幕間劇 01

 これで、この世界はおしまい。

 ……え?今まで彼が出会ってきた人間や、眠りの国、そして紙縒の国の盗人の城はどうなったかって?

 それはもう、気にする必要はないんだ。そこは本来、彼にとって無意味な部分。彼が真に求めているのは、前世で生まれ変わりを誓った彼女の存在。

 でも、彼が見てきたこの世界に、彼女は存在しなかった。

 悲しいね。彼は神に敵対し、勝利出来るほどの絶大な力を持っていたにもかかわらず、この世界を簡単に救えてしまうほどの力を持っているにもかかわらず、そうすることを面倒くさいと一蹴し、前世の彼女を探すためだけに使った。

 本当に、前世の彼女なんて、いたのかな?

 いや、いたことはいたんだ。それは僕が保証しよう。こんな突然語り部になった僕のような存在を信じてくれるなら、ね。

 本当にいたんだよ。

 でも、ちょっと上を読んでくれるかな。

 彼は、前世で生まれ変わりを誓った、と僕は言った。でも、彼女は前世で生まれ変わりを誓ったと、僕は言ったかい?

 全ての食い違いは、そこから始まるんだ。

 いや、始めから食い違いさえもなかった。それは単純な彼の思い違い。身も蓋もない言い方をすれば、妄想でしかなかった。

 僕は彼にそんな生き方を望んでやいなかった。

 でも、前の世界で彼はちょっと壊れてしまったんだ。狂ってしまったんだ。それを僕以外の何物かが不憫に思ったのか、彼をちょっとバグらせてしまった。

 困ったのは僕の方さ。

 前世の記憶を持って転生するのは決して珍しいことではないけれど、前世の世界に固執して、その世界で行うべき定めを見失ってしまった。

 彼は、世界を救う救世主を演じてもらうはずだったのに。

 救世主となって、この退屈な世界を生き続けてもらいたかったのに。

 今となってはもう、彼がこの世界にい続ける必要もないって訳。だから、彼の話はもうここでおしまい。この世界も、また別の誰かに入ってもらって、世界を救う仕事をやってもらおうかな、って思ってる。

 僕の名前?

 いやいや、もう皆分かるでしょう?

 僕は魔神ディダバオーハ、と呼ばれている存在。

 別に魔神でも太陽神でもどっちでもいいんだけどさ。何て呼ばれても、やることは変わらないから。

 やること?

 この世界を退屈なものにしないこと。

 この世界をスリリングでインタレスティングな世界に留め続けること。

 最後に僕は倒されて、この世界にハッピーエンドを迎えさせる。そうして彼や、彼と同じような人間たちを満足させること。

 それが、僕の役目。

 ……だったんだけどなァ。

 何物かが、彼にバグを与えてしまったために、僕はてんてこ舞いだよ。

 今や彼は、この世界の正体を気づき始めている。世界を救う前に、この世界が何かおかしいということに気づいてしまっている。

 困ったものだけれど、後戻りはできない。

 それじゃあ、そろそろ彼がやってくるだろうから、僕はこれで。

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