第35話 ダメ姉は、お風呂に入る
「―――思えば、姉さまとお風呂なんていつ以来でしょうかね?昔は毎日のように姉さまと入っていましたよね。あの頃がとても懐かしいです」
「そそそ、そう……だね……」
一体全体どういうわけなのか。最愛の妹であるコマと一緒にお風呂に入ることになった私、立花マコ。
「…………あの、コマ」
「はい?どうなさいましたか?」
「い、いやその……ば、バスタオル……着けない?」
「おや?姉さまはバスタオルを着けたままお風呂に入るのですか?」
……ちなみに、私もコマも二人して全裸。そう全裸。コマに全てを脱がされて、一糸纏わぬ状態だ。おまけに筋肉痛でまともに動けない私が溺れないようにと、コマに後ろから抱っこされる形でお風呂に入っている。…………裸で、抱っこされている。
ま、まあ無論お風呂に入っているわけだし、そもそも筋肉痛の看病のためのお風呂だし……裸でいることや抱っこされていること自体は何一つおかしいことではない。ないのだけれども……せ、せめてバスタオルは着けてもらえないだろうかコマさんや?
「い、いや。そりゃあ確かに一人の時なら着けないよ?タオルを湯船に入れるのはマナー違反でもあるし……で、でも……ほら。やっぱり人に……裸を見せるのは……いくら家族と言えども…恥ずかしいというか。……特に私の身体は、人様にはとても見せられない駄肉と言うか……」
「姉さまの身体に恥ずかしいところなど一つたりともありませんよ。とても……そう、とても綺麗です。胸も……お尻も。全てが本当に立派で……素敵で…………すてきで……」
「へ……?」
「……こほん。そ、それに女の子同士、それも双子の姉妹同士ですよ?昔も一緒に入っていましたし、今更恥ずかしがる必要なんてありますか?」
「そ……れは、そうだけど……!」
「では何も問題ありませんね」
穢れなど一切知らないようにコマはそんなことを言う。……いいや、私の本性=変態シスコンという事をまだ知らないからそんなことが言えるのだろうけど……問題大ありなんだよコマさんや。だって私の精神衛生上非常に良くないんだもの。
そりゃ昔はこんなシスコン変態な私にだって純粋な頃はあったさ。コマの事をそう言う目では見ていなかったし、コマとお風呂とか入っても別に変な気持ちにはならなかったさ。
……だけど今は違う。中学生になり思春期を迎え、煩悩全開な私はコマの身体にも欲情している。コマと……その、許されるなら一線だって超えたいとすら思っている。現に今この時だってそうだし。
「(目を開けるな……目を開けちゃダメだ私。開けたら最後だぞ私……ィ!)」
コマが脱衣所で服を脱ぎ始めてから今に至るまでの間、ずっと目を閉じている私。何故そんなことしているかって?だってこうしていなければ、コマの身が危険だもの。
ただでさえお互いが裸という刺激的すぎるこの状況下で……更に先ほどから私の背中でコマのマシュマロみたいな…………なま……生ちちが、ムニュっと潰れて……そして小さな二つの蕾が……愛らしく自己主張しているのがわかる。
……今更ながら、さっき脱衣所で目いっぱい鼻血を出し尽くしておいて本当に良かった。打ち止めしているからこれでお風呂を血の池地獄にせずに済んだよ……
コマの生のもちもちの柔肌を自身の肌で感じているという、このシチュエーションだけでも死ぬほど幸せで死ぬほど危険な状態だ。これでもしも私のこの目でコマの芸術的な裸体を見てしまった日には……
「(…………ヤって……しまうだろうな……私)」
その証拠にそのコマの柔肌と生ちちに刺激されている私の触覚が全力で警報を鳴らしている。『目だけは開けるな』と。もしこのまま振り返って目を開き、コマの姿を見てしまえば最後……ぷつんと私の中の何かが切れてしまうだろう。
そうなれば自分でも何をしでかすかわかったもんじゃない。恐らくその時点で脳内物質がドバドバと分泌され筋肉痛の痛みなどすっかり忘れてコマを力ずく押し倒し、ただただ己の欲望のまま無理やりコマの全てを奪ってしまう事だろう。
「(ダメだ、ホントにこのままじゃ……ダメだ……!)」
そうなる前に、ここは少なくとも見えている肌の面積を減らすべきだ。そうすれば私の肌とコマの肌が直接接触する面積も減ることになるし、それに仮に欲望に負けて目を開けたとしても最悪の事態は避けられる……ハズ。
そう考えて警告を込めて、コマにバスタオル着用を強調してみる私。
「で、でもさ!バスタオル着けとかないと……身体洗う時とかに……わ、私がコマの……は、裸を……見ちゃうかも……しれないよ?た、例えば……胸とか…………し、下の方とか……。い、いくらコマでもそういうところ見られちゃうのは……は、恥ずかしい……よね?ね?」
「あらあら。何を言っているのですか姉さま。……私、姉さまになら全部見られても……構いませんよ」
「……え?」
「確かに姉さまに比べたら見劣りしてしまう身体ですが。姉さまさえ良ければいくらでも……お好きにどうぞ」
「…………」
くすっと笑いつつ私の耳元で蠱惑的に囁くコマ。…………あ、やばい。今一瞬頭の中ショートした。色んな意味でイキかけた。全身筋肉痛で動けない状態じゃなかったら、多分コマをこの勢いでヤってた。
何なの?もしかしてうちの妹って小悪魔か何かなの?
