第七十一話 ①アヒージョと暗号!? 特殊な暗号を解け!?

「え゛? ど、どういうことだ?」


 俺は、間の抜けた声で聞き返していた。


「アヒージョは落ち込んでいたけど、俺の励ましで元気になったんじゃないのか?」

「そうですわ。だから、ガーリック様にムカッと来ましたので」

「……」


 俺は頭痛を覚えて、こめかみを押さえた。


「えっ? 暗号の森の暗号を解けというのか?」

「そうですわ!」

「第四エリアって最高に強力な暗号だろ? それを解けというのか?」

「その通りですわ! お見事ですわ! 流石、ガーリック様ですわ!」


 アヒージョは、拍手喝采を俺に送ってくれた。


「そんなことで褒められても。ちっとも、これっぽっちも、嬉しくないんだが」

「だから、暗号勝負してもらいますわ!」


 アヒージョは、サッと手で暗号に指示を出した。

 俺の体に暗号たちの影がかかる。


「あああああああああああああ!」


 俺は、崩れ落ちそうになったが、フラフラしながら立ち上がる。

 手を叩き合わせ呪文を唱える。


「解読! ……ダメか!」

「無駄ですわ! この暗号は特殊ですもの!」

「えっ? この暗号が特殊な暗号?」


 この暗号が特殊な暗号だというのか? そういえば、暗号そのものは同じだが、クエッション様の時とはまるで違う仕様だ。透明な壁に四方を囲まれているところが、今までとは違う。しかし、暗号をどうやって解けば良いのか、全く考えもつかない。


「ふふふのふですわ?」


 またしても、アヒージョがサッと暗号たちに手で指示を出す。


「あああああああああああああああ!」


 俺は、フラフラのフラフラになっていた。

 千鳥足でよろよろしながら、手を叩き合わせて、開く。


「解読……ッ!」


 その時、よろけて透明な壁に開いた片手を押し付けてしまった。

 しかし、これが怪我の功名なのだろうか。それはすべて偶然だった。たまたま、片手を透明な壁に押し付けてしまったが、何故かそれに反応したように暗号たちが少し震えた。


「……? 何だ、さっきの……? 呪文を放つ俺の手と透明な壁が反応した……?」


 俺は、朦朧とする頭で考える。アヒージョは暗号たちは特殊な仕様だという。それは、いつもの暗号と違うということだ。


「……どうやったら暗号が解読できる……? そうだ、この透明な壁だ……!」


 倒れそうな足を踏ん張ると、靴で地面を擦る音がはっきりと耳に響いた。開眼して、手を叩き合わせて開く。


「解読!」


 その両手を、透明な壁に押し付けた。すると、透明な壁がガラスが割れるような音を鳴らして、砕け散った。その破片はキラキラと光彩を放ちながら、空気に解けて消えた。すると、暗号たちも雲散霧消した。


「やったぜ……!」

「流石、ガーリック様ですわね……!」


 アヒージョは、悔しそうに歯噛みしている。

 ぱっぱらっぱっぱぱーと、どこからともなく効果音が鳴った。


『暗号が解読されました! おめでとうございます!』


 アナウンスと一緒に、空に文字が並んだ。


【答え:まだ終わりではない! これには続きがある!】


 俺は、上空に浮かんだ文字を見て、目を瞬いた。


「これには続きがある……? ……って、え゛? 続きがあるの?」


 しかし、当のアヒージョまで疑問符を浮かべている。


「えっ? なんですの? この暗号の答えは? 私が用意した暗号の答えじゃありませんわ!」

「なんだって……?」


 この暗号の答えは、アヒージョが用意した答えではない? 奇妙な出来事に、俺は嫌な予感を禁じ得ない。それにしても、暗号の答えが気掛かりだ。


「続きって? 暗号の続きか?」

「どういうことなのか、私にもわかりませんわ……!」


 アヒージョの後ろから誰かが歩いてくる。その人物の土を踏む音が聞こえて来た。俺は、眉をひそめた。


「どういうことだ……?」


 歩いてくる人物。それはどう見ても、俺が異世界に来てから一番良く知っている人物だ。パフェット。その人だった。

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