第17話 誇りと責任
中央管理局での挨拶も終わり、自由時間となりました。
正午までに、
臨時朝礼の件もあるので、中央管理室に向かっています。
他の皆様とは、別々の行動となりました。
レイティア様は、中央管理局の方々に個人的な挨拶をしてから、シャイン様と中央地下都市に買い物に行かれるそうです。
シャイン様は、レイティア様の挨拶中は、
アス姐は、
「折角、来たんだし、
そう言うと、
私は、中央管理整備室へ行く為に一階に向かおうと思ったんですが、管理整備部の場所がわからないので、聞いてから行くことに。
丁度、レイティア様の後ろに付いて局長室を出たので、管理局部に出ました。
あれは、誰?と言う位に業務を行っているお母さんの姿がそこにありました。
「レイティア様、あれは、私の母ですよね?」
「あぁ、アニスはニナ様の働いてる姿を見るのは、始めてなのね。そうよ、あれが働いている時のニナ様よ。普段の姿と違って、丸で別人になるの。仕事は迅速で正確無比で、とても凄いのよ。大樹の丘でも一緒に業務をしていたシャインがお二方とも凄すぎて、驚いていたわ。」
「家の中では、結構、のほほんとしてるか、お父さんとバカップルになってる所しか、見たことが無かったので…。」
「アニス、バカップルって、まぁ、確かにアル室長と一緒の業務の時に見惚れている姿は、時折、拝見したことはあるけどね。でも、公私の区別は付けて、業務はされているわよ。」
うーん、普段の姿をよく知る私からは信じられない光景だけど、でも、中央管理局主任というのは、伊達じゃないことがよくわかった気がしました。
「あら、アニス、私に何か用?」
「うん、お母さんに中央管理整備室の場所を聞こうと思って。」
「何、お父さんの所に行くの?なら、私が案内するわ。」
「案内は要らないわ。私一人で行くから大丈夫よ。場所だけ教えて。」
「えー、私もお父さんに会いたいのー」
「あの
私がそう言うと、局員の皆様が笑ってる。
笑われているのに気付いて、仕事モードのお母さんに戻る。
「こほん。わかりました。中央管理整備室への行き方よね。これをあげるわ。」
そう言うと一枚の紙を手渡される。
「ありがとう。では、中央管理整備室に行ってきますね。」
「では、室長に宜しくね。」
「はい。では、皆様、失礼しますね。」
私は一礼して、管理局部を後にする。
そして、見取り図を見ながら、中央管理整備室へと向かう。
一階部分全てが中央管理整備室らしい。大広間の大階段の後ろにある大部屋が管理整備部で、管理部と整備部は左右に別れていました。
作りは違えど管理整備部は、建物の中央にあるのは、ここも一緒らしい。
しかし、やっぱり、
外部は光晶石で作られているけど、内部は光晶石と影晶石を上手く組み合わせて、光と影のコンストラクトが出来ている。
うーん、この内部も
中央管理室に着いたら、お父さんに聞いてみようかな?
などと考えながら、
ノックをして、管理整備部へと入る。
「失礼します。室長はいらっしゃいますか?」
「あっ、はい。少々お待ちを。」
扉のすぐ近くのデスクで業務をしていた方が、すぐに対応してくれました。
そして、室長であるお父さんが来てくれました。
「やぁ、アニス。よく来てくれたね。
「はい。レイティア様とシャイン様は中央地下都市へお買い物に、アス姐は
「しかし、よく
「いえ、管理局で
「ここで立ち話も何だし、応接室の方に行くかい?」
「いえ、お仕事の邪魔をする訳にはいかないので、見学をさせてください。」
「そうか、なら先に臨時朝礼で、悪戯した者達が、謝罪をしたいと言っているのだが、こちらに来て頂いてもいいだろうか?」
「えぇ、構いませんよ。」
そうして、小会議室へと案内される。
「済まないけど、ここでちょっと待っててくれ。」
「はい。わかりました。隠れて待ってるね。」
お父さんは、苦笑して会議室を出る。
小会議室で一人待つことになる。うーん、そうだな、隠れて待ってみようかな。
えーっと、確か。
「光と影の精霊よ。我に力をかしたまえ。汝らの力を併せ、我が姿を隠したまえ。」
幻影の精霊術の応用して、姿を隠してみる。たぶん、解除しない限り、見えないと思う。
そして、あとは気配を静かに消して、周囲と同化する。