「さて。そんなことより早くマッサージしませんとね。大分身体は温まりましたしまずは身体を洗いましょうか。姉さま、抱えますから動いちゃダメですよ。大丈夫です、絶対離したりはしませんから安心して私に身体を委ねてください」
「へ……?あ、うん……おねがいします……」
「少し失礼しますね。よいしょ……っと」
「ご、ごめんねコマ。私、重いでしょう……?」
「いいえ、そんなことありませんよ。とっても軽いです」
コマの大胆な発言に脳内がパンクしかけている私をコマが楽々抱きかかえてくれる。うぅ……恥ずかしい。何かこれじゃあお風呂介護されるおばーちゃんみたいじゃないか。
……いや、まあそんな感じで合っているけども。裸を見られたり抱きかかえられることになるなら……ダイエットしておきたかった……
「では先に私が身体を洗いますので、申し訳ありませんが姉さまはそちらのバスチェアに座って待っていてください」
「わ、わかった……」
「すぐ終わらせますからね」
そのままそっと私をバスチェアに座らせて、コマは身体を洗い始める。
最初に湯桶でバシャっとかけ湯。次にボディソープが入っているボトルを手に取ってシュコシュコとニ,三度プッシュ。そうすることでボトルのノズルからコマの手にぬるぬるとした液体が飛び出てくることだろう。
出てきた液体を泡立ててから、バススポンジを使って肩、腕、胸や腰の順に上から下へとゴシゴシと洗い流してゆく。綺麗好きな性格だからだろうか、身体を洗うのは心地良いみたいで時折コマの口から微かに恍惚とした甘い吐息が漏れている。
……凄い。例え目を閉じていても耳をすませばコマが今何をやっているのか容易にイメージできてしまう。なまじすぐ傍でそのコマが身体を洗っている音を聞いているせいか……寧ろ目を閉じていることが却って私によからぬ妄想を増長させてしまう。興奮で鼻がムズムズとし始めて出尽くしたはずの鼻血が再び流れ出そうになり、更に胸とお腹の下あたりがきゅん……と―――
「(―――って、なに妹の身体を洗う音を聞いて欲情してるんだ私ィ!?)」
アホか、アホなのか私は!?今はそんなことしている場合じゃないでしょうが!?
一旦深呼吸をして気持ちを切り替え、コマが身体を洗っている間に考えを急いでまとめることに。
コマのあの様子だと、バスタオルを着けてもらうことはもうほとんど無理と思って良い。ならば、私が今からすべきことは……
① 何があっても絶対に目を開かない。
② 無駄に
③ お風呂から上がるまでは鋼の理性を保つ。
この三つを忠実に守る事。これさえ守れば私というケダモノから最愛のコマを守ることが出来て、尚且つ私の本性がコマにバレる心配もないだろう。
最低でも目を開きさえしなければ、コマを私が襲うことはないハズだ。
「(……いっそのこと、自分で目つぶし出来ればいいんだけど)」
筋肉痛で動けないこの身体が恨めしい。少しでもまともに動ければ躊躇いなく目つぶしをしていたと言うのに。
まあ、こうなった以上は私の中のほんの少しだけある理性を総動員させて、視界と欲望を封印しこの場を切り抜けるだけだ。……頑張れ私の理性。くたばれ私の煩悩。
「お待たせしました姉さま」
「へっ!?あ、もう身体洗ったのコマ!?」
「はい。次は姉さまの番ですね。では不肖ながら、私が姉さまのお身体を洗わせていただきます」
そうこう考えを巡らせているうちに、あっという間にコマは身体を洗い終えた模様。バスチェアに腰かけている私の後ろに回り込んだ気配がする。
……さあ、ここからは相当気合を入れていかねばならない。今から始まるのはコマに身体を洗ってもらえるなんて最高のシチュエーションの中で、決して目を開けず、興奮せず、そして最後まで理性を保つという……正直私にとってはほぼ無理ゲーな我慢大会。
だがこれくらいの状況を乗り越えられないで、この先どうしてコマの立派な姉となれようか。これはきっと神が私に与えた試練なのだ。
そうだ、これは試練なんだ。コマの自慢できる姉になるための試練だ。大丈夫、悟りだ。悟りの境地に達すれば、動揺なんてしないし己の煩悩も抑えられるハズ。大きく息を吐き、気を引き締めていざ勝負開始だ……!
