第17話「ママオラ海を血に染めて」
一方そのころ、監視塔のある魔王たちのもとにはおそばせながら、ミネが送った空中部隊がたどり着いていた。
「わ、わたすが、この部隊を率いてるスーパーモモンガのエコーです。久しぶりでございます、魔王様。」
「…あんま可愛くないんだな。」
スーパーモモンガはモモンガとは想像できないくらいスマート体形をしており、全身タイツの人間が全身にフクロモモンガの羽を身につけたかのような風貌をしてる。
スーパーモモンガは両足、両手を目一杯広げれば、全身が正方形の風呂敷にになるようになっていて、魔力を使って垂直方向に上昇したのち、滑空によって空を飛ぶ。
エコーは目元がきりっとしていて、口元もつり上がっていて、しゃべり方は緊張のせいかおかしいが、モモンガ的なかわいらしさは全くなかった。
「…あつ、可愛くはないです。す、すいません。」
なぜかスーパーモモンガエコーは謝った。
「軍団で一番早いと聞いたがどうなんだ?」
「…えっと、長時間という点ではドラゴン様に勝てないですが、瞬間的になら時速400㎞くらい出せます。そのスピードで羽を相手に切りつけるのが我々の戦法です。」
「じ、時速400㎞はすごいな。」
「あっでも、わたすだけです。部下は早いやつで300㎞くらいです。それにその速度で行けるのは200mくらいですので、ドラゴン様には勝てねぇです。」
(それでもすごいスピードだな。スーパーモモンガって名前でなめてかかっていたが、ミネの団にもすごい奴いるじゃないか。)
スーパーモモンガ500匹をを400㎞で全員で特攻させれば、艦隊は落とせそうだが、そのあとの風当たりの強さや、優秀な部隊を失うのを考えると得策とは言いづらかった。
(ま、最悪そうするのもやむを得ないが。)
「ドラゴンたちはあとどのくらいで治りそうだ。」
鋼華はクールに尋ねた。
「一度、竜巻を起こすのに魔力使ってますからな、6時間は見てほしいです。」
6時間、いくら相手の足止めを成功したとはいえ、6時間もあればシャフト艦隊も再起動するだろう…。待つ余裕があるだろうか。できることなら、艦隊が足を止めてるうちに、奴らをつぶしたいと鋼華は思った。
「ゴーガ様、我々スモモ部隊(スーパーモモンガのこと)をはじめ、空中部隊はいつでも行けますよ」
意気揚々とエコーが話す。
「いくら高速でも、君たちの羽で艦隊を傷つけけられるとは思えん。他のデスバトロスとアイアンバーディーも見たところ、翼と爪とくちばしの斬撃攻撃だろう?ドラゴンの炎に耐える装甲を、切りつける攻撃で何とかできるか?」
今欲しいのは打撃による攻撃で、斬撃は正直いらなかった。
「うっ、それは…。」
エコーは言葉を詰まらせた。
部下の空中軍団は何も考えてないようだ。
(この際、特攻でもいいかもなぁ…。全滅よりはましだ。)
そんな、太平洋戦争の末期の大日本のようなことを考えていると、
今まで何も言わなかったピアニッシモが、指をさしながら言った。
「あれ使えませんか?」
「…おぉ!」
ピアニッシモが、指をさしていたのは、破壊されてしまった監視台の多量のがれきだった。
鋼華たちは考えた。今までの状況を察するに、敵のオリオン弾(もちろん名前など知らないが)の射程は上空に向けた場合、1000mに届かないだろうと。
ならば1000mの高さから、スーパーモモンガ軍団全軍にて、監視塔のがれきを落下させれば、高さによる位置エネルギーとがれきの重さによって、艦艇を叩き潰すことはできるはず。
万が一敵の射程が届いた場合でも、スーパーモモンガの速さならば当てることは難しいに違いない。
ドラゴンでもこの作戦はできたが、いかんせん数が足りない。
ミネの軍団を念のために送っておいてもらって本当によかったと鋼華は思った。
正直なところ、ミネの部隊はいらないなと思っていた自分を恥じた。
「うまくいった暁にはエコーは魔団長だ。」
あくまで、オリオン弾の射程が1000mないことは想像に過ぎない。彼ら空中部隊が危険な任務に就くことに変わりはないので、それに見合う褒美を用意したかった。
「本当ですか?わたすたち必ずうまくやります。」
そうして、スーパーモモンガ軍団及び空中軍団は、監視塔の破片を手にして、あるいは口にくわえて飛び立っていった。
カプリと、ヴォーグの背に乗った鋼華も射程に近づかない距離で作戦の様子を見るため飛び立った。
万が一、作戦をあと少しのところでしくじった場合とどめを刺すのはやはり、軍団長の、そしてトップたるものの役目だと豪華は判断した。
うずまきの衝突による機関の停止から2時間、急ピッチで艦艇の修理は行われていた。思った以上に早く治りそうだと、クルーたちは安堵していたがその時!
ガツーンっ、がつーーんっ!
鈍い音が艦内を先ほどの僚艦との接触と同じように響かせていた。
小刻みに揺れる船内。
がっつーーん!
さらに時折非常に大きな音と衝撃が艦内を襲った。
この音はひっきりなしに続いた。
哨戒にあたっていた防衛隊員はいち早く空中を舞うスーパーモモンガの部隊に気づき、機銃を掃射したが、数匹のスーパーモモンガをしとめるにとどまった。しかも倒したモモンガが、真っ逆さまに落ちてきて、さらに艦隊に衝撃を与えた。
やがて、岩攻撃は敵の銃座を破壊し、艦艇に穴をあけることに成功した。
この攻撃が休まず続き、魔族の作戦は成功した。
2隻が沈み、2隻は完全に砲撃部分を損傷して攻撃能力を失ったのだ。
「うまくいきましたね。」
空を舞うヴォーグの上でピアニッシモはそういう。
ピアニッシモが暗示した作戦により確かにものすごくうまくいった。
果たして今までに何回ピアニッシモに助けられたろう。要所要所でピアニッシモの手助けがあった気がする。
そんなことを思いながら鋼華は、ふと、シャフトの艦隊の一隻に目が行った。
「飛行甲板??」
一隻の船だけやたら、平らな部分が多かった。飛行機こそ目につかなかったが。
そしてその時、耳がいいということで有名なエコーが誰より早く、ぶぉーーーーっという音を耳にして叫んだ。
「ヴォーグ様!!上です―――!!」
声とともに、上空から何かが落ちてきた!
黒いまがまがしい物体が恐ろしいスピードで落ちてくる。
「爆弾!!!!」
カッ!!
思った時には、周囲を閃光が走り、爆音が響いていた。
豪華は死んだと思った。
生きていた。
そして、大きな音に耳をふさがれながらも、鋼華の視界にはボロボロのドラゴンが海上に落ちていくがおぼろげに目に映った。
「カプリ―――――!!!」
ヴォーグは大きな声をあげて、大切な親友の名前を叫んだ。
寡黙にして偉大なダークネスドラゴンカプリはとっさに鋼華とヴォーグをかばい爆撃のすべてをうけ、爆死した。
ママオラ海を漆黒の血で染めて、カプリは死んだ。
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