十章 李特雄飛
第八十七回 姜發兄弟は関心と蜀を避く
「お前たち兄弟が願うとおり、劉氏の血を引く者を蜀の君主に推し立て、ともに尊崇しよう」
これは趙廞にとって一時の方便、趙王の意を受けた
その姜發は趙廞の甘言に乗って
「劉氏はすでに滅び、その子孫も残ってはおらぬ。
その言葉を聞くと姜發は無言で席を立った。その後、弟の姜飛に語って言う。
「趙廞も所詮は匹夫、四方から流民を集める
姜飛も同じて言う。
「趙廞は
「それはならん。人より大事を託され、その人を殺したとすれば不義になる。それに趙廞には
※
姜發の言葉が終わると、外に訪れる客があり、
「
客の顔を見た姜發は
「
「某は
▼「金蘭の交わり」は親密な友人関係を言う。
姜發はようやく思い出して言う。
「
▼「総角」は伸ばした髪を左右に分けて耳の上で括って垂らす髪型、主に少年が結う。
それよりしばらく、姜氏の兄弟と関心の三人は来し方行く末を思って落涙したことであった。しばらくすると、関心が涙を払って言う。
「某が幼年にして四人の兄と生き別れになった理由は、母とともに外家にあったがゆえです。
それを聞いた姜發は喜んで言う。
「吾は蜀漢を復興したい一心を趙廞に付け込まれ、徒に力を労しました。しかし、蜀の民は劉氏の旧主を慕って懐いてはおりません。
関心は言う。
「実はそのことで訪ねて参ったのです。先に家兄の
姜氏の兄弟は大いに喜び、姜發が約して言う。
「それならば、
その後、姜氏の兄弟は
姿を変えたのは、姿を消したと知った趙廞が追手をかけることを懼れたからであった。
三人は
▼『後傳』、『通俗』ともに三人の経路は「上郡、河州、太原」の順に進んだと記すが、上郡は
※
翌日、趙廞は午後になっても姜發が宰相府に入らないことを怪しみ、使いを出して呼び出したが、使者が帰って告げ報せる。
「姜家の兄弟は昨夜のうちに姿を消しました。
趙廞はそれを聞くと左右の手を失ったかのように驚いて言う。
「昨日、姜發は故郷の縁者を招いたと聞く。そこで身を脱する謀をなしたのであろう。早馬を四路に飛ばせばまだ追いつけよう。はやく
使いが駆け出すと、ほどなく李特が入って来た。
「姜發兄弟が昨夜から姿を消した。まだ遠くへは行っておらぬ。追手を出して連れ戻そうと思うが、この計はいかがであろうか」
李特は内心で蜀を我が物にしようと考えていたが、姜發兄弟が趙廞の左右にあるがゆえに
「姜家の兄弟を主公は手厚く遇されていました。それは重々承知しておりますが、彼の心はあくまで劉氏にあり、ゆえに主公の命に従わなかったのです。それならば、彼を連れ戻したとしても、主公のために尽力することはありますまい。そのうえ、劉氏の一族を見つければ、すぐさま敵ともなりましょう。今や姜氏兄弟の事は成ろうとしており、追手をかけても無益なことです。たとえ連れ戻したとしても、いわゆる『虎を養って身の守りとする』ようなもので、吉と出るか凶と出るかは分かりません」
趙廞はついに李特の進言を納れ、姜發に追手をかけることを諦めたことであった。
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