「よしっ!じゃ、じゃあコマ!よろしくお願いするねっ!」
「はい姉さま♪では……失礼しますね」
「ぴ……ぴゃああああああああああああああああああああ!?」
……おかしい、早速出鼻を挫かれた。開始早々奇声を上げて動揺してしまう私。悟り、悟りとは何だったのだろう。弱い……色んな意味で弱すぎるぞ。
け、けどこれは仕方ないと思うの……!だ、だって……だってぇ……!?
「えっ!?す、すみません姉さま。もしかして痛かったですか…?」
「い、痛くはない!痛くはないんだけど……こ、こここ、コマぁ!?な、何で……なんで素手!?ボディスポンジじゃなくて……何故に素手で洗ってんのぉ!?」
そう、コマはボディソープをたっぷりと自分の手に塗りつけて、私の首と肩をつつーっと撫でるように触れたのである。コマの手に撫でられた瞬間、首と肩に電流が走ったような感覚に襲われて変な声を思い切り出してしまった私。
てっきりボディスポンジを使ってくれると思い込んでいたせいで完全に意表を突かれたじゃないか……若干抗議交じりに、コマに何故素手で私を洗っているのか問いつめてみると、
「ああ、そういうことですか。いえ……姉さま筋肉痛ですし、下手にスポンジを使うと痛いだろうなと思いまして。ですからスポンジではなく手でやろうかと。手で洗った方が刺激も少なくて済むでしょう?」
「そ、そういうこと……ね……」
そうあっけらかんと答えるコマ。な、なるほど。私の筋肉痛のことを気遣ってくれたのか。やっぱり優しいなぁコマは。お姉ちゃん、コマがこんなに優しい子に育ってくれて感激よ。
…………でもね、寧ろ手で洗われる方が別の意味で刺激が強すぎてお姉ちゃんすっごいヤバいんだけど!?
「素手の方が上手く力加減出来ますし。それに身体を洗うついでに筋肉痛のマッサージも出来ますので。と言うわけで姉さま。ご理解いただけたのであれば、そろそろ再開しても宜しいでしょうか?」
「う……うん……大丈夫……わかった。ごめん、中断させちゃって……」
「いえいえ、お気になさらずに。では始めますからね。最初は首から肩を洗いながらマッサージします」
「りょ、了解。……ふっ、ん……っ」
私の了承を得てから、再びコマは手を私の身体に手を這わせる。
今度はなんとか奇声を上げずに済んだけれど、とても敏感な首元や肩に愛する妹の手が触れるごとにぴくりと身体が震えてしまう。
「もし痛かったら必ず言ってくださいね」
「う、ん……っ!わかっ……た……」
ボディソープを塗った手で円を描く要領で撫でるように洗い終えると、今度は指先で軽く押し首や肩をほぐしてくれているコマ。
強すぎず、けれどしっかりと。絶妙な力加減で身体をほぐす。ほぐされる度に身体に溜まっていた疲労とか痛みが拡散していく感じがして本当に気持ちが良い。
「……あ、の……コマ。も、もうちょっと……強く、マッサー……ジを……ぅんっ……して…………いいんだ、よ……?」
「ダメですよ。確かに私もお風呂でマッサージをするのは筋肉痛に効果的とは言いましたが…あまり強く揉んでしまうと今度は筋肉を傷めかねませんし、最悪悪化してしまう恐れもありますからね」
「そっ、そうなん……だ……ぁ、ん……」
……というか、気持ち良すぎて逆に辛い。コマのマッサージが上手すぎて、揉んでもらうごとにもどかしいと言うか、身体中が切ない感覚に襲われてしまう。無駄に興奮しないようにと心に誓っているハズなのに、この時点でかなり危うい精神状態になりつつある私。コマの身の安全を考えるなら、むしろ強く揉まれて痛みを感じる方がまだ良い気がする。
