X 底辺だった僕は色々と疲れました
「此処は何処でしょうか……?」
適当に校舎を歩いていたら迷ってしまった。しかし、運が良い事に僕は丁度目的地であった図書室の近くに居た。今は授業中なのか、生徒の姿が見られない。これなら誰の目にも留められずに本を読める。
入り口には普通は司書の先生が居るはずだが、幸いなことに、今は席を外しているらしい。僕はそのまま入り口から入り、本棚を見回す。
「絵本に哲学書、戦術、大衆文学や詩集まで……って、この学校は貴族学校? あ、禁書のコーナー………何故その様なものが此処に……」
少し心配したが、床を見て納得した。床には幻惑の術式が描かれていた。つまり、一般人や一定の耐性のない人には壁に見えている様だ。更に詳しく術式を解析していると、面白い効果を見つけた。それは、幻惑で見せている物を触れている様に認識させる。という内容で、何もない所に寄りかかる事が出来るのだ。
「これは採用しましょう」
僕はその部分だけを手帳に書き写した。が、そこで禁書のコーナーからこちらに向かって来る、一人の足音が聞こえた。僕はその音を耳で拾うと顔を上げた。足音の主は、制服からしてこの学校の生徒だと思われる男性だった。その生徒は、少し長めの茶髪で、身長は僕より少し高い位だった。
「何者……ウチの生徒じゃ無い………賊?」
「わ、私は賊ではありません! そ、それより貴方こそ禁書のコーナーから現れて怪しいですよ!」
「……しかし何故侍女服なのだ…?」
あ、これ聞こえていないやこの人。今、完全に自分の思考の世界に囚われてる。すぐに逃げないと殺されそうなのでここは一旦、
「ワ、ワンド3、逆位置!」
学校を後にして家に着くと、もうそろそろ日が落ちる時間だった。僕は蝋燭に火を灯し、寝室に向かう。そして、寝室の隅っこに転移陣を設置して、僕はお母様の所へ飛ぶ。
「ただいま帰りました……」
「おゝ、お帰り。どうした? 転入試験で何かあったのか?」
僕の疲れた様子を見て、お母様は心配してくれた。そう言えば、僕自身が心配されたのは初めてだな………
「試験は問題なく受かりました。ただ……」
「ただ? どうしたのじゃ?」
「高慢さんが……その………」
敢えて図書室の事は伏せておく。理由は簡単、お母様が本気でその人を消しに行く可能性があるからだ。これは冗談では無く実際に未遂があった。でも、その話は後ほど……
「あゝ…あやつの美少女に対する悪い癖か……」
「癖…ですか……こんな私が美少女に見えるなんてどうかしています………」
これは卑下しているわけでは無い。実際に校舎などで見かけた女子生徒には僕よりも可愛い子や、綺麗な子が沢山いた。だから自信を持って言える。僕は美少女では無い。
「それを同じ歳の
「は、はい。き、気を付けます」
お母様は何故か黒いオーラを出して僕のそう言った。お母様がそう言うのならそうなのだろう。だから僕はお母様の言う事を守ることにした。
「そう言えばそろそろ夕飯の時間ですね。今から準備しますっ?!」
僕はそう言って台所に向かおうとした。が、お母様が草の拘束系魔法で僕を拘束した。
「お、お母様!? き、急に何故私を拘束したのですか!?」
「いや、特に大きな意味はないのじゃが、今日は試験の合格した日じゃろ? じゃから今夜は儂が作る。どうせ作っている途中でも手伝うとか言い出しそうだからそのままにしておく」
「お母様の手料理ですか? それは楽しみです! 大人しく待っています! なので拘束を解いて下さい! ちょっと、そのっ……変っ、な所に刺激が……ひゃんっ……んっっ!」
しかし、お母様はそんな僕の声に耳を傾けずに台所に消えて行った。この状態どうしよう……立ったままだと疲れるし、動こうとすれば拘束が強まるし…………うん、動くのは止めよう。
「それにしても、んっ、どうしてお母様は魔術ではなく魔法で私を拘束したのでしょうか……」
台所からは包丁が食材を切る音や、ソースを作る音、それにほのかに甘酸っぱい食欲をそそられるような香りもする。
「そう言えば魔法による拘束から抜け出す方法があった記憶が………」
確か前にお母様から少しだけ、豆知識程度に教わった事がある。拘束系の魔法で拘束された時、自分の魔力で拘束している魔法に干渉し、命令を妨害して抜け出すことが可能らしい。
僕は試しに自分の魔力で拘束している魔力で構築された蔓に干渉してみる。すると、直ぐに拘束が解けた。が、それと同時に魔力切れで僕は倒れてしまった。そして、拘束が解かれた蔓が再び僕を拘束する。今度は完全に縛られた。さっきよりももっと複雑で、性感帯を刺激してくる。
そう言えば忘れてた……魔法の場合、術者の性格によって性質が左右されるんだった………そしてお母様は高慢さんと同じ類の性格だ……………ああ、自分の魔力量が恨めしい……もっと多ければ更に大きな魔法や魔術を使えたのに……今の魔力では精々消費を抑えても中級魔術までしか発動できない……それに魔法なんか詠唱込みでやっと初級が発動出来るか出来ないか程度だし……どうやって上げられるのだろうか?
そう考えている内に、遂に脳まで魔力切れの効果が回って来た。そして、とうとう僕の意識は消えてしまった。
僕の目が覚めた頃にはお母様の料理がテーブルの上に並べてあり、僕はと言うと、ソファの上で寝かされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます