十二月の妹も可愛い(中編)
~SIDE:マコ~
……どうしてこうなった。
12月12日。私、立花マコは……未だかつてない程の窮地に陥っていた。
「……え、ええっと……うぅ……」
「ねぇマコ。マコもコーヒー飲まない?ファミレスのドリンクバーだけどこれ結構美味しいわよ」
ここは学校近くのファミリーレストラン。そのボックス席で4人の女の子が向かい合って座っている。
一人は冷や汗ダラダラかきながら、涙目でオロオロする私。その私の隣にはすました顔のままクールにコーヒーを飲む親友のカナカナがいる。
「…………(ギリィ)」
「あー店員さん。パフェおかわりよろ」
…………そして。私の目の前にいるのは、殺意という本来見えないハズのものがドス黒いオーラとして視認できそうなくらい激怒し、私の隣に座っているカナカナを凄い眼光で睨む……我が最愛の妹にして最高の恋人である立花コマ。
ちなみにそんなコマの殺気を真横でもろに受けながら平然と空気を読まずにパフェを注文している天然娘はもう一人の我が親友ヒメっちだ。
……この状況を一言で表すなら、この言葉こそふさわしい。
修 羅 場
…………もう一度言わせて欲しい。どうして、こうなった。
―――この状況に陥るだいたい30分前―――
「いやぁ、一時は間に合わないかもしれないかもって内心ドキドキだったけど……なんとか無事に今日中に完成出来て良かったよ!」
「お疲れマコ。よく頑張ったわね。あとは明日完成品を受け取るだけね」
運命の日の前日。ホントギリギリのところだったけど、とある使命を全う出来た私は達成感に酔っていた。
「カナカナ、今日まで付き合ってくれてホントにありがと。イロイロと助かったよ」
「感謝なんて必要ないわよ別に。わたし何もしてないし。ただ単にマコに付き添ってただけだもの」
改めてカナカナにお礼を言う私。お礼を言われたカナカナは謙遜するけれど……
「いやいや!悩んでた私にアドバイスくれたり放課後ずっと付き合ってくれたじゃないの!カナカナがいなかったらあんな素晴らしい事、私全然思いつかなかったわけだしさ!サンキューカナカナ大明神さま!」
「はいはい。おだてても何も出ないわよ」
実際カナカナに相談して大正解だった。明日は私にとっての特別な日。その日を最高のモノにするアイデアを授けてくれただけでなく、今日まで私にずっと付き合ってくれたカナカナにはどれだけ感謝してもしたりない。
いやぁ、やっぱり持つべきものは頼れる親友だね!
「ねぇカナカナ?カナカナはこの後暇かな?」
「ん?そうねぇ……特に用事はないけど、どうしてそんな事聞くの?」
「おお、それはよかった。じゃあこれから美味しいものでも食べに行かない?今まで付き合ってくれたお礼に何でも好きなもの奢るよ私」
「えっ……い、いいのマコ!?」
「良いよ良いよー。好きなものを好きなだけ頼むが良いさ」
「……やった♪」
そう私が誘うといつものクールな表情から一転。花が咲いたような顔を見せて喜びを表現するカナカナ。うんうん、そんなに喜んで貰えるなんて誘った甲斐があるってもんだ。
「うふふ♪まさかマコから放課後デートに誘ってくれるなんて……今日は本当に良い日ね。偶には敵に塩を送るのも悪くはないわねー」
「って、喜ぶとこってそこなんだカナカナ。……一応ツッコんでおくけれど。これデートじゃないからね……?」
「バカね。何言ってんのよマコ。女二人で放課後に美味しいもの食べに行く。これはもうデートよデート♪ささ、邪魔が入らないうちに早速行くわよマコ!」
興奮気味に私の腕に抱きついて(残念ながら当たる胸は無い)カナカナは駈け出そうとする。あの……カナカナさんや?喜んでくれるのは良いけれど、せめてどこに何を食べに行くくらいは決めてくれんかね?
