は楽しめるが、彼の懸想人について詳しく知りたければ読んでおくとよいだろう。

前作でもそうだったが、今作でもその見どころは人間ドラマにある。
現代だろうが異世界だろうが、そこには経済があり法律があり、罰もある。国家運営のためにも税収制度があり、滞納者や脱税者からは強制的に差し押さえることもある。それぞれの登場人物にはそれぞれの事情があり、立場があり、責任がある。
とはいえ今作は舞台が異世界、法も違えば罰則も違う。いやそもそも初夜税ってなんだよ!? となることもある。そして時には厳しく時には人情を交え、徴税官となった主人公はその業務に勤しむのだ。

主人公は現実世界でも徴税員であった以外には多少球技が得意というだけで、チートを授かることもなければ戦闘能力など欠片もない。ただ、ひたすら勤勉ではある。自動翻訳のおかげで会話に支障はないのに、わざわざ文字を覚えるのだからなかなかの努力家と言えよう。普段は酒やらタバコやらに傾倒して不真面目なのかと思いきや、そういえば任された仕事はしっかりこなす人間であると思い出した。何気に一途だし。
そのひたむきさが厄介な案件を解決に導き、人心を解きほぐし、最後には良くも悪くも世界に大きな変化をもたらすことになる。それこそ最後の難題の解決策には膝を打って「やりやがった!」と漏らすほどだ。

悩み、揺れ動きながらも前を向いて生きるその姿、とくと見てほしい。

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