第10話 研修候補

両親の秘密を知り、本当はもっと驚きたいところなのですが…。

部屋の中を見渡すと、シャイン様は驚きすぎて倒れかけてるし、レイティア様もお父さんに関しては知ってたみたいけど、お母さんのことまでは知らなかったみたいで、物凄く驚いてる様子で冷静さを何とか保ってる感じに見える。

ルーシェ様は、私をすごく気に入られたのか、クラ爺に質問攻め中。

両親は、何かまだ隠し事があるのか、言い出しづらい様子。

なら、ルーシェ様に直接、伺えばいいのよね。


「あのルーシェ様、今日は私をただ驚かせるために来たのでは、無いのですよね?」


「あぁ、そうでした。きちんとした要件があって来たのよ。交換研修に関してのことなのです。」


「3日後に闇の大庭園ナイト・ガーデンから来る交換研修のことですか?」


「いいえ、違うのよ。本来、交換研修は同時に行われることなのだけれど、今回は研修期間が半年と言う異例の長さなの。だから、今回は同時に行うことが難しいというか、出来なくなってしまったのよ。」


「こちらからの研修期間は、いつも通りの3か月なのですか?」


「えぇ、その予定なんだけど、研修生も決まっていたの。でもね、問題が発生してしまって、研修候補生になってしまったのよ。」


「その問題って、まさか、私ですか?」


「やっぱり、察しがいいのね。流石はアルとニナの娘さんね。今回の光の大庭園ライト・ガーデンからの研修生は、アル・ニナ夫妻とその娘アニスが研修候補だったのよ。でも、まさか、アニス様が今回の研修に置いて、特別管理整備補佐官の役職についてしまったので、研修候補生を最初から見直してる所なのだけれど、実際にこの選択肢以上の家族が居ないのよね。」


「はぁ、恐縮です。って、私、役職に就いてなかったら、闇の大庭園ナイト・ガーデンに行けたのですか?」


「えぇ、アニス様の両親は承諾してくれてるし、あとは貴女次第だったのよ。でも、この役職の件で話が流れかけているの。」


えーっと、確か、闇の大庭園ナイト・ガーデンから来るのは、管理整備官のご家族で、確か上位天族の一家だったわね。

お二方とも管理整備官職で研修生。お子さんは、まだ幼年学校の生徒さんで、こちらの基礎学校に転入予定だったはず…。

つまり、管理整備官クラスの交換研修が今回の主な研修内容と言う訳なのかしらね。


「中央の管理整備官は、家族でその地位にいる者が少ないのよ。そこで白羽の矢が立ったのが、アル・ニナ夫妻だったのよ。私の両手を交換研修に出すなんて、凄いことだったのに…。この役職の件で全部、1から考え直し。中央の管理整備官にも夫婦はいるのだけれど、今は他の庭園に各々、出張中だし、それを呼び戻すとなると、折角、軌道に乗ったプロジェクトがダメになってしまうから、呼び戻せないのよ。あとは新婚夫婦でまだ管理整備官になったばかりだから、その夫妻を出すこともできない。他の各管理整備室も調べてみたけど、全部ダメなのよ。」


「大変なんですね。いろいろと。」


「そうなのよ。全部、ク…じゃなかった。様のお陰で全てが白紙になってしまったのよ…。」


「クラ爺、何とかできないのですか?」


「うん? 闇の大庭園ナイト・ガーデンの方には、先にそちらの研修が終わってから、こちらの研修生をひと月遅れでそちらに送るのでも、構わないかと打診した所、OK貰ってるんじゃが…そういえば、長官に言い忘れておったわ。すまんすまん。」


この一言に一瞬の沈黙が…。

それもそのはず、とても大切な要件が顧問官から長官に伝達されてないのだから。

ルーシェ様は、安堵と同時に軽く怒ったのか、抑えていた魔力が少し漏れ出している感じがしてる。


「クラルテ様、そういう大切な要件は、しっかりと伝達して貰わないと困ります!でも、それなら、研修生問題も解決ね。アル・ニナ夫妻に闇の大庭園ナイト・ガーデンでの研修を命じます。娘さんの同伴も宜しいですよね?クラルテ様?」


