第13.5話 光の大精霊
私は、この庭園の特異点と呼ばれる場所の庭園管理を行っている光の大精霊と呼ばれています。
名前というか、真名はありますが、秘密です。
1200年前の抗争で私は一度、消滅し、新たに転生したので、以前の記憶が殆んど無いのです。
一時的にとは言え、私が消滅したために精霊界の均衡が崩れてしまったこと。
眷属以外の精霊にも、様々な迷惑をかけてしまい、新たに転生した際には、様々な精霊、大精霊が親身になって、私に色々と教えてくれたのです。
普通の精霊とは異なり、強大な力が使えるということ。真名を知られてしまえば、私だけでなく、私の眷属全ても支配できてしまうというのです。
なので、大精霊の保護の為、特異点の管理及び整備は、精霊のみで行うというのが、全大庭園の暗黙のルールとなりました。
生まれ変わり、ある程度、力が戻った際に、
しかし、魔力耐性が低かった為、面会の途中で意識を失ってしまい、それ以後、四大(火・水・風・土)の大精霊の副官たる四大の高位精霊が私の代理となったのです。
様々な耐性がきちんと上がった今でも、中央からの要件や使者が来る場合、私に変わり、四大の高位精霊が代理となって、対応することになってしまいました。
風の精霊に教えて貰ったんだけど、箱入り娘とか、深窓の令嬢と中央管理局の局員間で呼ばれているとのことでした。
確かに私は、
この
ただ、外に出ることは、四大の高位精霊から、禁止されている為、様々な話を聞くことが唯一の楽しみでした。
特に大樹の丘と呼ばれる庭園に一人の幼き人の子が現われ、その丘に存在する全ての精霊と友達になったということ。
数年後に整備士として派遣された時は、幼い頃の記憶が封印され、全く精霊の姿が見えてなかったとのことでした。
しかし、何かのきっかけで記憶が戻った際に全ての精霊と改めて友達となったというのです。
私には、その話が信じられず、作り話だとばかり思ってました。風の下級精霊は噂話や作り話が大好きなのです。
でも、大樹の丘には、古竜様が住まれており、魔族長の威厳を遥かに超える竜の威厳の耐性がなければいけないのです。
その中で、人の子が整備士として働いていること。他の種族とも仲良く、そして、その力に対応していること、信じられないことだらけなのです。
私が習った人という種族は、長生きしても、100年生きるれるかどうかの短命種であり、尚且つ最弱種でもあるということ。
しかし、その秘められた力は、どの種族よりも高く、各耐性や能力の向上、知識や技術の理解向上も早いということ。
人の心は、千差万別で様々な為、純粋に精霊と友になりたいと思うものが少ないため、
私の記憶の中で唯一残っている人という種は、
生まれる変わる前の私の唯一の記憶。あの方の為に私は、自らの命を顧みず、あの方の為に私の存在の全てを犠牲にして守った記憶のみ。
そして、守ったはずのあの方が、私の為に哀しみ、涙を流したことだけは忘れられないのです。
何故、私は命を賭してまで、あの方を守りたかったのか、その記憶はないのです。
守ったはずのあの方を哀しませ、私の為に涙を流してくれたのに、それ以外の記憶は何もかも残っていないのです。
他の大精霊様に話を聞いても、何も教えてくれません。
そして、人であるあの方は、もうこの世にはいないことのみを教えてくれました。
過去を遡っても、人という種族が
真に大精霊と友になった者は少なく、エルフという種族が、水と風の大精霊が友になったことがあるくらいで、片手で数えらる位しか存在しないのです。
過去に人の
紛争も終わり、私が転生して、幾百の年月が流れ、今に至ります。
大樹の丘の少女が
中央管理局から勅命として、特別管理整備補佐官が視察に来るので、四大の高位精霊及び光の大精霊は会合するようにとのことでした。
しかし、その翌日、一人の天族の襲撃に遭い、私以外の精霊達全てが強制的に支配をされてしまいました。
私は抵抗を続けて、何とか支配から免れていたのですが、闇の特殊結界によって封印されてしまっています。
ただ、この中からでも、この地の状況だけは把握できるので、他の精霊に害がないことを願う日々でした。
そして、査察日に中央より管理整備長官たる魔族の長と今までに見たことのなかった人の子が来たのです。
人の子は、特別管理整備補佐官であり、精霊眼の持ち主にして、
この方は、たった数時間で、この地に様々な奇跡をもたらしたのです。
天族によって、支配されていた私以外のこの地に生きる精霊全ての解放と治癒。
闇の特殊結界の中で、人の子の影から顕現された闇の大精霊様が友となり、内側から結界を壊し、私を助けてくれたこと。
私を友とする願いを受け入れ、更に親愛の証に新しき名前まで付けて戴きました。
天族に対して、不殺の強き願いと共にこの地に生きる精霊の怒り全てを使役し、一撃の名の元に再起不能にしたこと。
