第26話
「ただいま」
なんとか買い物を済ませて家路に着いた。
「お腹空いた!なんか買ってきた?」
やはりサリーはまだ居た。
「UFO食べなかったの?」
わたしは、買ってきた食材を冷蔵庫に入れながら返事をした。
「食べたよ。パンも残ってたの食べた。でも食べ足りない」
ボリボリとポテトチップスを食べながら、ソファーに寝そべっているサリーは言った。
「あーっ!そのポテトチップス!まさかあんた兄さんの部屋に入ったの?」
サリーに見つからないようにと、兄の部屋にポテトチップスを隠しておいたのだ。UFOにパンにポテトチップスを食べても、まだ食べ足りないとは、どんな大食漢なのだ。過去のわたしはそんなに食べない。サリーは別人格ではないのだとカウンセラーが言っていたけれど、サリーが過去のわたしだとは到底信じがたい。
「だって、少年漫画はアニキの部屋にしかないじゃん。NARUTO、ONE PIECEとかとか、俺が読んだことのない超面白れ〜漫画がいっぱい売るほどあって、一生ここに居られるくらいあるじゃん。流石、引きこもりのプロだなアニキはやっぱり」
引きこもりのプロってどんな奴だ。
「ちょっと待って。わたしは少年漫画なんか読んだことないわよ。サリーは本当にわたしなの?あんた誰?」
「誰って?過去の優子なんじゃねぇの?優子だって、あだち充とか読んでただろ」
あだち充はテレビアニメで見ただけだ。
「今日、カウンセラーから聞いたのよ。ここに現れた人物は、別人格なんかじゃないって。過去のわたしなんだって!過去のわたしはサリーみたいな性格じゃないわ。あなた、もしかしてわたしの別人格の純也って人じゃないの?」
サリーは一瞬、目を見開いてわたしを見たが、次の瞬間、ふっと横を向いて笑った。
「やはり腕のいいカウンセラーだな。そして優子も流石だ。俺を純也だと見破ったとは」
「なんなの?何のために、あなたは現れたの?そして他の5人は過去のわたしなの?どういうこと?わかるように説明してよ!」
「そうギャンギャン言うなよ。まるで葉月みたいになってるぞ。今はまだ優子なんだろ?葉月はもっと攻撃的でヒステリーだからな。何のために現れたのかは、これからわかるよ。後の5人は過去から俺が連れてきた」
「後でっていつよ。ほんとに頭がおかしくなりそうよ」
「わかったよ。今夜にしようと思ってたけど、今から行くか?」
「行くって何処に?」
純也はいったい何をするつもりなのだ?
「過去にだよ。タイムマシンに乗って」
「タイムマシン〜?」
そんなものが本当にあるわけがない。
「早く知りたいんだろ。さぁ行くぞ」
サリーがそう言った瞬間、自分の身体が凄い勢いで、何かに引きずり込まれるような衝撃を受けた。そしてわたしの目の前には暗闇が広がった。
「キャアアアアアアアアアーー怖いーー!」
「うるさいなぁ。ほら、あそこだよタイムマシンは」
サリー、いや純也の声がした。そして、暗闇の中にボォッと微かな光が見えた。光のある場所には、何かの乗り物がある。自動車のような形をした。
わたしと純也は、そこに近づいていった。
「これって……」
「そう。有坂電器の軽トラ」
「まさかこれがタイムマシンとか言うんじゃないわよね」
「そのまさかで、紛れもなくこれがタイムマシンだ」
そんなバカな。電器屋の軽トラがタイムマシンだなんて。これが小説なら、誰も読まない、超三流の売れないSF小説だ。
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