「つーかこんなところ他の人に、特にコマにでも見られたらとてもじゃないけど言い訳できない状況に陥っちゃうし……カナカナ抱きつくのは止めてお願い」
「大丈夫大丈夫。コマちゃんも今日も用事とか何とかでマコをほったらかししてどっかに行ってるんでしょ?バレなければだいじょーぶ」
「そんな『浮気はバレなきゃ問題ない』的な理論は残念ながらうちの恋人コマには通用しないと思うの私。確かに今日はコマ家に帰るのは遅れるって言ってたけど……コマの友達にでも見られてそれを告げ口でもされたらアウトでしょー?ほーら、良いから離れてカナカナ。あとさり気なく胸とお尻さわさわしないで。お触りはNGよ。これ以上の描写は《Rが18ばーじょん》行きよ」
離れるどころかますます擦り寄ってくる我が親友。コマと恋人同士になった今でもカナカナは私の事が好きだって言ってくれる。こんなダメダメな私に好意を持ってくれるのはありがたいし、悪い気はしないんだけど……
こんなところをうっかり知り合いに見られでもしたらコマに浮気を疑われかねないし、出来れば離れて貰えないだろうか……
『本当に、今日までありがとうございましたヒメさま。これで、明日という日を最高のモノにすることが出来ます。ヒメさまは私にとっての救世主です。ありがとう、ありがとうございます……!近いうちに絶対お礼しますからね!』
『……お礼いらない。コマ大げさ。別に大したことしてないよ私』
『大したことですよ。ヒメさまのお陰で自信が付きました。これで私も……マコ姉さまに―――』
なんてやり取りをしながらカナカナを引き剥がそうとしていた私。割と本気でセクハラ一歩手前な愛情表現かましてくる親友を、こちらも本気で引き剥がそうとしていた私。
それこそ前なんぞ一切見らずに必死こいて引き剥がそうとしていた。
ドンッ!
「っきゃっ!?」
「あ、マコ……危な―――」
「危ない!」
前方不注意事故の元。曲がり角を曲がったその瞬間、現れた道行く誰かとごっつんこ。勢いよく仰け反ってしまう。
このままではカナカナまで巻き込んで倒れてしまう。それはマズいと考え即カナカナの腕を解き、そしてそのまま地面へダイブする私。
そんな倒れる寸前の私を、ぶつかったその人が素早く抱き寄せてくれる。
「大丈夫ですか!?怪我は!?も、申し訳ございませ―――」
「い、いいえ……私の方こそ前見てなくてごめんなさい。た、助けてくれてありが―――」
ぶつかってしまった事と抱きしめられた気恥しさから、慌ててその人の腕の中から飛び出して謝ろうとする私。そして顔を上げ見上げた先にあったのは……
「……こ、ま……?」
「……まこ、ねえさま……?」
「……おー。マコと……あと叶井さんだー」
「あらコマちゃん。それに……麻生さんじゃない。奇遇ねこんなところで会うなんて」
見知った人どころの話じゃなかった。親の顔より見た、この世で一番大好きな子。妹で恋人の立花コマがそこにいた。
「え、あれ……?あの、姉さま……?今日は、学校で補習を受けてくるから遅くなるって……」
「あ、れ?コマも……運動部の助っ人として今日は帰るのが遅れるって……」
この時間に、こんなところに居るハズの無い恋人の出現に戸惑う私。それはコマも一緒のようで、多分今私のしている表情と瓜二つな戸惑いの表情を一瞬見せる。
……が。それは本当に一瞬で。次の瞬間その戸惑いの表情は消え失せて、代わりに別の表情がひょっこりコマから顔を出す。
「…………叶井さま?あの、何故……何故貴女が姉さまと共に居るのですか?私の気のせいで無かったのであれば……私と姉さまがぶつかる直前、お二人は……仲良くイチャイチャ腕なんて組んでいませんでしたか?私の居ない隙に、叶井さまは姉さまと何をして……」
「ん?何をしているって、見てわからないコマちゃん?…………放課後デートだけど?」
「ちょ、バ……か、カナカナぁ!?」
「…………あ゛?」
こわーいコマの顔が出す。
―――そして今に至る―――
『…………ここではゆっくり話も出来ません。とりあえず……あちらで腰を据えてお話しましょうか』
と、コマの冷ややかボイスの提案にガタガタと震え頷いて。こんな流れでやってきましたファミリーレストラン。4人掛けのテーブルに俯いたまま審判の時を待つ私。
いや、一応やましい事は一切していないし、堂々としていれば良いはずなんだけどね?でもなんか……コマの為とは言え、嘘ついてカナカナと二人で行動していた後ろめたさもあるせいで……まともにコマの顔が見られない……