これであとは待って様子を見てみようっと。
少しして、会議室に朝礼で吹き飛ばされたと思われる女性二人が入ってくる。
そして、二人共、会議室に私がいることを気付いていない様子。
「あぁ、どうしよう。朝、あんなことするんじゃなかったわ。」
「だって、あんな無防備な状態だったし、どうなるのか、気になったじゃん。」
「そうだけど、驚いたわね。まったく効果ないし、何事も無く終わるかと思ったら、思いっきり吹き飛ばされたから。そして、あの微笑みが…。」
「うん、すごくにこやかでいて、とても何か怖い感じがしたよね。あの子、人の子だって言ってたよね。ホントに人の子なのかしら?」
「見る限り、魔力を抑えてた感じもないし、魔族と人のハーフでもないし、ハーフエルフでも無さそうだったからね。本当に人の子だと思うわよ。」
「単なる人の子では無いのは、確かよね。でも、特別管理整備補佐官というのは、頷けるわね。」
「だから、謝りに来たんでしょ。あんな怖い思いもうしたくないし、本当に悪いことしたって思ってるんだから。」
「私もそうだけど、あの子の能力って何かしらね?」
「もう、ラーハ、本当に反省してるの?謝る気あるの?」
「あるよ。でも、所詮は人の子じゃん。私は上級魔族よ。
「その傲りで、何度、痛い目にあってるのか、わかって言ってるの?」
「リリスも同じ上級魔族なのに、何でこうも違うかなぁ~。」
うーん、リリス様は反省してるみたいだけど、ラーハ様の方は、反省の色なしか…。
残念ね。建前の謝罪は要らないから、反省の海に沈めちゃいましょうかね。
「闇の精霊よ、我が願いを聴き給え。我が前の反省無き者を地の闇へと沈めたまえ。」
きちんと謝る気が無かった
「ねぇ、私、影の中へと沈んでない?」
「うん、沈んでるわね。」
「あれ、
「どうしてって言われても、私にはどうにもできないわよ。」
「あの建前で謝られても仕方ないので、きちんと反省して貰うことにしました。」
そう言って、気配を表し、お二方の前に姿を現わす。
「あのアニス様、先程の会話を聞いておらっしゃたのですか?」
「えぇ。聞かせて戴きました。えーっと、リリス様とラーハ様で宜しいでしょうか?」
「はい。朝礼の際は大変、失礼なことをして申し訳ありません。あのラーハは何故?」
「反省する意思が無いみたいなので、しばらく闇の中に沈んで反省して貰おうかと。」
「あのすみません、本当にすみません。お許しください。」
「あの本当に反省の意思があれば、魔力を使わずとも自然と出てきますので、ご安心ください。」
にっこり微笑み、さらにラーハ様に畏怖を与えてしまっている。
「あのアニス様は精霊を使われるのですか?」
「そうですよ。精霊さんは皆、友達ですから。」
「精霊が力の源とわかればって、あれ?なんで?どんどん沈んでいくんですけど…。」
「あの精霊さんに頼んでも無駄ですよ。私とラーハ様が持ってるかもしれない精霊の力は私より下ですから。謝る気はないみたいですね。では、しばらく反省してもらいましょうか?闇の空間の中の時間はついでに止めておきますから。」
「あのアニス様は、時の精霊も操れるのですか?」
「はい、時の精霊さんとも友達ですよ。私、一応、これでも
「嘘、ほぼ全ての大精霊を友としている女性に与えられる称号?!」
「あの出来れば、ラーハを許してくれないでしょうか? 決して悪い子じゃないんです。」
「では、リリス様に免じて、許しましょうか…。」
私がそういうと闇の精霊さんがラーハ様を解放する。
「はぁ、
「えぇ、だから、私も悪戯をしたにすぎません。」
「どう考えても、アニス様の方が悪戯が過ぎるでしょ。」
「いえ、あれが普通に何の耐性もない方だったら、どうなっていたかを考えましたか?」
「それは…。」
「しかも、無防備な状態で、複数の精神系の魔術や法術等を一点に受けるのですよ。精神崩壊してしまう可能性もあるのですよ。それを考慮せずに悪戯をしたで済みますか?中央の職員としての責任や誇りはないのですか?」
「「・・・。」」
お二方とも私の言葉に対して、何も言えない。私はただ正論を振りかざしている訳ではない。
職員としての誇りと責任を問い、相対する者への敬意を忘れていないかを説いている。
