acne
あ、ニキビできてる。
朝、頬に触れてみて気が付いた。
ニキビは嫌いだ。見た目というよりも感触が。
ぷにゅぷにゅなのも固めなのもあるけれど、どちらにしても、自分の肌が異物に侵入されたみたいで気持ち悪い。
親指と人差指でつまんで、力を込める。
ぷちゅ
小さな手応えがあって、ニキビは呆気なく潰れた。中身の僅かな液体を吐き出して。
翌日。
あれ、またできてる。
今度は顎に、ぶつっとした手触り。
嫌だな……
目井さんは、炎症が酷くなって痕が残りやすくなるから潰さないで保湿したりしてケアするのがいいって言ってたけど、そんな悠長なこと言ってられない。気になる。
親指と人差指でつまんで、力を込める。
ぷちゅ
あんなに気味悪い物体だったのに、簡単に潰れた。白くてぬるっとした中身を吐き出して。
更に翌日。
あー、嫌だ嫌だ。
額が全体的に凸凹している。
何なんだよ……
目井さんは、あんまり酷かったら私が診ますって言ってたけど、一刻も早くこのデキモノとおさらばしたいんだよこっちは。
両手のひらを額に押し当て、力を込める。
ぷちゅ ぷちゅ ぷちゅ ぷちゅ ぷちゅ ぷちゅ ぷちゅ ぷちゅ……
無数の微細な悲鳴と、針でちくちく突かれるような痛みとともに、侵入者達が潰れていく。白く生温かい液体が顔を伝って滴った。顔中ねちゃねちゃ。
翌日。
もういいかげんにしろよ。
額の下の方。特大のニキビが二つある。
同じくらいの大きさの膨らみが、鼻を挟んで左右に。触ってみると硬めでゴリゴリする。中に一体何が入っているのか、丸い何かがぐりぐり回転している。
今までで一番ゾッとした。きっと見た目も酷くおぞましいに違いない。見なくても分かる。
一刻も早く消さなきゃ。
両手をそれぞれニキビに当て、力を込める。
……ぶち ……ぶち
これまでより少し時間はかかったが、なんとか潰れた。
やたらと痛い。大きかったからかな。
それにしても、視界が真っ暗だ。今日は天気悪いのかな。
翌日。
絶対に許さない。
桁外れの大きさのニキビができてる。
昨日に引き続いて曇っているのか目は見えないままだが、見えなくて良かった。触れただけで全身の毛が総毛立つ。そうだ、確かあそこにバットを立て掛けたままにしておいたはず。手探りで探そう。
あった。よし、これで潰す潰す潰す。
ばっこん
数日後、バットを握りしめたまま倒れ込む、頭部が潰れた遺体が発見された。
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