第12話「魔王の判断」
「緊急で調査チームを派遣しよう。現場まではどのくらいの距離だ。」
「ここから、4000㎞くらいの距離です。」
ピアニッシモはすかさず答える。
「ヴォーグ、ドラゴンで飛んでどのくらいかかる。」
「うーーん、休まず飛べば1日で着くと思う。」
(一日か、思ったよりかかるな。問題は調査チームの編成。監視塔を破壊したのは、シャフトの火薬を用いた武器だろう。そうなると魔族で分かるやつはいないか。)
鋼華は小声でルーシアに聞いた。
「俺は、開発部隊っていうのは作ったんだっけか。」
「…いえ、そういうのはいませんけど。」
(…今後、開発スタッフを探してくる必要があるな。)
(さて、あぁ気が進まないけど仕方ない。)
「調査には私自ら赴くことにする。」
再びざわつく席上。
「反対です!たかが一つの監視塔を破壊されただけで、なぜその必要があるのですか。」
真っ先に異議を唱えたのは、魔導団長クール。
「そうです、ましてや魔王様は力を失われております。」
ダンヒルがそれに続く。
「…言いたいことはわかるが、これは、かなりの危機的事態なのだ。」
(きっと魔族にはわからないだろうが、監視塔を破壊した手段によっては…。思った以上にシャフトの文明が進んでると判断しなくてはならない。)
「早急に現場で調査して、私自ら判断する必要がある。場合によってはそのままシャフトと戦争になる。お前らが何と言おうと私は向かうぞ。」
「ゴーガ様ぁぁっ。そんなぁ。」
すぐに、涙声になるヴォーグ、過剰に魔王を心配してしまうのが彼の
「…心配しなくても調査だからな、大事にならないと思うが。
それにヴォーグと一緒なら心配ということもないだろう。」
「えっ、僕一緒に行っていいの?」
泣き顔が一瞬で笑顔になった。
(当たり前だろ、一番強いやつといっしょじゃなきゃ誰が行くかよ。)
「もちろんだ、今の私に力がない以上、頼りにしてるぞ。」
「もちろんです、任されました。大風呂に入った気でいてください!」
うれしそうに、自信満々でヴォーグが言った。
(なんだよ、大風呂って…。元ネタもわかんねぇよ。)
「ドラゴンは何竜用意できる?」
「うーんと三竜はこの間の矢の攻撃で少し負傷中、二竜はデザス王国付近に置いておきたいから、五竜ですかね。」
「五か…、竜族はしかし絶対数少ないなぁ。もっと数を増やせないのか?」
「僕らは卵がかえるのに10年かかるんです。この間僕が産んだ卵がかえるのにあと9年、一番早い卵でもカプリが産んだ卵で3年後かなぁ。」
竜族は交尾を行わず、50年ごとに自分の卵をひとつずつ産む。生殖能力の低い種族だといえる。種全体の優位性はあるいは、オークの方が上なのかもしれない。
詳しくはピアニッシモレポートを待とう。
「竜の上には何人乗れる?」
「二人です、それ以上はだいぶスピードが落ちちゃいます。」
「そうなると部隊は全部で10人…。いや、ヴォーグを合わせて12か。」
いくら調査部隊とはいえ少なすぎるメンバーだ。
すると、ピアニッシモが手をあげた。
「私の部隊に、空を飛べるデスバトロスとアイアンバーディー、スーパーモモンガが500位づついますので、あとを追わせましょう。ドラゴンほど早くはありませんが、数は多いほうがいいでしょう。」
ピアニッシモを通じて、ミネから申し出があった。
コルド大陸からなら、本国よりシャフトに近いので、多少スピードが遅くても我々に追いつくことができるだろう。
「そうだな、派兵してくれ。そいつらの統率力は大丈夫か。」
(あと、スーパーモモンガってのは戦力になるのだろうか…。弱そうだけど。)
「六魔団軍団の団長候補のエコーがいますので、エコーに任せましょう。」
「初耳だな、エコーは強いのか。」
「以前推薦したと思いますがな…。スーパーモモンガの中で一番の速さと耳の良さを誇っています。頭も切れるので、あらたに飛行軍団を創設した時にはまとめてもらいたいと思っとります。」
「えっ…、エコーはスーパーモモンガなのか…?」
「そうです、スーパーモモンガのエコーをぜひお見知りおきください。」
(こういってはなんだが、ミネの部隊って弱そうなの多いな。そもそもミネ自身の実力がわからない。所詮亀だしな、最初に会った時も、もしこいつだけが対面してたなら正直ビビらなかっただろう。いまでも、ミネだけには勝てる気がする。)
「とにかく頼んだぞ。」
「承知しました。」
「あと、クールにも一緒に来てもらいたい。それから、遠距離攻撃ができる魔導士を9人頼みたいのだが。」
万が一戦闘になるとすれば、海上戦だ。力の軍団の出番はないといえる。
「はっ、ありがたき幸せ。選りすぐりの9人を連れていきましょうぞ。ま、正直私一人いれば十分だといっておきますが。」
クールはいつものビッグマウスを忘れない。
「ダンヒルは本国メンフィスの防衛を頼む。私のいない間、城のすべてはお前に任せる。大丈夫か。」
「はい。お任せください。」
ダンヒルを選んだのは、無口で忠実そうだからだ。留守の間に勝手に動くような奴では困る。あと、これはもうただのイメージだが、頼りがいがあるからだ。魔王がいなくてもダンヒルがいれば、魔物も安心するだろう。
「ピアニッシモは私と一緒に来てくれ。何か報告があったら逐一報告しろ。」
「あっもちろんです。魔王様と一緒なんて嬉しいです。」
「私は連れてってくれないのですか?」
「ルーシアは留守番しててくれ、城を頼む。」
「…はーい。」
残念ながらルーシアは戦闘要員ではないため、連れていくわけにはいかなかった。
「では、行くぞ!」
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