「あら。もう無くなっちゃった。ごめーんマコ。ちょっとコーヒーのおかわりを持って来るわね。何か飲みたいものがあるなら一緒に持って来てあげようか?」
「(ブンブンブン)ッ!」
「いらない?そっか。なら少し席を外すわ。すぐ戻って来るから待っててね」
そんな私とは対照的に。私の親友にしてある意味この状況を作り出した張本人のカナカナさんはというと、空気を読まずにコーヒーをおかわりする為にドリンクバーへと向かう。
凄いなカナカナ……コマにあんな目で睨まれて一切動じずに出来るなんて……
「…………姉さま」
「ひゃ、ひゃい!!?ななな、なんでしょうかコマ!?」
「申し訳ございません。私もちょっと飲み物のおかわりに行ってきますね」
「あ、ああそう……い、行ってらっしゃいコマ」
カナカナに感心している私に、目の前のコマがそう言ってカナカナを追うように席を立つ。……内心ちょっとホッとする。よ、良かった……この空気は耐えられそうになかったし……一旦間を置いて貰えるのはとても助か
「それから……叶井さまと、お話したい事があります故……戻るのが少しばかり遅くなるかもしれませんがお気になさらずに。姉さまは、どうかヒメさまとゆっくりお過ごしくださいませ♡」
「…………ハヤメニ……モドッテキテネ?」
…………前言撤回。助からない気がしてきた。だ、大丈夫かこれ……!?コマとカナカナを二人っきりにしてホントに大丈夫か!?流血沙汰とか別の意味でRが18ばーじょん行きだぞ!?
不安しか感じない中、コマは私に手を振り笑顔で―――目が全く笑っていない笑顔でカナカナの後を追う。テーブルには私とヒメっちだけが残る事になった。
「……はぁ。う、うぅ……なんでどうしてこうなった……」
「……おつおつマコ。まさに絵に描いたような修羅場だったね。ドラマとかでなら見た事あるけど、リアルで見ると凄いねー」
パフェ食べる手を止めず、ヒメっちは他人事のように私に話しかけてくる。おのれ……まるで他人事のように言いやがってからに……
「……と言うか。あのさヒメっち」
「……?何?」
「君さ、何か私に言う事はないかね?」
「……パフェおいしい」
「違う、そういう事じゃない」
誰がパフェの感想言えって言った?この天然娘め……
「そうじゃなくて!な、なんでコマとヒメっちが二人一緒にいるのさ!?今日のコマは運動部の助っ人に行ってるはずだし……ヒメっちはヒメっちで、確かヒメっちのお母さんの夕ご飯作るために今日は早く帰るだのどうだの学校で言ってたよね!?二人で何をしてたのさ!?」
「……そういうマコも、今日は補習があるからコマと一緒に帰れないって言ってなかった?叶井さんとナニしてたの?」
「うぐぅ……」
ヒメっちの指摘に口を噤みかける私。私もコマに嘘ついてしまってるから、ヒメっちに大きく出られないじゃないか……
「一応言っておくけど、浮気とかそういうアレな事はしてないから安心してマコ。私の攻略対象は、母さんただ一人だし」
「あ、それに関しては心配してないよヒメっち。今更あのコマが私以外の人に靡くなんてありえないし」
「……随分な自信だね」
あっけらかんとヒメっちに言う私。コマが浮気?ハハハないないないあり得ない。そんな心配は一ミクロンもしてないからご安心を。
「……ん?じゃあマコは何をそんなに取り乱してるの?私とコマが一緒に行動して、マコが困る事なんてないでしょ?」
「……いや、浮気の心配はしてないけど……もしかしたら……」
「もしかしたら?」
「もしかしたら……ヒメっちがコマの母性に魅かれて……ついうっかり『母さんとの予行演習に付き合って』ってコマに迫る可能性があるかもしれないって思ったら居ても立っても居られな―――」
「マコ、ぶっ飛ばして良い?グーで殴って良い?それこそあり得ないから。私が母さん以外の人に母性を感じるなんてあり得ないから」
「…………すんませんでした。二度とあんなアホな事は言いません……」←土下座
珍しく本気でキレたの口調のヒメっちさん。さっきのコマ並みの殺気を私に向けてくる。
「だ、だったらどうして二人は私に嘘を吐いてまで私に内緒で行動してたの……?何を二人はしていたの……?」
気を取り直して再度質問する私。その質問に対してヒメっちは少し難しそうな顔で腕を組む。
「……んー。それを私が言うとサプライズの意味がなくなっちゃうからなー……」
「サプライズ?何の話……?」
「……ならヒントだけあげる。マコ、今日は何月何日だっけ?」
「へ?……じゅ、12月12日だけど……それが何?」
唐突に日付を問いかけられて、わけもわからないままに答える私。この問いかけに何の意味が……?
