おまけ 後日談
あれから、数日が経過した。フォイユは、合印決定選で失格になり合印になれなかった。数日間それを引きずっていた。しかし、今は別の感情がフォイユの心を支配している。
「ガーリック《Garlic》……」
フォイユは虚空を見たまま呟いていた。最初はライバル視していたガーリックなのに、三ノ選で失格になった時に慰めの言葉をかけられて、すっかり感情が一八〇度変わってしまった。
「フォイユお嬢様、今日の夕食のメニューは何にしますか?」
フォイユは虚空を見たまま、溜息を漏らした。
「ガーリック……」
「分かりました! ガーリックを使ったフルコースですね!」
しかし、フォイユは後悔していた。どうして、ガーリックにあんな生意気なことを言ってしまったのだろう! しかも、あんな暗号椅子まで持ち出して! あまつさえ、どうしてガーリックに「パッとしない男は嫌い」などと言ってしまったのだろう!
「ちなみに、フォイユお嬢様。明日の朝食は何にしますか?」
フォイユは顔を覆った。
「ああ、ガーリック……!」
「分かりました! ガーリックを使った朝食にしますね!」
フォイユは、このままではいけないと思った。この感情を言葉にして、ガーリックに手紙を書いて、誤解を解かなければ!
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「ねえ!」
「何ですか、フォイユお嬢様?」
「ガーリックに手紙を書きたいのだけど、どう伝えればいいかしら!」
「……!?」
メイドその一は、変なお嬢様だと思った。最近、フォイユお嬢様はニンニクが好きだという。なので、食事のメニューは全てニンニクを使ったものばかりだ。恐らく、フォイユお嬢様のマイブームはニンニクなのだろう。ひとは、ハマるとそればかりになる傾向がある。フォイユお嬢様の頭を占めているのは、ニンニクを使った料理なのだろう。それほどに、フォイユお嬢様は、ニンニクを使った料理にぞっこんなのだ。それで、ニンニクに手紙を出したいという奇妙なことを言うのだ。
メイドその一は、神妙にうなずいた。ここは、頭をどこかでぶつけたんですか? と、聞いてはいけない。フォイユお嬢様の純粋な気持ちを汲むのだ。
「大丈夫です、フォイユお嬢様!」
「何が大丈夫なの! このまま、ガーリックに誤解されたままだといけないじゃない!」
「だ、大丈夫です! ガーリックにはフォイユお嬢様がガーリックが好きだということが伝わっているはずです! 食べてしまいたいぐらいだということが!」
「きゃあああああああああ!」
「……!?」
フォイユお嬢様は、顔を真っ赤にされて絶叫した。メイドその一は、ますます大丈夫なのか? と思ったが、どうフォローしていいのか分からなかった。
「そうよ、そうよね! ガーリックにあたしの気持ちは伝わっているはずよね!」
「は、はい! では、失礼します!」
メイドその一は、そのままフォイユの部屋から退室した。
メイドその一は、部屋の中から「きゃああああああ!」と黄色い声を上げ続けるフォイユお嬢様が心配になった。
「そんなにニンニクが好きなのか。フォイユお嬢様のマイブームは半端ねぇな」
しかし、ニンニクのマイブームが済めば、おそらく大丈夫だろう。
「毎日、朝昼晩、ニンニクの料理を作ること、っと!」
メイドその一は、メモに付け足して、雑務に戻ったのだった。
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