第6話 心音と美里とトム
ナンシーとキャサリンが、そんなやり取りをしている頃、トムは立て続けにクシャミをしていた。別に花粉症ということでも無さそうなのだが。
『誰かが、俺の悪口を言ってやがる』
トムにも第六感があるらしい。いや、トムはそれをテレパシーと称している。
「トム小父さん。来ていたのですか。トム小父さんが、応援をお願いしてくれたお姉さん達のおかげで、やっとミィーちゃんを救出することができました。ありがとうございます」
心音と太一が、子猫(ミィーちゃん)を抱いて帰ってきた。
「あっ、太一ちゃん、いらっしゃい。心音、ミィーちゃんを救出できてよかったね」
心音の母親が、心音とそのボーイフレンドである山本太一に声をかけた。
実は、心音の母親がトムの古い友人なのである。心音の母、美里(旧姓立花)と父、栗原隆一とトムは幼馴染で、とても仲の良い友人だった。
三人はトムを筆頭に隆一、美里の順で、それぞれ一学年ずれていた。よってトムと美里は二学年違う計算になる。
子供の頃から少し誇大妄想癖のあったトムは、三人のなかでは少し浮いた存在だった。年齢も美里と隆一の方が近かったこともあり、自然と心音の母と父が付き合うようになったのである。
トムは、二人を祝福しながらも少し浮いている自分を自覚して、高校を卒業後は敢えて少し距離を置いていた。
三年前、心音の父隆一が交通事故にあったと聞くまでは……事故の一報を聞いて、すぐさま病院へ駆けつけたのだが、すでに心音の父隆一は亡くなっており、悲嘆にくれる心音の母美里と心音を見たのだった。
それ以来、この親子を側面から何かと支援してきたのである。
不幸中の幸いというべきなのか、隆一は完全な被害者だった。そのため十分な補償もあり、また隆一自身の生命保険もあって、トムが金銭面での支援をする必要はなかった。
「心音ちゃん、どうだい、トムズキャットのメンバーの実力は。これから、もっともっと大きなミッションを、遂行して貰わなければならないからね」
トムは今回の件を通して、キャサリンとナンシーの実力を見ようとしていた。早々にミッションをクリアしたことで、一応の合格と言えそうだ。
「しっかり者のキャサリンさんと、意外性のナンシーさんて感じかな。でも、トム小父さん。キャサリンとナンシーってコードネーム、やっぱりあれから取ったの?」
「ああ、可愛い名前だから、ピッタリだと思ったんだよ」
トムがにっこりとして、心音に答える。
「プッ」
心音の母美里は、それを聞いて吹きだしてしまった。血の繋がりとは不思議なもので、母子で同じ反応をしているのである。
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