12
「――わからないんだよ」
「……は?」
「僕は自分の性別がわからないんだ。男なのか、女なのか、それともそれ以外の何かなのか。全くね」
真奈さんの顔を見る。その顔は先程の笑顔から、何か痛ましいものを見るような表情に変わっていた。
「……何それ、性、同一性障害、とか、そういうやつ?」
「わからない。ただ――それの原因が、ようやく取り除かれたんだと、思う。最近、本当につい最近なんだ」
「原因、って……一体なんだったの?」
一瞬、躊躇った。本当のことを話したところで、頭がおかしいと思われるだけだろうと。だが、僕はついさっき自分の浅はかさを思い知ったばかりだ。だからたとえ、それがどんな結果になろうとも、
「僕はずっと、喪服を着た女につきまとわれてたんだよ」
きっと意味がわからないだろうと思った。何せ話している僕自身ですら意味がわからない。真奈さんの反応を伺う。
――恐怖に染め上げられた、端正な少女の顔がそこにはあった。
「……その、女って、せんせー以外の人には見えなかったり、する?」
真奈さんの反応と発言で直感的に理解する――この子はトカゲが見える。そして今、トカゲに脅かされているのだと。
「真奈さん――君も、見えるの?」
少女は僕の見ている前で、ゆっくりと、頷いた。
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