Ⅷ 底辺だった僕は転入の準備をしました
「おおっ、高慢の奴が理事長になったのか。おーい、ピュルテ。転入についての話がある。ちと、こちらに来てくれぬか?」
「はい、ただいまー」
草むしりをし終えて燃やそうとした時に呼ばれたので、僕は急いで雑草を燃やし、灰をまだ種を植えていない畑に撒いてから来た。
「お母様、転入についての話ですか?」
丁度お昼が終わり、庭の草むしりをしていた時に呼ばれたから急いで来ちゃったけど、泥とか落とし忘れてないよね?
「ああ、それでその転入についてなのじゃが、試験は他の学び舎とほぼ同じ感じじゃ」
「となると、試験は魔法・魔術技能と基礎ですね」
「じゃが、そこにもう一つ条件がある」
「条件ですか?」
イスクゥシェは確か魔女でも平等に扱ってくれる国だったから、魔女関連なのかな?
「固有魔法もしくは、固有魔術の披露じゃ」
全く関係無かった…………
「固有ですか……となると最近作ったアレでしょうか?」
「アレとな?」
「はい。えっと、確かこれが一番理解が簡単なものですが……」
僕はタロットカードの15番を渡す。それを受け取ったお母様はすぐに笑った。
「ウフフフフッ……全くライラと言いお前と言い、面白い事を考えるのぉ」
因みに15番のカードは大アルカナの悪魔だ。僕がこのカード達に施した魔術は、『そのカードに対応する意味の現象を発生させる。』と『そのカードに対応するモノを召喚する。』の二種類だ。しかし、後者の方はまだその対象と契約していないので発動出来ない。
これらは戦闘にも研究にも使えるように工夫して構築した、僕の自信作だ。まぁ、戦闘用の魔術はもしもの時に備えてみたいな感じだからあまり使わないだろうけどね。
「これなら問題無く通るじゃろうな。ささ、実施日は明日じゃそうだ。早めに準備しておきなさい」
「分かりました。では先に転移陣を自分の部屋に設置しておきます」
安心できる一言を聞いて、僕は急いで転移陣を設置しに行った。
そして設置し終えた。
「こうして見ると、短い期間で色々と体験しましたね……人族辞めたり、お母様が出来たり、悪魔様と契約したり………」
鞄に色々と詰め込んでいて、そんな事がふと思い出してしまった。中には悪い思い出になるものもあったが全体的に良い思い出が多い気がする。そんな明るい思い出がこれからも作れるように僕は祈った。
「さて、ある程度必要な荷物は揃えれましたし、夕食の準備を始めましょう」
僕は自分の部屋から出て、台所に向かった。今夜はお母様に感謝を込めたものを作ろうと張り切ったら、豪華になってしまった。流石に2人分では多過ぎたので、森の動物達にお裾分けすることにした。初めてこの森の中で過ごし始めた時は気付かなかったが、彼らはこの森に長く住んでいる希有な存在たちだった。最近はバルバトス様と契約したお陰か、彼らが伝えたい事が何となくわかるようになっている。
「いよいよ転入ですか……この森から離れるのはちょっと寂しいです………」
僕は、食後に寝転がっていた黒狐の毛を撫でながら呟いた。黒狐は撫でられて気持ちがいいのか、時偶大きな欠伸をする。それを目撃した他の動物達もそれに釣られて僕の周りに集まって来る。
「この子達にも触れ合う時間が減る前に堪能しなきゃ」
僕はワシワシと動物達を沢山可愛がった。
因みに、僕が向かう国はイスクゥシェという名前だ。イスクゥシェは帝国とは違って、種族差別が無く、魔女が多いらしい。それに、国に学園と言う機関が存在しており、学園長の権力がその国の侯爵と同じくらいあるそうだ。
学園は貴族の子女たちが主に通っているが、才能さえあれば平民でも入学出来るらしい。そこでは変わり者な学生が多いらしいが、僕にはリカイデキナカッタ。
それと学費は国が全て負担するからダタ! タダと言えばあのタダだよ!
他国の子が編入する際は、願書を送れば良いらしいが、他国からの編入は試験が難しい為あまり来ない。そもそも、イスクゥシェは他国からは魔女を崇拝している所為であまり良い印象を持たれていない。しかし、国に存在しない僕があの願書で編入試験を受けられる事が謎だ。やはりお母様は実は偉い人なのだろうか?
だが、考えても答えは出ない。ならばもう考えるのをやめて、モフモフを堪能しよう。
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