この地に生きる精霊全ての怒りの力を収束し、相手に一撃を与えれば、心身のみならず、魂すらも塵になる。
でも、一撃を与え、再起不能に追い込んだだけ。不殺の強き願いで力のみを支配した一撃。
確かに一撃を受けた後の精霊術士は、心身ともにボロボロで、死にかけていました。
しかし、人の子は、私達にこう願ったのです。
「精霊さん達の力を借りて、怒りの一撃を持って、この者を既に再起不能にしました。このままにしておけば、死が訪れるでしょう。しかし、私は出来ることならば、このような愚かな者であっても命を奪うつもりはありません。どうか、生かす機会を与えてください。その為の力をお貸しください。」
そして、私達の力を借り、
回復させる際、
無事に助けられた私達は、この方の加護にもたらし、私自身はこの方を守護することを決意する。
光の大精霊として、支配から解放への感謝と親愛の証であり、我が眷属全ての同意をもって、この方の生涯を添い遂げることにしました。
私の新しき友、精霊以外のはじめての友。そして、敬意と親愛を持って私にレムという名を与えてくださったお方。
新たなる私の友であり、主の名は、アニス様。風の精霊が噂をしていた大樹の丘の少女。
曇ることのないような心。人でありながら、後天的に発現した精霊眼。長い髪を短く纏めた美しき少女。
精霊眼の力を使わずとも、精霊から寄り添い、力を貸すことを躊躇せず、絶対的な信頼を託すことが出来る力を秘めているように感じました。
私より先に闇の大精霊様が珍しく人の子を認め、私より先に友となり、守護の決意及び眷属全ての加護を与えられていました。
すごく気まぐれで頑固な方なのです。先の抗争では、
理由としては、とても面白くないから、友として認める気にならなかったそうです。でも、本心を語らず、誰も本心を知らないのです。
四大の高位精霊も、この私の決定を認め、光の大精霊の補佐として、この方に加護を与えることとなりました。
本来ならば、四大の大精霊の了承を得らなければならないことなのだけど…。
四大の各高位精霊が揃って、一人の人の子に加護を与えることは、前代未聞のことであるのだから。
そして、この地で起きた事の顛末を四大の高位精霊に全て任せ、管理整備長官と共に特異点にて事後処理を任せ、私の新たな友人は、大樹の丘へと帰られることになりました。
本来ならば、私も特異点に残らねばならないのですが、この機会に
闇の大精霊様も、新たな友をとても気に入った様子で、一緒に行動することになりました。
私は知らないことが多々あるので、新たな友であり、主に色々と教えて戴くことにしました。
闇の大精霊様も教育係をしてくれるとのことなので、四大の高位精霊達は、不安そうにしてましたが…。
大樹の丘に戻り、アニス様が自室に戻られると疲労の為か、すぐに眠りにつかれてしまいました。
私は、疲労を少しでも取り除く為、光の力を使い、心身の回復を促進させる淡い光を全身に纏わせ、そして、アニス様の夢の中へと入り込みました。
アニス様は、私が来ることを待っていたようで、色々なお話をしてくれました。
そして、一番にアニス様がして欲しくないことを教えてくれました。
「私の為に決して、命を賭すようなことはしないこと。私は守られる為にこの力を使うのではなく、お互いを守る為にこの力を使うのです。これは約束です。私と友達になった精霊さん全員に同じ約束をしています。この約束を破ることがあれば、私はその時にその力を取り上げます。自身の身を守らず、主の為に命を賭すなど、愚考です。私達は主従の関係ではなく、お互いが友たる関係なのだから…。」
私は、助けられた時から、アニス様を主として、強く見ていることを見抜かれたようでした。
主従の関係ではなく、お互いが友であり、平等であることを強く主張されました。
私は、この約束を守れるのかが、不安なのです。私の遥か過去の過ちを再び起こさないことを自らに誓わないといけないのです。
まだ、この誓いはたてられません。
アニス様が深い眠りに入られたので、私は夢より出て考えてしまいました。
アニス様が起きてから、大樹の丘の地下にも古竜様の威厳が若干、ある為、竜耐性が低い私を守る為に
そして、アニス様と一緒に眠りたかった私を見て取ったのか、一緒に眠ってくれました。
これから、色々と様々なことを一緒に学んでいくこと、アニス様の心友として共にいることを誓い、私も久しぶりに心安らかな眠りに就くことが出来ました。
私達の力は、果てしなく強大な力であり、一つ間違えれば、アニス様自身をも滅ぼしてしまう。
そのようなことが無いようにアニス様の傍で、最後まで一緒に共にいること。
アニス様と一緒に微笑んでいられるように、私は一人の友として、誓うのでありました。
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