「それは仕方あるまいが、同伴するかはアニスが決めることじゃ、行きたくなければ行かなきゃいい。」


「いえ、私、喜んで両親の研修に同伴させて頂きます。但し、研修生としてではなく、家族の一人としての同伴を希望致します。」


クラルテ様もルーシェ様も私の即断即決に驚いてる様子。

でも、私も闇の大庭園ナイト・ガーデンに行ってみたいし、一生で行けるかどうかもわからない所だもの。行ってみたいのは当然よ。

でも、研修生扱いで同伴すると面倒ごとに巻き込まれそうだから、一家族として同伴した方がきっと面倒ごとも少ないでしょ。


「アニス様の即決に感謝します。それでは、その様に向こうには返事を致しますね。アルとニナもまだ先のことだけど、研修生として宜しくお願いね。」


「はい。光の大庭園ライト・ガーデンの代表として、しっかりと研修に励んでくる所存です。」


「私も同じく、闇の大庭園ナイト・ガーデンの知識や美しさをしっかりと学んでくる所存です。何よりも娘も一緒にくるので、とても安心ですわ。」


「クラルテ様も宜しいですね。」


「アニスが決めたことを横からダメとは言えんじゃろ。期限付きの役職の休暇だと思って、行ってくるといい。」


「ありがとう。クラ爺。私も闇の大庭園ナイト・ガーデンの景色を沢山見て、勉強して来るね。」


「うーん、そう言えば、アニスの役職の期限を半年と決めておったが、期限の開始日を決めてなかったのう。面倒じゃから、今月の一日付で1年の役職としよう。研修終了まで、しっかりと研修生の為、の任をすること。あとは向こうに行っても困らんように役職としておくかのう。まぁ、アニスも解ってるとは思うが、向こうののみに話をしておくだけじゃから、向こうの中央のお偉いさんとかに挨拶する必要とかは無いから、気にせずにやってくれ。」


「うぅ、自衛の為とは言え、半年が1年に延びた…。」


「別に延びても時間なんて、然程、変わらんから影響などない。ルーシェ、それで問題なかろう。」


「はい、クラルテ様。全くもって問題ありません。では、アニス様、1年間、宜しくお願い致しますね。」


うぅ、長命種たるお二方には1年なんて1ヶ月程度でしかないんだった…。

短命種たる人の子には、充分に長いんだけどなぁ~。

ルーシェ様が、すごくニコニコされてる。余程、私のことを気に入ってくれたのだろうか…。

横目で両親を見ると余りにも嬉しかったらしく、二人して号泣してるし…。

シャイン様とレイティア様は、私のことをなんだか、少し怖がってる気がするのはキノセイかしら…。


「とりあえず、3日後に来られる闇の大庭園ナイト・ガーデンからのお客様の下見を軽くしようかしら。アニス様お願いしますね。」


「あの私の両親はどうしましょうか?あれだけ喜んでるのに水を差すのも何かと思いますし。」


「そうね。あの二人はいつでも視察なり査察なりで来られるから、気にしなくていいわ。と言う訳で、二人きりでの案内をお願いするわね。」


「はい。わかりました。では、レイティア様にシャイン様、ルーシェ様の案内をして参りますので、私の両親を宜しくお願いします。」


「了解したわ。アニス。ご両親のことは私達に任せて、ルーシェ様のことをお願いしますね。」


「お二方、ありがとうございます。では、クラ爺、失礼しますね。」


「クラルテ様、あとでまた伺いますね。では、失礼致しますわ。」


こうして、私とルーシェ様は、この大樹の丘の簡易視察と言う名のルーシェ様と談笑と言う散歩の為、管理整備室の客間から出ていき、外へと歩き出すのでありました。

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