夢見たユートピアはこんな感じかもしれないという、あくまでも一つの可能性
ギ、ギ、ギ、ギ、ギ、ギ
耳ざわりな音とともに、固く閉ざされていたカプセルの蓋が数cmずつ開いていく。何年か、何十年か、何百年か、あるいは何千年かぶりに外の空気が肌に触れる。
カプセル内で長いこと眠っていた患者様は、まだ目の焦点も定まらないままぼんやりと記憶を整理する。
(…そうだ。争いだの何だの最悪なことばっかりのディストピアに耐えられなくなって、
完全に覚醒した患者様は、蓋の開ききったカプセルから立ち上がった。
仰いだ頭上には、抜けるような青空。
(じゃあ、ここが夢にまで見たユートピアなのか! 争いはなくなってるし、幸せな人生が保障されてるんだな! やった!)
身体の奥底から湧き出てくる歓喜。
しかし。
(ここってモロに屋外だよな。病院も周りにあった色々な建物も跡形もない…。人っ子一人いないし、ただ見渡す限り砂ばっか。やたらと暑いし砂漠みたい… なんでこんなところに…
けど、ユートピアであることには間違いないんだから、誰かに助けを求めれば必ず助けてもらえるはずだ。まずは人を探そう。それで現在の状況を教えてもらおう。そうしよう)
患者様は地面に横たえられたカプセルから一歩踏み出し、「ユートピア」となった世界を駆けだした。
それが「ありとあらゆる生物が死に絶えたために、争いがなくなった世界」であることに気付かぬまま。
これがどれほど先の未来なのかは、判然としない。
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