ダメ姉は、勉強会に参加する(その5)

「―――しっかし。改めて随分とまた用意が良いわね。ローションどころかエアマットまで用意されてるなんて……一体どこのいかがわしいお店なのよこの家は。マコとコマちゃん、どんだけ爛れた性活もとい生活送ってんのよ。マコが買ってきたとは思えないし……どこで買ってきたのかしらねこのオープンエロ娘は」

「誰がエロ娘ですか失礼ですね……私たちが購入したのではありません。叔母さまが小説のネタになるかもと突発的に購入されただけですよ。…………まあ、当然私と姉さまの夜の営みに有効活用させて頂いてもいますけど」

「エロ娘で合ってるじゃないの……羨ましいわね代わりなさいよ」

「絶対嫌です♡」

「…………あ、の……二人とも?」

「「?」」


 流血沙汰一歩手前で、最愛の妹と最高の親友の私を巡る争いはどうにか止めて貰えたんだけど。


「そのさ、ホントに……するの……?」

「はい!今日という今日こそ、この分からず屋に引導を渡し、そして綺麗さっぱり姉さまの事を諦めさせますから!」

「必ずコマちゃんから奪い取ってみせるから待ってなさいねマコ」

「…………」


『元々マコの勉強の疲れを癒すって目的でお風呂に入ってたわけだし。場所もちょうど良いし。―――どっちがマコを気持ち良くマッサージできるかで勝負しましょうよ』


 その代わりと言わんばかりに、そんな妙なことを言い出した親友カナカナの発言を皮切りに、コマVSカナカナのマッサージ勝負が始まることになった。

 ぶっちゃけ、そんな勝負何てわざわざ受けてたつ必要性なんて無いし……普通の状態のコマだったらカナカナの提案を軽くいなしていたところだったのだろうけど……


『上等です。いつぞやのマッサージ対決は―――あの時は姉さまがあまりの気持ち良さに失神なされて勝負が有耶無耶になっちゃいましたし……その続きとしようじゃないですか』


 珍しく頭に血が上ってしまっているコマは、カナカナの提案をあっさり受け入れてしまう。……冷静なようで意外とコマって負けず嫌いなんだよね(勿論そこも最高にカワイイ)。

 つーかカナカナや。まさかとは思うけど、この展開になる事を見越してわざとコマを煽って喧嘩吹っ掛けたんじゃないよね……?


「わたしとコマちゃんは勝手に勝負するけど、勝負とは関係なしにマコの事はこのわたしがちゃんと気持ち良くしてあげるから心配しないで頂戴なマコ。マッサージはこのわたしの十八番だからね

「姉さま。どうか存分に疲れを癒されてくださいませ」

「あ、うん……その。よ、よろしく……」


 余計な火種の元になり兼ねないし、私も私で断ればいいだけの話だったのだろうけど……二人の熱意と献身に押されてしまい結局マッサージをお願いする事に。

 今から始まるのはただのマッサージなんだし、いくら何でも可笑しなことにはならないはず……だよね?


「ホントなら愛用してるマッサージ用のオイル使いたいところだけど……ないものは仕方ないし。このローションを遠慮なく使わせて貰うわ」

「姉さま。冷たくないように人肌程度に温めますのでしばしお待ちを」


 ぬちゅぬちゅと自分の手にローションを塗り付けて、冷たくないように体温で温めてくれているコマとカナカナ。

 ……なんていうか、この光景は……


 あ、誤解のないように先に言っておく。最初にお風呂に入る前にコマが『過度なスキンシップ禁止』と設定したルールに則り、マッサージ中に下手にヤラシイ雰囲気にならぬようにと全員一度お風呂から上がって、水着を着ている。ちなみに水着はスクール水着。例によって叔母さんの参考資料の一つである。