「うん。で?明日は何月何日?」
「……ひょっとしてバカにしてる?12月13日でしょ?」
「うん。そだね。じゃあ……明日、12月13日は何の日かわかる?」
「コマの誕生日!」
「……うん。ほぼそれが答えになると思う」
「え?なにそれ?どういう事?」
そうだ。明日、12月13日は……立花コマの、我が妹の誕生日。私にとっての最高の日である。けどコマの誕生日と、コマとヒメっちが密会していた事と何の因果関係があるんだろうか……?
「…………わかんないの?」
「うん、わからん」
「……マコとコマって双子だよね?そんでもって、明日はコマの誕生日だよね?」
「うん?そりゃそーよ。何を今更」
「……明日はさ。コマの誕生日以外にも、大事なイベントあるよね?何か忘れてない?」
「コマの誕生日以上に大事なイベントとか無いし、それ以外はどうでも良いよ。それよか早くコマが何をしてたのか教えてよヒメっち」
「…………凄いねマコ。ここまで言ってあげて察せないとは予想外。こんなにサプライズのし甲斐がある人は初めて見たよ私」
「???」
ダメだ……ヒメっちが何を言っているのかさっぱりだ。頭の良い人はどうしてこう、回りくどい言い回しをしてくるんだ。もっと分かり易く言ってくれないだろうか。
「……心配しなくても明日になればわかる。それよりもマコもパフェ食べない?おいしーよ?」
「ぱ、パフェなんかよりコマと何してたのか教えてよヒメっちぃ!?」
やれやれといった表情で関心を再びパフェの方に向けてしまうヒメっち。その後も結局何を二人でやっていたのか、ヒメっちは何も教えてくれなかった……
◇ ◇ ◇
~SIDE:コマ~
「…………叶井さま」
「あらコマちゃん。コマちゃんも飲み物おかわりに来たの?コーヒーでも飲むかしら?」
「そんな事どうでも良いです。単刀直入に聞きます。姉さまと今まで何をなさっていたのですか」
ドリンクバーでコーヒーを注いでいた叶井さまに開口一番そう尋ねる私。……事と次第によっては……この人をこの場で排除する事も頭の片隅に入れておかねば……!
「何って……言わなかったかしら?デートよデート。浮気デート♡」
「は?貴女バカですか叶井さま。あの優しくて一途な姉さまが……私に隠れて浮気なんてするハズ絶対ないじゃないですか」
姉さまの事は信じてます。浮気などあり得ません。姉さまが私以外の誰かに魅かれる事など世界が終ろうが絶対にあり得ないと断言できます。
「どうせアレでしょう?また叶井さまが姉さまに迫ったクチでしょう?姉さまに嘘を吐かせてまで放課後に二人っきりになるなんて……やはり貴女は油断ならない人ですね……!白状しなさい、一体どんないやらしい事を姉さまにやったのですか……!?」
ですが……姉さまが浮気をする可能性はゼロですが、叶井さまに押し切られてしまって仕方なく―――という可能性が全くゼロというわけではありません。
叶井さまの発言にイラっとしつつも私は叶井さまを問い詰めます。すると叶井さまは心外だと言いたげに肩をすくめてこう返します。
「言いがかりね。嘘吐いてコマちゃんに黙って行動していたのはマコ自身の意志よ。一応誤解のないように先に言っておくけど、今回の件に関しては―――マコから頼まれて付き合ってあげたのよ私。『どうしてもカナカナに頼みたい事がある』って言われてね」
「…………なんですって?」
「嘘じゃないわ。本当よ。何ならあとでマコに聞いてみればいいじゃない」
自信満々に叶井さまはそう告げます。……この口振り、この表情。確かに嘘ではないように感じます。でも、だったら……何故?何故マコ姉さまは私に嘘なんかついて……?
