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「――楓?」
梓の声で、僕は目を覚ました。自分がどこにいるのかを確認する。梓が黒い影のようなトカゲを見つけてしまった喫茶店のテラスだ。交差点に視線を移す。黒い影は、いない。
「なんだか、二人して眠っちゃってたみたいだね。すごく怖い夢を見てたような、そんな気がするんだけど……」
夢――いや、違う、あれは、
「あ……猫ちゃん、どこかに行っちゃったのかな? ちょっと残念だけど、でも仕方ないよね」
それを聞いた瞬間、僕は――耐えられなくなった。
「え……楓、どうしたの? なんで泣いてるの? 体が痛いの?」
梓の問いに答えることもできず、僕は今この瞬間も死を迎え続けているであろう理不尽な救いのことを思ってただひたすらに、泣き続けた。
三 雷鳴の猫 終了
※次回の更新は7月を予定しています。
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