『水着でマッサージするなら健全ですよね?』

『わたしは全裸でも構わないんだけどねー』


 ま、まあ確かにコマの言う通り、これなら裸よりもいくらか健全ではあるとは思う。思うんだけど……


「(健全のハズなのに、逆にいかがわしく見えるのはどうしてだろうか……?)」


 タイプの違う美少女が、お風呂でスク水を着て、ローションを手にマッサージ……最初にカナカナも言ってたけど、冷静になって考えるとホントここは一体どこのいかがわしい店なんだとツッコミたい……


「よしっ。温度は良さそうですね。それでは姉さま、お待たせしました。始めさせていただきます」

「それじゃマコ。心ゆくまで堪能しなさいね」

「お、お手柔らかに……」


 なんて余計な事を考えている間にも二人の準備は完了した模様。期待と緊張が入り混じりながらも、マッサージは始まった。

 エアマットにうつ伏せに寝そべられ、最初は肩からマッサージ。コマとカナカナは優しく丁寧に手全体を使ってローションを塗り込むように揉んでくれる。首の側面を滑らせ、付け根まで擦り、ゆっくり上下に繰り返す。


「どうですか姉さま?痛くはありませんか?」

「力加減どうかしら?マコ、教えて頂戴」

「ぁあ……良いよ……もうちょっと、力をかけて貰ってもいいぐらい」

「わかりました!」

「任せてね」


 私の要望に応えつつ二人はグッと力を込めてマッサージをしてくれる。……この二人にマッサージをして貰ったのは今回が初めてではないけれど……相変わらず上手だ。手の力、腕の力だけでなく体重を乗せながらしっかり揉んでくれるから、芯まで解れていく感じが溜まらない。

 慣れない勉強で疲労し、固く岩のように強張っていた筋肉が疲れと一緒にみるみるうちに解かされていく。


「はわ……ぁ、ん……っ」

「……ふふ♪姉さま、とてもかわいいお顔になってますよ」

「だって……すっごく気持ちいいし……」

「随分と凝ってたみたいね。これ、単に勉強の疲れだけじゃないでしょ。余程毎日肩が凝る生活送っているのねマコ」

「……胸、無駄に大きいと……こうもなるんだよ……はぅ……んんッ」

「まったく羨ましい悩みよねぇ」


 二人上手過ぎて気持ち良過ぎて……すぐに眠気が襲いかかってきた。あ、これあかん……この後も勉強会続けるはずだったのに……眠い……きもちいい……

 そうこうしているうちに肩のマッサージは終わり、次は背中に。二人はうつ伏せになった私に馬乗りになるように跨って背をマッサージしてくれる。手のひら全体に圧をかけて背骨に沿う形で時間をかけて丹念に筋肉を揉みしだき……


「ふにゃ……」


 マッサージを開始してほんの数十分で、すでに私の身体の奥からぽかぽかと熱を伴っていた。まだ肩と背中を揉んでもらっただけなのに、全身がとろとろでふにゃふにゃになっちゃっている私。


「あら……マコ姉さま、口元が……」

「ぅあ……ご、ごめん……す、すぐ拭くから……」


 気づけば美少女二人の全身使ったローションマッサージのあまりの心地よさと妖艶さに、よだれがタラリと私の口元から垂れていた。

 だらしなくて恥ずかしい。慌てて口元を拭おうとする私だったんだけど。コマは優しく私を制し、


「姉さま、失礼しますね。―――んちゅ♪」

「あっ……コマ……」

「あ、ああーっ!?」


 唇を近づけて、そのまま子猫のようにペロッと口元を舐めたではないか。


「ちょ、ちょちょちょ……ちょっとぉ!?何やってんのよあんたぁ!?ま、マコの……マコのよだれ舐め取るとか、何考えてんのよぉ!?」

「そ、そうだよコマ…………そ、そう言う事は二人っきりの時に……」

「ズルいわ!?わた、わたしにもさせなさいよ!?マコのよだれ、舐めさせなさいよぉ!?」

「ちょっと待とうかカナカナさんや?」


 カナカナの前でそういう大胆な事するコマもコマだけど。カナカナもカナカナで何とち狂った事言ってんの……?


