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「が……ぐっ!」

 なんとか逃れたいが、僕の力程度ではトカゲには抵抗できない。首を絞められているわけではないから呼吸はできるものの、この状況では真奈さんをかばうことすらできない。

(――いや、真奈さんから少しでも注意を反らせられるなら、無駄じゃない)

 僕がやるべきなのは真奈さんが助かる可能性をほんのわずかでも上げることだ。ならここから何をするべきなのか考えないと――

「せんせーから!! 手を離せよ!!」

「……真奈、さ!?」

 どうして? 何故わざわざ自分の方に注意を向けるようなことを? あるいは、このまま僕がこのトカゲに痛めつけられれば、今この場は凌げたかもしれないのに。

 トカゲの持った人間の顔の一部が、喋る。

「真ぁ奈ぁ、これのことが、好きなのかぁ、えぇ?」

 真奈さんは立ち上がり、両目から涙を流して震えながら、それでもトカゲのことを睨みつけていた。

「なぁ、おい、どうなんだぁ、おい?」

「……私が、あなたと結婚すればいいんでしょう。その人を、せんせーを、巻き込まないで」

(駄目だ)

 それは、駄目だ。僕は、それを止めたくて、そんな目に遭ってほしくなくてここに来たのに、これじゃあ僕は、

「――いいぞぉ」

 その声と共に、トカゲは僕を軽々と投げ飛ばし、真奈さんの部屋のドアに叩きつけた。

「――ガ、ハッ!」

 息が止まるほどの衝撃が来たが、そんなことは今はどうでもいい。真奈さんがこんなトカゲのものになるなんて、そんなのは、駄目だ。なんとかして止めなくては― ̄

「でもな、お前は、もういらねぇんだよ」

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