第四十九回 張華は賢士を挙げ薦む
二人は朝議によって挙げられ、陸機は皇太子の主席幕僚である
陸雲が着任するとその判断は明決、上下は粛然として市場に値段を吹っかける者なく、道に落ちた物さえ拾って
ついに陸雲は
※
陸氏兄弟のほか、
その索靖もついに張華と裴頠の誠心を感じて官職に就き、統治に携わるようになった。しかし、
「この銅駝が
笑って言ったものの、言い終わると索靖の目に涙が溢れた。索靖は張華と裴頠に書を遺して次のように諌めた。
「人は禍を避けることを上策とします。早く官職を辞して禍を免れられよ」
その書に接しても、張華と裴頠は官職を捨てることを思わなかった。
また、
※
張華と裴頠の二人は国政に心身を投じて顧みず、忠を尽くして晋帝を輔翼した。賈后の一族である賈模もまた晋の治世を憂えており、かならず二人に事を諮り、同心して皇室を
「今、天下太平とはいえ、政事が宜しきを得ているとは言えません。賈后を政事に関与させず、聡明な太子を天子に迎えれば、二公の力で政事を正すこともできましょうに」
賈模が賈后の一族であることもあり、二人は試されているかと恐れて何も言わなかった。傍らに控えていた宦者が賈后の側近を務める宦官の
皇太子の
この時、賈模もまた皇太子の聡明を
「皇太子は知恵があり、百官は
賈后の問いに李己が応じる。
「近頃、皇太子は自らの聡明を誇って師保の言葉に従わず、近侍の甘言のみ聞いて天子の威儀を失っております。以前とは随分と様相が異なって参りました。このことを利して太子を
「急いではなりません。一計を設けていよいよ皇太子の
劉才がさらにそう言い、賈后は喜んで二人に計略を施すように命じた。
※
李己と劉才の二人は偽って皇太子の近くに侍り、多くの金銀を奉じてその聡明を覆い、左右の者たちにも
「四海の富は殿下の有に帰するもの、天下に一人の御身でございます。朝廷においては聖上の後見にあたられ、百官は自ずから崇め奉り申し上げるのみ、何事につけても御心づかいなどなさる必要はありません。御年も青春の盛りにあり、楽しみを尽くさずしてどうなさいますか。
皇太子はそれを聞くと言う。
「その言葉は不可である。聖上のお耳に入っては、必ず罪責を被ろう。
「これほどの深宮の奥にあっては、
李己と劉才は言葉を尽くし、皇太子はその奸言に絡め取られていった。
それより、皇太子は
このことはすぐさま百官の知るところとなり、誰もが眉を
「皇太子に似合わぬ戯れ、卑賤の
さらに悪評を募らせるべく賈后は宮人に利益を銭銀に替えてその能を賞賛させた。ついに以前の令誉は失われ、いつしか悪評だけが聞かれるようになった。
※
▼太子洗馬は皇太子の侍従の官、洗馬は「前馬」つまり「前駆」の意である。
「殿下は皇后の血を分けた実子ではございませんが、
皇太子はそれを読んで怒り、杜錫と
これより、皇太子に諫言をおこなう者はいなくなった。
※
賈后は頃合よしと見て皇太子を斥けようと計っていたが、折から賈后の生母、郭氏が後宮を訪れた。郭氏は名を
「妾は不幸にも男児がなく、子供はお前たち姉妹だけです。お前も子がありませんが、まだ年若く、行いを正して善事を積み、天道に叶えば男児を授かることもできましょう。しかし、お前の行いを見るに、皇太子が吾が子でないことが不満なようですね。男児を授からないのは、天数であってお前の行いによるもの、他人を怨んだとて無益です。妾は老境にあり、多くの事を経て物事の善悪を見てきました。お前は恩を施して皇太子と好情を結びなさい。吾が児を
賈后に謁見した郭氏はそう言って教導したが、賈后は聞き捨てたことであった。
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