まさか……本当に、浮気?とうとう私、マコ姉さまに見限られた……?こ、恋人になったからって調子に乗ってしまって……姉さまに私の本性を見せ過ぎた……?知らず知らずのうちに私の言動が引かれてた……?やはりもう少し自重して……姉さまに清楚な自分を見せておくべきだった……?失敗した……?私、姉さまから捨てられる……?そんな……そんなのって……
「……心配?マコが私と何をしていたのか心配かしらコマちゃん」
「…………それは、当然でしょう」
「まあ、そうよね。……ごめんごめん、さっきは冗談で浮気デートなんて言ったけど、コマちゃんの言う通り浮気でも何でもないから安心して良いわよ」
「…………ぇ?」
なんて頭の中でぐるぐると黒い感情に襲われてパニックになりかける寸前。苦笑いをした叶井さまがそう告げてきました。……冗談?浮気でも、何でもない……?
「で、でしたら一体……一体叶井さまは姉さまと何をしていたのですか……?」
「んー……それを私から言うのはちょっと……ねぇ?敵に塩どころか砂糖菓子をプレゼントするようなもんだし……なんかムカつくし」
難しそうな表情でボソッとそう呟く叶井さま。何の話をしているのでしょうか……?
「……でもまあ、言わなきゃコマちゃんも納得しないか。なら特別サービス。ヒントをあげましょう。コマちゃん。明日は12月13日よね?」
「は、はい……そうですね」
「じゃあ問題。12月13日は……一体何の日でしょうか?」
「マコ姉さまの誕生日です」
いきなりの問題に意味が分からないままに答えてみる私。そうです。明日は偉大なるマコ姉さまのお誕生日。
個人的に国を挙げて……いいえ、世界中でお祝いしても良い日だと思うのですが……姉さまの誕生日と、今回の件。一体何の因果関係があるのでしょうか?
「うん、そうね。マコの誕生日よね。……で?他には何かないかしら?」
「他、ですか?ええっと確か……正月事始めとか、ビタミンの日とか……美容室の日とか。ああ後は……双子の日、でしたかね」
「双子の日……?え?そうなの?それはまた……マコが産まれた日が双子の日なんて運命的よね。……まあ、それはともかくこれでマコが何をやってたのかわかったわよね?」
「……え?いいえ、わかりませんけど……?」
「……ん?あれ?」
わからないと素直に答えた私に。叶井さまは『こいつは何を言っているんだ』と言いたげにポカンとした顔を見せてきます。
「え?嘘よね?わからないなんて嘘よねコマちゃん……?」
「……さっぱりですが?」
「……マコとコマちゃんって双子よね?で、マコは明日が誕生日。おあつらえ向きに明日は双子の日。そうよね?」
「はい」
「……ならわかるよね?もう一つマコにとっても……コマちゃんにとっても大事な記念日になるようなことが明日ある……わよね?」
「???」
そんな事言われましても。姉さまの誕生日以外に大事な記念日なんて想像できませんよ私……?
困惑し、答えが出せないでいる私を見て。叶井さまはため息一つ吐いてからこう呟きました。
「……なるほど、こりゃ確かに双子だわあんたら」
「は?」
「頭良いはずなのに……コマちゃんも結構アレな子よね。相手の事に夢中過ぎて自分の事を疎かにする。ホントそっくりよ」
「ちょ、ちょっと叶井さま!?まだ話は終わっていませんよ……!?」
そんな事を呟くと、『付き合っていられないわ』と大きくため息を吐いて注いだコーヒーを片手にさっさと姉さまとヒメさまの居るテーブルへ戻って行った叶井さま。だ、だから一体何の話なのですか……!?
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