第四十話 ピンチなのに格好良いことを言った結果!

 あっという間に、俺たちは暗号たちに捕らえられた。暗号の山に横から突っ込んで顔を出したような格好で、俺たちは身動きができなくなってしまった。俺の横にはパフェットとアヒージョが並んで、暗号漬けになっている。暗号たちは、点滅しているだけなのに、ドヤァと言わんばかりだ。


 足音が俺の前で止まった。森の中にふさわしくない、高そうな革靴だ。それが、俺の目の前で、土を踏みにじっている。俺は、あごを起こして足音の主を見ようとした。しかし、クエッションの胴体が見えるだけで、顔まで見れない。きっと、ムカつく顔をしているんだろう。見なくて正解だ。そう考えた途端、クエッションがしゃがんで、そのムカつく勝ち誇った顔を見せつけてきた。


「残念だったな、ガーリックよ……」


 クエッションは、勝ち誇った顔で俺を見下ろしている。


「クッ! 何が望みだ!」

「ガーリック《Garlic》を好きになる方法が知りたい!」

「えっ!」

「それぐらい好かんのだ!」


 俺は奥歯を噛み締めた。

 ガーリック、お前は一体何者なんだ? どうして、クエッションにお前は毛嫌いされているんだ? クエッションは、俺を嫌う理由はないと言ったが、そんなはずはない。嫌いな理由がなくて、俺をここまで追い詰めれるはずがない。


 けれども、俺はガーリックの体に転生したばかりだ。ガーリックの事情なんて分かるはずがない。しかし、俺はこの異世界に来たことを後悔していた。それに、なんて厄介な奴に俺は転生してしまったんだ。


 クエッションは、しゃがんだまま首を傾げた。目には侮蔑の色が浮かんでいる。

 俺は、フッと笑った。


「俺のことが嫌いならさ……お前が俺の良いところを見つければ良いだけの話だろ!」


 俺の声は、暗号の森に木霊するぐらい大きくなった。

 隣でパフェットとアヒージョが驚愕している。


「無理だ! ガーリック《Garlic》は好かんッッッ! 煮ても焼いても食えん奴だッッッ!」


 クエッションは、額に青筋を作っている。


「……やれ!」


 俺のセリフにブチ切れたクエッションは、暗号たちに指示を出した。


「「きゃああああああああああああ!」」


 身構えた俺には、攻撃が当たることはなかった。

 しかし、パフェットとアヒージョが暗号たちに攻撃された。

 そのまま、事切れるように無言になったパフェットとアヒージョに、俺は恐怖で声を上げた。


「パフェット!? アヒージョ!?」


 俺は攻撃されていない。俺だけ、無事だ。

 顔を上げると、クエッションが嫌な笑みを浮かべている。


「お前の存在価値を試してやろう! お前の存在価値でこいつらを助けられるかな?」


 俺は、歯噛みした。

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