夏の雪気



盛夏の暁風

ほら、そこに

夏の雪気ゆきげ


満足に雲が覆うでもない

朝焼けの頃に

そっと心に忍び入る

雪の降る気配

忘れていいよって

何度言ったか知れない

あの言葉

どうせまだ覚えてるんだよね?


一歳ひととせは巡り

その反対側で

心も巡る

ねえ、今日は細雪ささめゆきが降りそうだ

決して悲しくはなく、優しい

温かな


夏の茂りの向こうで

僕を誘う雪気

夏野が、夏空が、夏影が、夏蝉が

きみの夏姿になって

ささやきひとつで爆ぜる

その言葉はしまっておいて

思い出さなくたって

何も変わりはしないよ

ほら、こんなにも雪白せっぱくな心模様


海に行きたいと願えば

どこに僕たちの距離があろうと

降る雪のひとひらのうちに

こころふたつで


朝焼けの頃に

そっと心に忍び入る

夏の雪気




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