shining doctor
道の向こうから、
いつも通りの目井さんのはず。けれど、視野原には、その姿が妙に輝いて見えた。
白衣に包帯に白髪、もともと光を反射しやすい「白」の要素が多い目井さんではあるが、今日はいつも以上だ。特に顔を中心にキラキラしているように見える。
かつて角膜を移植してもらった直後、ドナーが密かに思いを寄せていた人が煌めいて見えたこと、現在自分が付き合っている恋人に出会った瞬間を思い出した。同時に、心臓が高鳴った。
(嘘、好きになっちゃったの!? 目井さんを!? どうしよう、あたしには
そもそも目井さんだよ!? あ、でも性別も年齢も不明ってことは、目井さん実は女の子なのかもしれないもんね!?
で、でもそうだとしても、これまで色々あったけど特別な感情なんて抱いたことなかったのに…… あ! でも深い関わりのある人にだけ恋愛感情を持つ人もいるみたいだもんね! いや、そういう問題でもなくてね!?)
半ばパニックを起こしつつ、はっきりさせようと目井さんに向けて歩を進めた。
やがて、様子がおかしいことに気が付いた。
やけに人通りが少ない。普段ならこの時間帯のこの道は結構な人数が行き来しているというのに。しかも、人影は少ないのに人の叫び声のようなものはところどころから聞こえてくる。
というか、暑い。とてつもなく暑い。目井さんに近づけば近づくほど暑い。それに眩しい。
なんでだろう…… とよく見てみて…… ようやく、状況を理解して、足が止まった。
「おや、視野原さん。いかがですか、最近体調の方は」
思いっきり引きつった視野原の表情に気付かず、普通に話しかける目井さん。
「な、何ともないよ…… ていうか本当、あれは目井さんのせいじゃなかったんだから気にしないでってば……」
「しかし、一時本当に危なかったと聞きました」
「で、でも結果的には死ななかったんだからさ…… 本当、もういいから……」
「ですが……」
「それ以上に、今まさに気にしなきゃいけないことがあると思うんだけど……」
「はい?」
「今日なんか変なことした? 熱っ」
「いえ、何も。ただ超強力な日焼け止めを開発して顔に塗ってみただけです」
「いや絶対それでしょ。紫外線散乱剤使ってるタイプ?」
「その通りです。よく分かりましたね」
「あちゃちゃ、いや、そりゃ分かるよ。顔が光めっちゃ反射して輝いてるんだから……」
「ああ、なんか今日眩しいなと思ってたんですが、そのせいだったんですね」
「ひいいいい! そ、それだけじゃなく!」
「はい?」
「燃えてんの! そこら中火がついてんの! うわ、帽子燃えるー!」
「あああああ!? 今日異様に暑いなーと思ってたら!?」
「どんだけ日光拒絶してんのあんた! ただでさえ暑い時に! まず、よくここまで気付かなかったね!?」
「視野原さん、消防車を!」
「だーからこっち向かないで燃える燃えるああああああ」
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