星の記憶、時の声―Memory of the planet, voice of time.

作者 星崎ゆうき

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★★★ Excellent!!!

作者様の作品は、ひとつずつ大切に読ませてもらっています。
その中で、特に舞台やテーマのスケールが大きく、映画を観ているようなSF作品でした。

現代から遥か未来の世界、穏やかに暮らしていた主人公・空が出逢ったのは、記憶喪失のアルビノの女性・結衣。
どこか変わった彼女と少しラブコメな日々が過ぎていきますが、彼女の記憶が戻ったときから、凄惨なまでの「終焉を迎える過去世界」との闘いが始まります。
「世界を救うのは君だ」
そう言われても空は闘う理由が明確に分からず、迷うあいだにも仲間が倒れていく。
結衣とついに1000年前の過去世界(読者の私たちにとっては現代)にタイムスリップした空は、そこであらゆる衝撃の真実を知り、あるリスクを負いながらも闘いに身を投じていきます。

「心」を持たない結衣に、「心」を感じて惹かれていく空。
アルビノの赤い瞳の奥に見える、結衣の感情。
未来が改変されて自分が消えてしまっても、彼女さえ生きていればいい。
結衣の「心」に生き続けることさえできるのなら。
空がそう願うシーンでは、息が締めつけられて涙が溢れてきました。

作者様の作品では「心とは何か」というテーマが多く扱われます。
その中で、この作品の「瞳の奥に見えるものが心ではないか」という一文が印象深かったです。
確かに、逆に心が死ぬと瞳も濁ってしまいます。
だからきっと、結衣の赤い瞳は空にはとても澄んで見えたのでしょう。

素晴らしい作品です。
しばらく余韻に浸りたくなる、そんな物語でした。

★★★ Excellent!!!

未来の大学生活を通じて描かれるボーイミーツガールなのかなと気軽に読みはじめましたが、次第に苛烈になる物語に、あまりに過酷な運命に、気づけば息を詰めて文章を追っていました。
幾多の困難と悲しみののちに主人公が清らかな祈りへと辿りついたとき、それが叶うことを祈らずにはいられませんでした。
祈りのために祈りたくなる物語。SFもまた、人の心を描いた物語なのですね。

マイナーな研究室に所属する主人公と、彼の前に突如現れたヒロインが次第に距離を縮めていく微笑ましい物語が、破滅が目前に迫った世界を救う深刻な物語へと変わっていく展開と、その中で二転三転する登場人物たちの関係、そして、祈りという科学とは隔たりのある行為へと辿りつく結末など、構成の巧みさがこの物語の魅力だと感じました。
もちろんヒロインの可愛さや、恋が芽生えていく過程には頰が緩んでしまうのですが。

SFが好きな方はもちろん、恋愛ものが好みの方にもお薦めいたします。
主人公の祈りに触れるとき、きっと目頭が熱くなります。

★★★ Excellent!!!

セカイ系なSFもの。

1000年前に一度途絶えた世界。数少ない遺産の「インターネット」から旧世界のサルベージを下地に、謎の少女との出会いから発展する世界、そして時空の騒動に巻き込まれていくストーリー。主人公やヒロインが世界存続に関係してくるのは、広義的なセカイ系に通じるものがあるかと思います。

作りこまれたSF描写がいい味を出しつつ、途中途中で挟まれるラブコメ的なシーンはとてもキャッチャーであるため、SFに不慣れな方でもキャラクターのやりとりを追っていくだけでも楽しめるかと思います。設定的にはかなり重めなSFですが、部分的にライトなところがあるがこの作品のポイントかと思います。

SFに読み応えと読みやすさの両方を求めている方は、是非このハイブリットな作品を一読してみてはいかがでしょうか。

★★★ Excellent!!!

文明が崩壊してから1000年。
大学生の空は、研究室の仲間と共に、かつて世界の情報の全てが集約されていたインターネットにアクセスし、当時の風景をデータとして現世に再現させるシステムを構築していた。
ある日、遥か過去のデータ上の画像に映っていた少女・結衣が目の前に現れたことから、空の運命は動き始める。
時空を遡るシステムを完成させた彼らは、世界の崩壊を食い止められるのか。

壮大な時を隔てた、心の震えるボーイミーツガールの物語でした。
最初は風変わりな結衣との共同生活に戸惑っていた空ですが、ラブコメっぽい微笑ましいやり取りを重ねるうち、少しずつ心が繋がっていきます。
過去に遡ってからの息をもつかせぬ怒涛の展開では、空と結衣との繋がりが一層強く感じられ、胸が熱くなりました。

二人が協力することで発動する能力『エンドリクレイブ』の描写は圧巻。
その強大な力を使用するごとに消えていく空の記憶。そのことに起因する哀しい予感が、美しさと力強さを感じるラストに仄かな余韻を残しています。

新海誠監督の初期のSF作品がお好きな方には、堪らない雰囲気の物語なのではないでしょうか。
ところで、作中何度も登場するウメワサビ味のラーメンが気になる今日この頃です。

★★★ Excellent!!!

時空を超えたりします。

主人公、空は「エンドリクレイブ」という能力を使うたび、だんだん記憶を失ってしまう。
本人はそれを受け入れ、まわりもわかっていて、それに頼るしかない。
何かを犠牲にしなきゃならないギリギリの状況。
そしてラストは……。





いつだって、君の心に、ウメワサビ。
涙が出ます。

★★★ Excellent!!!

私達が立つこの世界は、自分が信じている世界なのだろうか。
この目に見える世界、いや、「見えている」と思っている世界は、本当は違うのかもしれない――。

壮大な時空を辿る中で見えて来る全貌に、思わず息を飲む。
旧世界の崩壊に、あなたは何を思いますか。

深い深い切なさと願いと祈り。
どうか届け、と思わずにはいられない。



涙が浮かんでくるのは、ほんのりウメワサビ味のワサビが、ツンときたから。
なのかもしれない。


君は時の声を聞いたか――。