第15話


 夕食を全員が食べ終わる頃、サザエさんが始まった。


「サザエさんやってるじゃん。今の時代まで続いてるのか?再放送?あれっ?なんかみんな声がおかしくね?なんか聞きなれなくて気持ち悪い」


 全員ではないが、声優は何人か交代したはずだ。わたしも最近は観ないのでわからないが。代わってすぐのときは違和感が拭えないものだが、またすぐに慣れてしまうものだ。


「ママ〜7時からはどんな番組がある〜?新聞どこ?」


 新聞は取っていない。どうせテレビ番組欄しか見ないのだから無駄だ。それに、新聞のセールスマンがしつこいので、苦手なのだ。だからわたしはインターホンが鳴っても出ない。顔を見て知らない人だとわかるし、知ってる人なら電話をかけてくるのだから、インターホンなんか出なくてもいいのだ。


「番組表はリモコンの番組表というところを押せば出てくるわよ」


「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」


 3人くらいが驚いている。それもそうだろう。そんなボタンがついたのは、つい最近のことだ。


「スゲー。やっぱり便利な時代なんだな〜。でも全然知らない番組ばっかりだ。ママ、ビデオテープどこにあんの?まだ録画してて観てないのがあったんだよね〜」


 サリーが録画した番組なんて、今の時代まで残っているはずがないではないか。


「ビデオも変わったのよ。テープはいらなくなったの。このデッキの中に入るからいらないのよ。番組表から選べば勝手に録画してくれるしね。100時間分くらい録画できるのよ」


「ひえ〜。この中に入ってんの?どういう仕組み?あの大量のテープがこの中に?どうなってんの?」


 わたしも未だにわからないのだ。どんな仕組みでそんなことが出来るのかなんて。電器店で始めてHDDを買ったときに説明されても、意味がサッパリわからなかったのだから。


「すごいね〜」

「すご〜い。時間で予約して、野球が延長されて全部録画できなくて悔しい思いとかしなくて済むわけ?それも勝手にやってくれるの?まるでロボットだね。テープにタイトルとか書かなくてもいいんだ」


 美佐子も成美も驚いている。


「いろいろ変わったんだな〜。テレビも薄〜いし、大きいし。こんなの何百万もするんだろ?金持ちの家にしかないとか?うちの電器屋潰れたんだっけ?だからか、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー、全部メーカーが違うもんな。うちはひとつのメーカーしか取り扱ってなかったもん」


「テレビは、これ40型だから普通の家庭にあるサイズだと思うよ。何百万もしないし。型落ちだから15万くらいだったと思う」


「洗濯機が変な形だな〜。クーラーは薄くはなってないけど、木のやつじゃないんだな」


 洗濯機はドラム式だから、かなり昔とは形が違う。クーラーと昔は呼んでいたエアコンは、昔は暖房機能がついていないものが主流だったからだ。


「サリーちゃん。クーラーはね、お掃除機能がついてるから分厚いんだけど、お掃除機能がついていないものは昔より薄くなってるわ」


 いちいち説明するのはめんどくさい。サリーが木のやつと言っているのは、昔、家具調のステレオやクーラーが流行っていたからだ。流行っていたのか、それしか作れなかったのかは知らないが。


「俺も、この時代に生まれたかったな〜」


 いや、あなたが大きくなれば、わたしになるのだから。


 たぶん。

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