このままこんなことを続けられて、自分の欲望に耐えられるのか私?始まったばかりなのに早くも自信が無くなってしまう。
「ひゃ……んん……っ」
「……あら?ひょっとして姉さま、くすぐったいのですか?」
「っん……い、いや……だい、じょうぶ……」
「無理しなくて良いんですよ、くすぐったいなら声を我慢せず、どんどん声出しちゃってください。……どうか私に、姉さまの声を……聞かせてください。それに身体も随分と力んでいますね?もっと力を抜いて楽にして良いのですよ姉さま」
「…んっ……くぅ……!」
いや、そんなこと言われても!?と言いたくなるのを堪えてから、声が出ないように我慢する。
ダメだ……今ここで気を抜けば、絶対に…………や、やらしい変な声を出してしまい、きっとコマにドン引きされてしまうだろう。頑張れ私、耐えろ私……!
「姉さま、次は腕を貸してください。ここは特に筋肉痛が酷い場所の一つでしょうから、念入りにやらせてもらいますね」
「あ、ああうん……よ、よろしく―――んぁっ……」
……声と煩悩を必死で押さえながら一つ思う。今更だけど何だろうこの状況?
一応『双子の仲良し姉妹がお風呂で洗いっこ』という字面だけ読めば微笑ましささえ感じる、誰がどう考えてもセーフな状況のハズ。だと言うのに……
「(……何故かこの場がさっきから限りなくアウトっぽい雰囲気になっている気がするのは、私が煩悩にまみれているせいなのか……?)」
何と言うか。例えるなら……ソッチ系の……いかがわしいお店のような雰囲気になっているのは何故なんだろう……?
目をつぶっているせいで余計に触覚が鋭くなっているのだろう。ボディソープを纏ったぬるぬるとした手でコマにくすぐるように身体をこすられると……まるで全身をコマの舌で舐められているような錯覚まで覚えてしまう。
……おまけに一生懸命私の身体を洗い、丹念にマッサージをしてくれているお陰でコマはまだ気づいていないようだけど……
「よいしょ……よいしょ……っと」
「(むね、が……っ!コマの……お胸が……!)」
時折コマの生のお胸が私の背中をこすってくれるという、過激で素敵な最上級のオプションサービスまで無自覚に提供してもらっているのである。
さて、ここでちょっと今回の私へのミッションを復習してみようか。①目を開けない②興奮しない③鋼の理性を保つ―――この三つだったね。
「(……やっぱこれ、無理ゲーだわ……)」
もー無理!これ以上はホント無理!!こんないかがわしいムードの中で、コマに対して興奮するなとか押し倒すなとか無理だって!!!
神よ、私にこれを耐えろと言うのですか……ッ!!?
私の中の悪魔がそっと囁く。『ここまで頑張ったんだし、ちょっとくらい目を開けても良いんじゃない?ちょっと抱くくらい良いんじゃない?』と。
正直その誘惑に素直に負けたい……負けを認めて目を開き、筋肉痛の痛みなど苦にせず振り返ってその至高の裸体を拝見し、コマを思い切り抱きしめて、そしてコマと―――
「(…………ダメだ、しっかりしろ私……)」
…………まぶたを半分くらい開けそうになるすんでのところで、思い切り下唇を噛みしめて己の邪念を振り払う私。
……ちょっと噛みしめる時、思い切りが良すぎて口の中から血の味がするけれど……これで良い。
病み上がりだというのに、誰のためにコマがこんなことをしていると思っているんだ。こんなにもコマは一生懸命私の看病をしてくれているというのに、こんなこと考えるなんて……恥ずかしくないのか私。
立派な姉になると宣言したのは噓偽りなのか?コマに誇れる姉になりたいなら、これくらい我慢できなくてどうするんだバカ……!
