ストーカー③ 高嶋高校にて
私が学生の頃って自転車で通学したり外で部活をしても命に係わるほど暑く無かったよね? なのに最近は生き物としてヤバいレベルの暑さじゃない? オートバイで通勤してると信号待ちってあるじゃない。
「大島先生、お客様です」
「どうぞ……あれ? 中さんのお客さん?」
この暑い最中にスーツ姿ってどうなんだろう? 誰も文句なんて言わないんだから上着くらい脱げばいいのに。
「どうも、滋賀県警刑事課……っていうか三輪車の安浦です」
「同じく亀山です」
「やっぱり、主人がお世話になっています」
わっ! 本物の警察手帳だ。私何か悪い事したっけ? 遅刻しそうになってスピード出しちゃったけど大丈夫だよね? 流れよりチョッチ速いくらいじゃ捕まらないよね?
「今日は聞き込みで回っていまして、少しお時間をいただきたいんです」
「早速なんですが、こちらの人物に見覚えは有りませんか?」
頭頂部は禿げていて側頭部はボサボサの白髪。こんな髪型でいるくらいなら中さんみたく短く刈ってしまえばイイのにって思う。垂れた一重まぶたと陰湿そうな目つきが不気味……あ、思い出した。
「裸足で校舎を歩いていたからスリッパを渡しました。それが何か?」
「いや、図書室で少し問題を起こしたそうで」
「ちょっと注意をしてこようかなって」
スリッパを渡したらいやらしい目つきでジロジロ見てきたんだよね。気持ち悪かったなぁ。あんなのがナウ高島の不審者情報で流れるんだよね、多分。
「図書室の件は職員全体が把握しています。女子生徒をジロジロ見ていたそうなので今後の立ち入りは制限しようとしています。ですが下手に止めると逆上して職員へ危害を与えかねないのでどうしようかと」
中さんからチラッと聞いてたけど、やっぱり安浦さんって刑事さんなんだね。しかも相棒が亀山さんなのが刑事って感じで良い。
「大島さんは何か感じられたことは有りませんか?」
もう一人の刑事さんが聞いてくるけど、私はスリッパを渡しただけだからなぁ。
「目つきが嫌でしたね、何と言うか陰湿で気味が悪い感じでした」
「なるほど」
安浦刑事は亀山刑事に何か耳打ちしてるけど、この状況ってBのL好きな女の子にはご褒美なんじゃないかなぁ?
「大島さん、念の為に出来る事なら一人で通勤をしないでください。詳しい事は……後ほどお店に行きますのでその時に」
中さんは安浦さんの事を「あんな呑気な顔をしてて刑事が務まるんかなぁ?」って言ってたけど、安浦さんはもちろん亀山さんも厳しい顔をしている。何だろう? すごく胸騒ぎがする。
◆ ◆ ◆
安浦さんたちが『一人で通勤するな』って言うから帰りは
「螢一さん、いいんですか」
「荷物の監視で荷室及び荷台へ乗るのは道交法でOK」
一言物申してやりたいけれど、二人の邪魔をしちゃったし、リトルちゃんも積んでもらったし。
「通勤ラブラブチュッチュッ合体デートを邪魔してごめんね」
謝ったのに竹原の奴、「要らんワードを何個も入れんでよろし」なんて言いやがった。多分だけどチョッチだけムッとしてる。二人のラブラブを邪魔しちゃってゴメンね。
「お詫びに晩御飯を食べて行ってよ、中さんの特製カレーだよ」
「ミトさんがいいならOK」」
ミトちゃんは「大島先生のお家に行ってみたい」と言ってくれた。今日は皆でカレーパーティーだ。
「先輩、今日は何かあるんですか?」
「大島先生、高級車が停まってますけど
「あ、アレは夫のお友達のクルマ」
店の前に停まっているのは先生は先生でも『政治家の先生』が乗るので有名なセダン。カレー好きな金ちゃんのクルマだ。
「レイが産まれる時にあの車で病院まで送ってもらったのよ」
「先輩、さっきから後ろに張り付いている軽トラックは?」
私は気にしてなかったんだけど、ずっと白い軽トラックが付いてきてるみたい。
「よくわからないけど、刑事さんが言ってたのと関係があるのかなぁ」
チラッと見た途端に軽トラックはウインカーを出して別の方向へ。
「何だか気味が悪いなぁ……」
もしかすると当分の間、バイク通勤は止めておく方が良いかもしれない。
※フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
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