「おっと失礼。ついいつもの癖で」

「コマちゃんはいつもこんな事やってるわけ!?卑怯よ!ちょっとくらい代わってよ!」

「残念ですが。これは姉さまの妹であり恋人である私だけの特権です。代わることなどとてもとても」

「ちぃ……!ま、マコ!わたしにも!わたしにも頂戴!マコのよだれ、頂戴よぉ!?」

「落ち着け親友。キミ、何を口走っているのか分かっているのかね?」


 仮にもうら若き乙女がよだれ頂戴とかとんでもない事言わないでくれカナカナ……


「ぐ、ぬぬ……!やってくれたわね……いいわ、上等よ。今以上にとことんマコを気持ちよくして、わたしもマコのよだれ舐めさせて貰うんだから……!」

「させません。姉さまに気持ち良くなって頂くは私の仕事。そして姉さまのよだれ処理も私の仕事です。かなえさまの出る幕ではありません」


 カナカナよ、マッサージの趣旨変わってないか?そしてコマよ、そんな仕事聞いたことがないんだけど?

 このコマのよだれ舐めを契機に。二人のマッサージはヒートアップ。より過激なものへと変わっていく事になる。


「どう、ですか姉さまぁ……こう、やってぇ……胸でしごくようにマッサージすると……ゃんっ……気持ち、いいでしょう?」

「は、はわわ……!?こ、コマ……大胆……」


 二の腕をコマが全身を使ってマッサージし始める。自分の腕を絡ませて胸ですべり洗うように上下にうんしょうんしょと揉んでいく。

 マッサージの為に私にもコマにも全身ローションが塗られていて……そんなぬるぬるな状態で恐ろしいくらいに柔らかなコマの胸に挟まれて上下に腕を身体でこすり合わせられると……気を失っちゃいそうなくらい気持ち良くなっていって……


「チッ……恵まれた身体に物言わせるとか卑怯者め…………いいもん、わたしにはそんな卑怯な手を使わなくても、ちゃんとマコを気持ちよく出来るから。……どう?マコ、気持ちいい?」

「ぅ、ん……ッ!か、カナカナ……きもちいい……じょ、上手、だよぉ……」


 カナカナも負けていない。カナカナは私の上半身から離れ脚の方へとマッサージを開始する。ローションをたっぷり追加で塗り込んで、足の付け根からふくらはぎを経てじっくりと揉み始める。

 自他共に認めるカナカナのマッサージテクは以前やって貰った時よりも更に進化している様子。凝っている箇所にカナカナの細長くもしっかりとした指が食い込むと、私は口から甘い吐息が漏れ出すのを抑えられなかった。


「ん、ハァ……姉さま、いかがでしょうか?私の方が……ぁん♪かなえさまよりも、気持ち良く……出来ていますよね?」

「ふぅう……マコ。どうかしら?コマちゃんの前だからって嘘つかなくて良いのよ。正直に言って。わたしの方が……気持ち良いでしょ?」


 懸命にマッサージを繰り返しながら、二人は囁くようにそんな困った究極の二択を投げかけてくる。……どっちがいいのかって?そんなんどっちもいいに決まってるわ……!