「姉さま、今度は背中と腰回りをやらせてください」
「……ぅ、ん……おねがい……する……ね……」
気を引き締めなおしてコマの次の行動に身構える私。コマは触れるか触れないかギリギリの絶妙なタッチで、掠めるように背中や腰に手を這わしていく。背中は勿論のこと、特に刺激に弱い脇腹あたりを触れられると背筋がゾクゾクする。
それでも興奮していることを悟られないように何とか漏れようとする声を抑え、そして自身が暴走しないように必死で堪える私。
そんな私の決死の我慢など知るはずもないコマは、親指で背骨を上から下へと辿りつつ他の両指で脇腹と腰を撫でるように洗い、そして筋肉痛を和らげるため優しく揉んでくれる。
「どうですか姉さま?気持ちいいですか?」
「ぁ……ん、気持ち……いい……よぉ……はぁ…」
「それは良かったです。ではもう少しだけ続けますね」
コマの的確なマッサージが効いてきたのか血行がかなり良くなっているみたいで、肩や腕を触れられていた時以上に体中に熱が灯る。じんわりとだけど筋肉痛が引いていく感じがして心地良い。
その反面、別の意味でも体中に熱が灯る。背中越しに洗ってもらって更にはマッサージまでしてもらっているお陰で、意識しないようにしているというのにコマの存在を否が応でも間近で感じてしまう。
自然と力が入っているのか囁くような熱い吐息が私の耳元にかかり、ボディソープとコマ独自の甘い匂いが鼻を刺激する。そして依然無自覚に押し付けているコマの立派なお胸が、コマが動くたびに私の背中で大暴れして……もうたまらん。
「(が、がんばれ私……あと少しだ。あと少しで……身体を洗うのも、マッサージも……終了の……ハズ……!)」
いくら何でも太ももやふくらはぎ、それから……む、胸とか…………し、下のデリケートなところのケアまではコマもしないだろう。つまりここさえ耐えきればこの我慢大会も終わりを迎える。
ここがまさに正念場。より一層まぶたを強く閉じ、変な声が漏れないよう歯を食いしばる。同時によからぬことを考えないように心を無にすべく全力で瞑想する私。
一方コマも背中を洗い終えて、ラストスパートをかけてくる。彼女の細長い指で私のお尻の柔らかいところを優しく撫で、そしてこね回し―――
「お疲れ様でした姉さま。背中と腰、終わりましたよ」
「ハァ……ハァ…………あ、ありがと……コマ……」
最後に軽く指を押し込んでから背中と腰回りのマッサージ終了。……たえた、耐えたぞ!耐えきった……!エロイぞ私―――じゃなかった、偉いぞ私っ!
興奮で頭が沸騰しかけ、息も絶え絶えにながらもなんとかこの試練を耐えきった。コングラチュレーション私!こんな無理ゲーを耐えきったわけだし、これでまた一歩私が目指す立派な姉像に近づいたと言ってもいいのではないだろうか……!?
自分で自分を褒め称えつつ、ふぅ……と安堵の息を吐く私。後は体中の泡を洗い流せば無事にコマを傷つけずに済むね。
「そ、それじゃあコマ、あとは泡を洗い流すだけで終わりだよね。お疲れ様ー」
「……はい?終わり……?」
「ありがとう、とっても身体が軽くなった気がするよ。ごめんね、病み上がりなのにこんなことさせちゃって。疲れたでしょ?」
「……?あの、姉さま?それは……どういう意味でしょうか?」
コマにねぎらいの言葉をかけてあげると、私のそんな言葉に何故かきょとんとした表情を見せるコマ。……あれ?何だろうかこの反応は?
