第89話 部品整理

閉店したバイク店から買い取ってきた段ボール箱が数個。

整理を手伝う高校生たちの欲しいものはあるのだろうか?


廃業したバイク店から買い取って来た部品と工具は段ボール数箱になった。


1人で整頓するのも大変だ。そこでいつもの4人組に手伝いを頼んだ。


ところが、来たのは理恵・速人・轟さんと理恵の友達の女の子だった。


西川絵里にしかわえりです~。よろしくお願いします~。」


なんだかポワ~っとした娘さんだなぁ。癒し系だな。

ぽっちゃりした可愛らしい女の子だ。何故かどこかで会った気がする。


「大島です。みんなからは『おっちゃん』て呼ばれてるから

『おっちゃん』て呼んでくれたらええよ。」


「は~い。」

何だか空気が緩む雰囲気の子だ。


綾ちゃんは佐藤君とデートだそうな。青春だねぇ。


「さて、今回は部品整理を頼む。欲しい部品・工具が在ったら

言ってくれ。バイト代の代わりに持って行って良いか言う。」


「昼ご飯は?」


「カレーは作ってあるけど、カレーで良い?」


4人とも反対はしなかったので昼はカレーだ。


段ボール箱を開けると古い未使用部品がたくさん出て来た。

カブ系だが極端に古いものは無いようだ。

ウチの店の在庫でストックしているのと同じ物が多い。


「おじさん。この工具は貰ってよいですか?」

古びた工具はウチでも使っている物と同じ。何個も要る物でない。


「おう。その工具なら持って行け。大事にするんやで。」


「おっちゃん。これ何?」


「これは・・・何の部品かな?解らんから除けておこう。」


「おじさ~ん。バイクは無いんですか~。」

絵里ちゃんはバイク本体が欲しいか。

「午後から倉庫のバイクを見てみようか。何が欲しい?」


「荷物を積めるのが良いです~。」

スクーターかカブかな?ほんわかした娘さんやから

可愛らしいバイクが似合いそうだ。


「あれ?箱?郵便局?」

轟さんが開けたのは郵政カブ用のリヤボックス。


「それは買うと高い奴やな。別においておこう。」


人が多いと片付くのが早いかといえばそうでもない。

「これは何ですか?」「これ貰っていい?」とやっていると

案外作業は進まない。賑やかで楽しいのは良いのだが。


それでも午前中に部品は片付いた。

「絵里はコツコツとやるタイプなんだよね。」

理恵。お前ははコツコツやらないタイプだな。


作業を見ていると5人の性格が良く解る。

速人・轟さん・絵里ちゃんはコツコツと作業に手中する慎重派。

理恵は集中力が続かない。活発だがガサツな面がある。


カレーを食べながら午後の事について話す。


「こんなのんびりした絵里がクラッチが上手いなんて不思議。」

轟さんの意見には同意だな。

「へへ~頑張りました~。お父さんに習ったの。」


親父さんもバイクに乗ってるのかと聞くと、


「ハーレー?大きなバイクに乗ってます~。」


ハーレーと言ってもいろいろあるし、もしかすると別のバイクかもしれない。

詳しくない人はアメリカンタイプのバイクは全部ハーレーって思うからね。


「でも、ハーレーで学校には行けんよね。」


ハーレーは大型だからね。高嶋高校の通学で使えるのは125㏄まで。

荷物は片付いたので、午後は絵里ちゃんに合うバイクが無いか

倉庫を見せることにした。


「わ~かわいい~。」

倉庫に案内した絵里ちゃんが最初に見たのはモトコンポ。

これは荷物を積む以前に『荷物として運ばれるバイク』だ。


「何これ?郵便局?」

それはこの前仕入れてきた郵政カブ。


「こっちのカブはでっかいカゴだね。荷台も大きい。」

それもカブだけどプレスカブ。新聞配達用だ。残念ながら欠品だらけ。


「モンキーとかゴリラは無いの?」

今は無い。中古部品の相場が上がってるから暫くは作らない。


おのおの好きな事を言っているが、肝心な絵里ちゃんはピンと来ないらしい。


お父さんがハーレーに乗ってるくらいならバイクには詳しいだろう。


「予算とかの事もあるし。親父さんに聞いてみたらどうや?」


絵里ちゃんは少し考えて

「お父さんと相談してからまた来ます」と答えた。


今日の部品整理で各自が手に入れた物

速人 工具・モンキーの部品・ゴリラの荷台

理恵 カレーライス(10人前)

轟  カブのフロントキャリア・前カゴセット(新品)

絵里 大島サイクルでバイク購入時に何か部品をサービス



※フィクションです。登場する人物・団体等は架空の存在であり

実在するものとは無関係です。

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