 双子ゆえにわかる、共通している。私の一番気持ちがいいところ。どんな力加減で、どのようにすればいいのか……コマはそれを熟知しているから、簡単に私を気持ちよくしてくれる。一方のカナカナも持ち前の洞察力で私が気持ちいと思うところを一発で探り当て、凄腕の超絶テクで私を気持ちよくしてくれる。優柔不断と笑うなら笑え。選べるわけないでしょこんなん……


「……どうやら、まだまだ物足りないみたいですね姉さま。大丈夫です!もーっと気持ち良くして差し上げます!そして、私とかなえさまのどちらが真に姉さまを気持ち良く出来ているのか白黒はっきりさせてあげます!」

「え、いやあの……違……」

「コマちゃんに遠慮して答えがはっきり出せないんでしょう?良いわ。今以上に快楽の虜にして……そして満足させてあげる。マコのその可愛いお口から『カナカナの方が気持ち良かった』って必ず言わせてあげるからねマコ……!」

「ちょ、ま……まって。今以上って―――ひぅっ!?」


 どちらが気持ちいいのかの答えを言わないのは、私が満足していないから―――どうやら二人はそう勘違いしてしまったらしい。

 止めてもらおうと思ってた。だって気持ちが良過ぎるから。今でさえかなりいっぱいいっぱいだったんだ。変な声が口から漏れ出ちゃうのを二人にバレないように歯を食いしばっていたほどだ。すでにバレてるコマはともかく、親友に(変態シスコンはともかく)ヤラシイ娘だって思われるのはちょっと恥ずかしいし……


「姉さま、ねえさま……もっと、もっと気持ち良くなって……いいんです、いいんですよ……素直に感じても」

「マコ……ああ、マコ……綺麗、可愛い……わたしの手で、ちゃんと感じてね……いっぱい気持ちイイを感じてね……」


 そんな私の心中など知らずに。より一層そのマッサージは過激になってゆく。身体中が優しく揉まれる度に気分はどんどん昂って、しまいには腰まで勝手に動きそうになってゆく。


 目に毒だ。二人の美少女の着たスク水がローションに塗れ、黒くテカテカと怪しく輝く様がたまらない。


 口に毒だ。抑えようにも抑えきれない喘ぎそうになってしまう声を我慢するのに一苦労。


 鼻に毒だ。浴室内にはコマたちの爽やかな香りが充満しその匂いに包まれていく。


 耳に毒だ。耳元に懸命に奉仕するコマたちの悩まし気な吐息が聞こえてきて。


 肌に毒だ。二人の柔らかく美しい肢体が絡まる度に甘く全身痺れさせて……


「(も、もぅ…………むーりぃ……げん、かい……)」



 ぷちん








「さて。ではそろそろ本命の……姉さまの自慢のそのお胸をマッサージ致しましょうか」

「ふ、ふふふ……!待っていた、待っていたわこの時を……!マコの胸のマッサージ……!たぎるわ、燃えるわ、悶えるわぁ!」

「やかましいですかなえさま。いきなり発狂して大声なんて出さないでくださいな。……一応言っておきますが。ルールをお忘れなく。いかがわしい事は厳禁ですからね」

「もうすでに十分いかがわしい事してる気はするけど?……まあ、最後の一線は守るつもりだし安心なさいな」

「……どうだか。まあ、いいです。他の場所はともあれ。マコ姉さまのお胸のマッサージに関してだけ言うなら私の圧勝ですからね!これで勝負はつくはずです。さ、姉さま♡仰向けになって―――姉さま?」

「…………」

「「……?マコ(姉さま)、どうし…………ッ!?」」


 分かり切ったことではあった。正直、こうなるんじゃないかとマッサージ勝負が始まる前から薄々分かっていたことであった。

 動かず返事もしない私を不審に思い、私の身体を仰向けにした二人が見たものは……


「…………」

「ね、ねね……姉さま!?どうなさったのですか姉さま!?」

「ま、マコ!?一体どうしたのよ!?しっかりなさいよ!?」


 二人のあまりにテクニカルで過激なマッサージでのぼせたようにクラクラと脳は融け、蕩けた顔で涙とよだれを含め色んな体液を垂れ流し気を失った私の情けない姿。身体は快楽に溺れだらんと弛緩しぴくぴくと潰れたカエルのように震える私の姿だった。

 結局この後気が付いたのは日が変わってから。勉強どころではなくなったことをここに記しておく。

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