「どういう意味って……ええっと、だから身体を洗ってくた上にマッサージまでしてくれて助かったよって意味で……」
「いえ、ですから―――『あとは泡を洗い流すだけで終わり』とはどういう意味でしょうか?」
「え?い、いやだって……もう身体洗うのもマッサージも終了……だよ、ね?」
「いいえ?まだ半分しか終わっていませんけど?」
「……うん?」
半分……?それってまさか……
「まだ一番筋肉痛が酷いであろう太ももやふくらはぎのマッサージが出来ていませんし……それに、身体だってまだ一番大事な姉さまの胸や……その、下の方も……洗い終えていませんでしょう?ですから、ここからが本番ですよ」
「…………」
…………ふむふむ、なるほど。それはつまり―――
「む、無理無理無理無理っ!?いくらなんでもそれだけは無理だってば!?」
「え、ええ!?」
つまり、私の身体の前の方をコマに洗ってもらったりマッサージされてしまうという事、か……ヤバい、それだけはマジでヤバい。
後ろを洗ってもらうだけでも限界ギリギリだったのに……む、胸とかをさっきの調子で素手で洗われでもしたら……
「ど、どうしてそんなに拒否するのですか姉さま?私に全て委ねてくださると約束してくれたじゃありませんか。ふ、太ももやふくらはぎを特に重点的にマッサージしなければ筋肉痛だってすぐには良くはなりませんよ?」
「ど、どうしても何もダメったらダメッ!さ、流石に姉妹とはいえ前をコマに触られるなんて、恥ずかしいもん!?…………そ、それに……」
「それに?」
「ぅう……」
そ、それに……太ももやふくらはぎをマッサージしてもらうためにコマに前に回られたら…………ば、バレる、絶対バレる……
ど、どことは言わないけど……さっきのコマのマッサージで色んな意味で興奮しちゃったから…………ぬ、濡れてる……ことが、バレてしまう……
「い、いやさ!こ、コマの献身的なマッサージのお陰でお姉ちゃんもう筋肉痛が治ったしさ!後は自分で洗えるし平気だよ!ほ、ホラこの通り大丈夫!」
このままでは妹に欲情していたことが勘付かれる。それに私自身、もうこれ以上下手に刺激されたら自分で自分を抑えられる自信なんか一切ない。
そう思ってもう筋肉痛は治ったアピールをしようと、私は腰掛けていたバスチェアから勢いよく立ち上がり、
「~~~~~~~っ!?痛っ、たあああああああああ!!?」
そして当然治ってなどいない筋肉痛が私の全身に激痛を走らせる。あまりの痛みに動揺してしまい、まだ泡だらけの身体を洗い流していなかったせいで余計に滑りやすくなっていた洗い場で足をもつれてしまう。
そんな場所で足をもつれさせてしまえば当然足を滑らせてしまうだろうし、転倒だって免れないだろう。例に漏れず、つるっと足を滑らせて前のめりに倒れそうになる私。
「(ヤバ、い……!)」
自分の中の防衛本能が働き、思わず今までずっと閉じていた目を見開いてしまう。何とか頭だけでも守ろうと腕を前に出し、床との衝突に備えようと身構えた瞬間―――
「姉さま、危ない……っ!」
「え?」
反射神経抜群なコマが、転倒しかけた私を支えようと抱きついてくる。予期していた床との衝撃は、マシュマロみたいな柔らかな感触に代わった。
「姉さま!?大丈夫ですか姉さま!?」
「…………」
倒れ込む瞬間、私は確かに見た。ほんの一瞬だったけれども私の網膜にしっかりと焼き付いた。最愛の妹の、一糸纏わぬその姿を。
しっとりと濡れた美しい黒髪は、雪のように真っ白な肌に張り付いていた。
私を受け止めようとする長い腕は、程好く鍛えられおり超私好み。
中学生でありながらすでに女性らしい魅力的なラインを描く体型は、あまりにも艶やかで思わず生唾を飲み込んでしまう程。
そして……そして極めつけはよく実ったコマの二つの果実。重力に負けずお椀のような形を維持しているそれは私の駄肉とは違ってただ見ているだけで感動してしまう。
その果実の先端に付いたピンクの小さな蕾はとても綺麗で、何だか四月にコマと見た桜の花びらを思い出す。
その二つの果実の谷間に、私の頭は埋もれていた。これはつまるところ……私が転倒しないように、コマが自分の胸元をクッションのようにして、私の頭を押し付けてくれたということで……
「………こ、ま……」
「ね、姉さま!?何だか異様に身体が熱いですよ!?大丈夫なんですか!?」
「ありが、とう……いろんな……いみ、で……」
精一杯の感謝の言葉をコマに告げた瞬間、打ち止めしていたはずの私の鼻からプシャアアアアアアア!!っと盛大に音を立て、大量の血が噴水のように噴き出した。
「き、きゃあああああああああ!?ね、姉さま!?ち、血が……血がこんなに出て……!?しっかり、姉さましっかりして―――」
よ、よかった。ここが汚れてもすぐに洗うことが出来るお風呂で本当に良かった……
コマに裸のまま……それも生ちちの中で抱かれつつ、意識が闇に落ちてゆく寸前に一つ思う事がある。
……ゴメンねコマ。姉がこんな変態で。……どうやら私が立派な姉になるには、まだまだ先の事みたいだ、ね……
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