暁金牙の報告書その7

十月一日

 本日、ソニックを作戦のために送り出しました。銀牙ぎんがは未だに皇太子様の元から帰ってきません。



 以前からソニックに対する違和感をお伝えしたと思いますが、それについても報告を。アリシエにソニックとの出会いを聞いたところ、アリシエは覚えておりませんでした。さらには激しく混乱して気絶。かと思えばアリシエではなくアルウィスが出てきました。


 アルウィスの方はソニックを知っておりました。アルウィスはソニックと出会った日について話してくれたのですが、その話が妙なのです。なんでも、突然綺麗な恰好で戦場に現れ、アルのことを「父さん」と呼んだのだとか。


 実はソニックにかつて聞かれたことがあるのです。「タイムワープを信じるか?」と。ソニックの話とアルウィスから聞いた話が正しいとすれば、ソニックは未来から来た私の親族ということになります。


 すぐに信じられる話ではありません。虹牙こうがの能力もアルの「神の眼」も普通ならば有り得ない超現象です。超現象がこんなにも一箇所に集まるものでしょうか? もし集まったのだとしたら、何か目に見えない大きな力が我々を動かしているのでしょうか?



十月三日

 本日、ソニックを送った使用人が帰って来ました。ソニックは昨日、無事に屋敷に入ったそうです。陛下、あと三ヶ月もしないうちに戦いが始まります。いつ何が起きてもいいように備えてください。ここで皇太子様が動けば、狙いは間違いなく陛下です。


 具体的な日時はわかり次第フィールを介して伝える予定ですが、可能なら陛下に連絡します。今後に関わる大切なことです。どうか、連絡した際には近辺の人払いをお願いします。





十月十六日

 ついにアリシエが出てきました。ですがシャニマでの辛かった記憶を思い出したようで。先代のことと先代の最期について、語ってくれました。その後は先代と似ているからという理由で避けられましたが。


 父様の、先代の死をこれで受け入れられます。やっと真相がわかったから。父様は戦闘貴族として、人を守って死んだ。それだけで私はもう充分です。



 ですが一つ、気がかりなことを耳にしました。先代当主、風牙ふうがからの伝言だそうです。アルが記憶を思い出した際に伝言を思い出したようでした。その伝言を陛下にもお伝えします。


「イグニス皇太子は、有色人種ではなく『神の眼』を恨んでいる。『神の眼』を滅ぼすためなら何でもするよ。この戦争だって、彼が仕組んだようなものだからね」


 私は早急に父様の残したこの言葉の真意を調べます。陛下、心当たりがおありでしたら教えてください。狙いは陛下だけでなく、「神の眼」の血筋を絶やすことにあるのかもしれません。

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