こんなことは、私みたいな小娘がすることではない。本来、大人と呼ばれている偉い人がすることだ。
「アニス様、大変、申し訳ありませんでした。中央の職員としての自覚が足りておりませんでした。どうかお許しください。」
「大変、申し訳ありません。中央の職員としてまた、種族差に関しても甘く考えておりました。今後、このようなことは一切行いません。どうかお許しください。」
「わかってくれれば、いいですよ。ちゃんと反省というより中央の職員としての誇りを持ってくださいね。」
「「はい。ありがとうございます。」」
これを小会議室の後ろの扉から入ってきていた臨時朝礼で吹き飛ばされた残りの方々とお父さんが見ていたらしく、お父さん以外は、私に対する畏怖と敬意を持ち、私の言動に猛反省した様子で、皆様、丁寧に心よりの謝罪をしてくれました。
そして、お父さんからも謝罪をされてしまいました。
「アニス様、私の部下が失礼なことを致し、大変、申し訳ありません。今後、二度とこのようなことが無いように中央の職員として誇りと責任を持って働くように注意していきたいと思います。」
と言われ、娘である私に深々とお辞儀をして謝罪をされてしまい、困ってしまいました。
「お父さん…いえ、室長。今後、このようなことが無いようにしっかりとお願い致しますね。種族は関係なくともあれだけのことをすれば、悪戯では済みませんから。それと自分の職務にしっかりと誇りと責任を持つよう教育をしてくださいね。では、この件はこれでもう終わりにしましょう。」
「ありがとう、アニス。私は父親として、お前がしっかりとここまで育ってくれていたことに感謝するよ。そして、誇りに思う。大樹の丘の皆様に本当に感謝をしなければならないね。」
「そんな私も偉そうなことを言って、ゴメンなさい。でも、間違ったことは言ってないと思うの。私も常々、自分の仕事に誇りと責任をしっかりと持って行うように主任に言われてきたし、周りの皆もいい方々だったから、それを体現してるに過ぎないのよ。」
「今度、ルーモ様に会ったら、改めてお礼を言わなければならないな。」
こうして、臨時朝礼での件が本当に終わりました。
この後、小会議室では、吹き飛ばされた11人の職員の方との交流をして、人や魔族、ハーフエルフといった方々と仲良くなることができました。
交流を深めていて、正午となったので、皆様もちょうどお昼ということで、一緒に大食堂に行くことに。
案内をしてくれて、とっても助かりました。
大食堂に着くと、ルーシェ様が待っており、私達を見るとにこやかな表情で声を掛けてくれました。
「アニス様、皆様と仲良くなれたようで何よりです。当人たちも反省しているようですし、アニス様への敬意と信頼が向けられているようですね。」
「朝の件は、もう終わりです。皆様、しっかりと反省してくれたようですし。しかし、ルーシェ様、覗き見は良くないですよ。」
「あら、バレてたのかしら?」
「えぇ、上から見通すような視線を感じたので、精霊さんに訊ねたら、ルーシェ様が魔術で覗いていたって。」
「アニス様は、日々、成長していきますね。役職も板についてきてますし、ホントに中央に来て頂きたいですわ。」
「とても有難いお言葉ですが、私は、まだ大樹の丘で学ばなければならないことが沢山あるのでご遠慮いたします。」
私達の会話に、一緒に来ていた皆様が驚かれ、少し緊張感が走っている。
「あなた達への処罰は、もうアニス様が降しているので、中央管理局としては何もしないわ。但し、アニス様が言ったことは肝に銘じておくように。」
「ありがとうございます。ルーシェ様。これ以上、処罰を与えるようなら、私が止めていましたけど。」
「そんなことはしないわ。ただ、私も管理局の職員にもしっかりと誇りと責任を持って職務に当たらないといけないわね。」
「言った私も何ですが、今思い返しても、結構、恥ずかしいんですから、止めてください。」
一気に顔が赤くなる私を見て、皆様が笑う。
でも、不思議と嫌な気分にはならなかった。そう、私をきちんと認めて、笑ってくれているのだから。
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