第10話 カブ系エンジンの色々

 スーパーカブ100EXはキャブレター時代のホンダ横型エンジンシリーズの完成形である。4速ミッション・2次クラッチを備えたキャブレター時代の最強のエンジン。


「これってオークションで高値が付いてるやつ?大きいね」

「これを載せるんですか?」


 驚く二人に答える。


「いや。残念やけどこれは使わん。部品供給が怪しいんや」


 壊れて直せないエンジンは使わない。コレクションだ。


「僕のエンジンに似てますね」

「そうやな。速人のに載ってたエンジンに似ているけどな」


 言うより見せた方が早い。社外エンジンのカバーを外す。


「外見は似ていても中身が違うんや。中身はモンキーと一緒。だからモンキーのクランクケースカバーが付く。ほら、この通り」


「あ…」

「…?」


 理恵はよく解らない様だ。速人は分かったらしい。


「本物のカバーを開けるのは勘弁な。スマホで検索しておくれ。カブのクラッチと全然違うのが解ると思うで」


「2次クラッチが良いって言われてよく解らず買ったのに違ったんですね」

「通学に使うなら普通のクラッチで充分やと思うで。マニアで海外から部品を輸入して改造している人もいるらしいけど、そこまでは要らんやろ?」


「理恵ちゃんみたいなクラッチ無しは駄目ですか?」

「遠心クラッチが駄目なら世界中のカブが駄目って事になるな。使い方次第やけど楽な事に間違いは無いな」


「楽でいいよ~スクーターと違ってガチャガチャ楽しいし」


 理恵は遠心クラッチ派だ。運動神経は良いくせにクラッチレバーの操作だけは下手なのだ。手が小さいからだろう。調整式のクラッチレバーなら大丈夫かもしれない。


「普通に乗るだけならカブのエンジンをそのまま積んでしまえば良い。ただし、モンキーやゴリラは車体が小さいからセル付きは無理。キャブレターのスペースが無くなる。キャブの邪魔にならない所にセルが付いているエンジンも有るけどとっくの昔に生産終了している。中古は探すのに苦労するのと、値段の割に程度が悪いから勧められん」


「じゃあセルの無いエンジンで遠心クラッチが良いです」

「おっさんもそれで良いと思うぞ」


 速人の使い方は通学メインとなる。ならば悪い選択ではないだろう。


 国道161号バイパスを巡航するとなれば30㎞/hの原付一種では辛い。原付2種の70~90㏄にしたいところだ。


「まぁ、どんな風にしたいかは家でゆっくり考えておいで」


 そんな話をしていると時間が過ぎて辺りが暗くなってきた。親御さんに心配をかけるわけにいかないので二人を帰した。

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