第二十五話 第四区域にようこそ!? 職員さんVS俺!?

 俺は、普通の荷馬車をヒッチハイクして、第五区域から第四区域まで乗せてもらった。

 運送屋の職員さん経由ではないので、ユニコーンの荷馬車には乗せて貰えなかった。しかし、普通の荷馬車でも、第四区域に向かうには暗号の森を通るので、そこだけは移動時間はあまり変わらない。ユニコーンの荷馬車は、高級車張りの良い乗り心地なのに、一分で着く。しかし、普通の荷馬車は何時間もかかるのに、ユニコーンの荷馬車に比べると、乗り心地は天と地の差ぐらい悪かった。着いた頃にはミキサーの中でかき回されたようにフラフラのヨレヨレになっていた。

 しかし、第四区域の宿屋に泊まって一日を終える頃には、すっかり元気を取り戻していた。


 翌日、朝食を摂った俺は、すぐに第四区域の運送屋に向かう。第四区域はおろか、第五区域の運送屋もどんな建物なのか分からない。けれども、道を尋ねるとすぐに第四区域の運送屋はすぐに見つかった。建物には、『開運』の字のマークが入った、洒落た看板が取り付けられていた。道行く人に訊けば、ここが第四区域の運送屋だという。突っ込んで聞いたところ、どの区域の運送屋もこんな感じのデザインらしい。


「ここが、運送屋か……」


 俺は、ドアを開けて中に入って行く。中は、コンビニ二つ分ぐらいの広さだ。賑やかだろうと決めつけていたが、そんなに五月蠅くもない。ソファには順番を待つ人がちらほらと座っている。窓口では職員さんが客を対応している。建物の中は真新しいペンキの匂いがほんのり香っていた。


 アヒージョは、ここで待ち合わせを指定してきた。

 俺は、辺りを見回す。


「えーと。アヒージョは……?」


 けれど、アヒージョの姿は見当たらない。数人しかいない店内から、アヒージョを探すのは簡単すぎるぐらい容易い。それなのに、アヒージョの姿はない。


「おかしい。確かに俺に宛てた手紙にそう書いてあったのに、アヒージョはいないのか?」


 わざわざ、暗号を解いて第四区域まで来たというのに。文句が出そうだ。ここまで来たのに無駄骨だったのか?


 後ろを向いた途端、背後に誰かが立っていたので、俺は総毛立った。隙間なく壁のように立っていた。吃驚した俺は、慌てて後ろに下がって距離を取る。


「な、なんだ? 職員さん!?」


 それは、運送屋の職員さんだった。

 その気配のない職員さんが、素早い突きを繰り出してきた。


 やられる!


 しかし、俺は微動だに出来なかった。瞬きもできないで固まっている。

 職員さんはニヤリと不気味に笑った。


「ガーリックさんですね。アヒージョさんから手紙を預かっています」


 やられると思ったその職員さんの手には、手紙があった。

 職員さんが手紙をそっと俺に押しつけた。俺は、無言で受け取った。

 職員さんはニヤリと不気味に笑い、そのままローヒールを鳴らしながら窓口に戻って行った。


「……何だ。ただのできる職員さんか」


 気を取り直した俺は、アヒージョからの手紙を開いた。

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