あなたのドラゴン、差押えます~アラサー公務員の異世界徴税~

作者 飛野 猶

小さな星であろうと、世界を回すひとしずくに変わらない

  • ★★★ Excellent!!!

BGM: “Stars” -Madina Lake-

 華々しい、スターの活躍で満ちている。それはこの世界でもどこの世界でも変わりはないだろう。どんな人間でも輝ける場所があり、幸福を感じることができる世界がある。なのに佐久間は、異世界へと呼ばれてしまった。

 どこへ行こうと世界の本質は変わらず、輝かしい星々の影で、小さな星が回っている。だが果たして、どちらが恒星として巨大なのか。それは星空を見上げるだけではわからないのだ。


(以降、読了後追記 2018/1/22)

 見上げるだけでは惑星の動きを説明できなかったように、星の読み方は決して見上げるだけではない。そして一人の人間が持つ恐ろしい力がある。自分の正しい輝きを、あるいは何によって輝けているかを、間違った視点で誤ってしまうことだ。
 そして一つの誤り・間違った納得が、自らの持つ問題と向き合うことを避けさせ、停滞を招く。
 だが決してその誤りは恥じるべき過ちではない。神の奇跡も、チートも要らず人間は自らの行動と、胸の内を巣食う問題と向き合う勇気によって、それを正すことができる。それをいつだってサクマは証明してきたのだ。


 これは、異世界に天国を求める小説ではなかった。ひたすらに地続く現実と法則の中で、人間が人間らしく、心ある者がその権利を持って輝いている、そんな世界を求める物語なのだ。
 単なるスピンオフとしてではなく、マツリと佐久間のその後にあり得た未来としてではなく、単なる私たちの周りを取り囲むトレンドへの回答ではなく。
 しがない一読者だが、私は人間の物語として、優れた構成と練られた世界観を持ちながら必ず人の心を感銘という渦へ飲み込ませてしまうこの作品を推していきたい。

 

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