第32話 科学部、コピー用紙にこだわる!

「なかなか雨止まないわね。梅雨なのかなぁ」

「梅雨とかあるんすか?」

「大陸が一つだけだと、風の影響とか全然わかんないわね」

「え? 大陸が一つってどういう意味っすか?」


 金太は今までの会話を全く理解していなかったのだろうか。何度となくパンゲアの話は出ている気がするが。


「だからー、今立ってるここがパンゲア大陸といってー、現代の陸地がぜーんぶ一つにくっついてた頃なんだねー」

「意味わかんないっすけど」

「ペルム紀の頃は世界中の大陸が一つにくっついてたのよ。それがパンゲア大陸。プレートテクトニクスって習ったじゃない」

「……?」

「授業中なにやってたのよ、このカノウモビックリミトキハニドビックリササキリモドキは」

「姐御先輩、最近のツッコミ長いうえに意味不明です」


 解説しよう。カノウモビックリミトキハニドビックリササキリモドキとは、昆虫綱バッタ目キリギリス科に属するササキリモドキの仲間である。正式名称ではないらしいが、その名前で既に市民権を得ている。以上!


「姐御先輩、プレートテクトニクスは習いませんよ。僕たちには常識レベルですが」

「大陸が全部くっついてるって、それ、めっちゃ広いんじゃないすか? 海岸沿いに出たのはミラクルじゃないすか?」

「そーゆーことだねー」

「現代の陸地の総面積は約1億5千万km²、これが一つにまとまっていたと考えればいい」

「どれくらい広いのか見当つかないっすよ」

「日本の面積が約37万8千km²で、全陸地の約0.25%だ」


 金太が首を傾げている。まあ、わからんだろうな。作者にも見当がつかない。


「そだねー、ユーラシアが54,000,000、アフリカが30,370,000、アングロアメリカが24,490,000、ラテンアメリカが17,840,000、南極が13,720,000、オーストラリアが9,008,500、全部足すと149,428,500 km²だねー」

「コピー用紙が1 m²で64gと考えて、0.064×1,000,000×150,000,000だから9,600,000,000,000、パンゲア大陸にコピー用紙を敷き詰めたら96億tの重さになりますね」

「それ、何の役に立つんだよ」

「それもそうだな、コピー用紙じゃなくてグロッソプテリスの葉っぱ何枚分になるかを計算すべきだった」

「グロッソプテリスだったらアバウトに30cm×5cmくらいでいいんじゃない? 150cm²よ?」

「そういう問題じゃなくて、それ計算して何の役に立つんすか。大体そんな数字の羅列なんか誰もちゃんと読みませんよ、サクッと読み飛ばしてますって」


 なんか最近金太がとてもまともに見えてきた。これから金太主導で行こうか。


「そんなことするくらいなら、サハラ砂漠にグロなんとかテリスの葉っぱを敷き詰めることを考える方がいいっすよ、緑化に貢献できるじゃないっすか」


 前言撤回。


「バカ言わないでよ、サハラ砂漠に日本がいくつ入ると思ってんのよ」

「およそ24個だねー」

「え、マジっすか!」

「アラビア砂漠だって日本が7つ近く入るよー」

「グリーンランドでさえも日本5つ入ってお釣りも来るわよ」

「カスピ海にもすっぽり入りますね」

「日本小っさ……」

「0.064×1,000,000×150,000,000=24,192,000,000、日本でさえもコピー用紙を敷き詰めたら2400万トンの重さになりますね」


 だからなんでコピー用紙?


「小さいって言っても、日本の本州は面積で言ったら世界で第7位の島なのよ?」

「北海道でも21位、九州でも36位、一つ一つはそれなりだよねー」

「小さい関連の話になると急にムキになる二号先輩が可愛いっすね」

「コロスよー」


 いちいち反応する二号がまた可愛い。


「つーか、なんで二号先輩は一号じゃなくて二号なんすか?」

「あ、それは僕も気になってました。二階堂さんだからですか?」

「えっ、二号先輩って二階堂さんなんすか?」

「どーもー、初めまして二階堂ですー」

「人は見かけによらないもんすね。村木さんかと思ってました」


 寧ろその『村木』がどこから出て来たのか謎だ。つーか、見かけ『村木さん』ってどういう人なんだ?


「確か一号が村木さんだったよねー」

「木村さんじゃなかった?」


 どうでもいいと思われる。


「では、何故『二号』先輩になったんですか?」

「教授も知らなかったの? うちの学校の伝説なのに」

「二号先輩、我が校の伝説だったんっすか!」

「なんだっけねー?」


 本人は忘れているようである。レジェンドというほどの騒ぎでもないらしい。


「うちの学校の入試、全問正解で入学したの、二号が二人目なんだよ」

「あーそうだっけ?」


 おいフツーにレジェンドじゃねーか!


「じゃあ、僕は三号ですね」


 教授よ、お前もか。


「どうして僕は三号と呼ばれていないんだろう?」

「教授って名前の方がしっくりくるからだろ」

「なるほどー」


 三人の声がハモった。

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