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(恐らく、佐治さんは銃の形をしたものを向けて引き金を引くことでトカゲを傷つけられる、という能力を持っているのだろう)
佐治さんの能力に対して僕のそれはややこしい。まず僕の右腕から水銀のような液体が滴り落ち、それが左右に一直線に広がった後、重力を無視して地面と垂直の方向に広がり、最終的に鏡でできた帳のようになる。それは本物の鏡のように目に見えるものであればほぼ全てを映すが、唯一僕の姿だけは映さず、代わりに本来映るはずのない僕の能力の標的となったトカゲの姿を映す。そしてトカゲの姿が映った直後、帳は砕け散り、それが引き金となって標的となったトカゲは強制的に僕へと作り変えられていく。
(トカゲとはいえ、僕という人間に無理矢理作り変えられる負荷は想像を絶するだろう。それに耐えられなくなった時点で死ぬし、仮に耐え切ったとしても残るのは笹岩楓という人間だ。トカゲとしての能力の一切は失われる)
自分で言うのもなんだが、凶悪な能力だと思う。人間として生活する前の火津木さんのような優れた変身能力を持っているトカゲであれば効果はないだろうが、そうでなければ発動できた時点でほぼ確実に無力化することができるはずだ。
(佐治さんも引き金を一度引いただけで、相当なダメージを喪服の女に与えていた……僕や佐治さんの能力と比較すると、火津木さんのどんどん体調が悪くなる、というのは攻撃を受けたにしては軽症すぎる気がする)
「火津木さん、その男は何か特徴的な行動を取っていませんでしたか? なんでもいいんです」
火津木さんは少しの間考え込んで、
「……カメラ」ぽつりと、呟いた。
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