19
「――急に呼び出して、ごめん」
「ううん、いいよ。それで、どうしたの? 何かあった?」
突然連絡したにも関わらず、梓は連絡したその日のうちに僕のアパートまで来てくれた。梓に会うのは、ニャン太の一件以来だった。見たところ特に影響は残っていないようなので安心する。
「その……ちょっと、落ち込んでる」
ローテーブルの斜向かいに座る梓に向かってそう言うと、
「……楓、何があったの? 私にできることなら、なんでも力になるよ?」
梓はみるみる顔を歪ませ、そう聞いてきた。
「……最近、高校生の女の子と知り合ったんだ」
「……その子に関することなの?」
「うん。その子は、普通じゃ想像もできないような、辛い立場に置かれてて、なんとか助けてあげたいんだけど……僕じゃ、無理なんだ。助けてあげられない」
不意に目から涙が流れ落ちそうになったが、懸命にこらえたおかげで、泣くことは避けられた。
「そう、なんだ」
梓は少しの間うつむいていた。そして、顔を上げると、
「……楓が、詳しいことを話してくれないってことは、それだけ大変な状況ってことだよね?」
僕は、ただ頷いた。それを見て、梓はまたうつむいてしまう。
「――梓、ごめん」
正直なところ、自分の体を支えていることすら厳しくなっていた。だからすがりつくように、僕は梓を抱き締めた。すると、
「――え!? え、え、えええ!? か、楓!?」
全く予想外のリアクションが返ってきた。
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