第150話「夜宴の贄」

「うぅ……紗耶華教導官の命令とは言え、こんな夜中に事件の犯人探しをするなんて――」

「文句を言わない。寧ろコレはチャンスよ。私達が犯人を捕まえたらそれだけ評価も上がるのよ? 一躍在学中に部隊入りも叶うかもしれない」

「在学中に部隊入りって……それ出来たの紗耶華さん達教導官クラスのエリート中のエリートばっかりでしょ。あの神門紫電様もそうだって聞くし」


 時刻はちょうど22時頃。

 雲により見え隠れする月明かりを頼りに、交換留学生である退魔師3人が辺りを警戒しながら探索をしている。

 その姿は捜査と言うよりは肝試しにきた年頃の少女のそれであり、とても頼りになる様には見えない。

 リーダー格の赤毛の少女も口では勇ましい言葉を吐いているが、腰は完全に引けており二人に自分の前を歩かせることによって漸く最低限の威厳を保てている状態だった。


「い、何れ私も入るんだから。何せ私は『輪廻』の血が流れているのだし。と言うか貴女、紫電様にお会いしたことがあるの?!」

「昔、お姉ちゃんが部下だった時期があって、その時にちょこっとだけ」

「くぅ~、私でも遠くで見かけるくらいしかないのにぃ~!!」

「ね、ね? 紫電様ってあの滅茶苦茶イケメンな人?」


 恐怖を紛らわせる為か、三人の話は異性の話に話題が移る。

 退魔師の卵ではあるが、年頃の少女である事に変わりはないのだ。

 その話題に飛びつくのは必然とも言える。


「イケメンもイケメン、超イケメン。あの鉄のような視線で射抜かれたもう、たまらないわよ。あの人が亜人部隊の隊長になったせいで、女性の亜人部隊配属希望が10倍以上になったって噂なんだから」

「でも昔あった時はもっと優しい顔をしてたような――」


 イケメンの話題で彼女達が盛り上がる中。

 その側にふらっと人影が現れる。


「――すまないキミ達、今私は人を探しているのだが見なかっただろうか?」

「はぁ?! 今私たちは任務で忙しいの、人探しなら他を当たってよね!!」

「いや、そうも行かない。キミ達には餌になってもらうのだから」


 雲の切れ間から、月光が差し込みその者の姿を映し出す。

 桜の様な薄いピンクの髪、その体は男を誘惑する為に存在するかの様な妖艶さ。

 彼女らは一目でその妖魔が、自分達が探している夢魔の妖魔だと気づく。


「サキュバスっ!?」

「行くわよ。――起動イグニ……」


 少女たちは直ぐ様装甲戦機を起動させようとする。

 だが、すでに遅く。


「あぁ、すまない。既に魅了させてもらった」


 起動キーを押す前に、彼女達の指は止まる。

 ただスイッチを押すだけの指令すら阻まれ、彼女達の手から次々とキーが零れ落ちていく。


「しかし何度やっても思い通りに行くな。ただ指を支配すればいいだけなど、簡単過ぎるにも程がある。なあ、我らのかたき達よ、この程度で屈するなど情けないとは思わないのか?」

「くそっ、なんだコレ?! 自分の手なのに全然動かない?!」

「嘘?! いつ掛かったの?! 全く予兆とかなかったんだけど?!」


 退魔師の少女達はキーを押そうとしている状態から、何とか抜け出そうと藻掻く。

 しかし体の主導権は既に夢魔に奪われており、まともに体を動かすことすら出来なかった。


「視線、匂い、声、そしてこんな間近で私の妖気を浴びて無事なわけ無いだろう? 何より――」


 夢魔は無遠慮に三人のうちの一人に近づく。

 そして少女の胸を鷲掴みにした。


相手じゃないんだ。色を覚えたての生娘くらい、堕とすことくらい造作もない事象だ」

「ひゃぁ!! な、なにこれ?! 私の体に何をしたの?!」

「何をした、か。何をしているのだと思う?」


 力任せに掴んだかと思えば、そっと優しくソフトタッチで触れる。

 ただそれだけの動作で少女は上気した顔で身悶えする。

 まるで媚薬でも盛られたかの様に異常なレベルで発情しているのだ。


「この、変態っ。ど、どこ触って――――ひぅっ?!」

「変態? では聞くが仲間のかたきである妖魔わたしに胸を掴まれ、ここをこんなに固くしているキミは変態ではないのか?」


 そう言いながら夢魔は固くなった胸の頭頂部を指で弾く。

 それによって少女はビクビクと電撃が走ったかの様に体を軽く痙攣させた。


「なに……これ? 何なのよコレ?!」


 少女はもじもじと太腿をこすり合わせ悶える。

 体も腰が引けた状態になっており、今にも座り込みそうな様相になっていた。

 だがそれは許されない。

 今彼女の体は夢魔によって支配されており、夢魔が座り込む事を許可していないからだ。


「フフッ、次はそこを触ってほしいのだね」


 耳元で甘く囁きながら、夢魔は視線を少女の下腹部に視線を送る。

 少女はその視線に顔を真赤にしながらも、どこか期待するかの様に閉じた足を少し開いた。


「ち、ちがっ、そんな訳ないじゃない!!」

「そうか、では止めよう」

「え?」

「嫌なのだろう? それとも期待していたのかな?」

「それ、は――――んぅ?!」


 スカートの裾から覗く太腿には一筋の雫が流れ落ちており、夢魔はそれを確認しながら胸を触り続けた。

 少女は官能に身を震わせながらも、為すがままとなっている。

 抵抗は口だけであり、その反抗の意思さえもなけなしの理性と羞恥で守られているだけだ。


「さあ、どうされたい? 夢魔わたしならキミの欲望の赴くまま、いくらでも快楽を与えてあげよう」


 触れるか触れない程度の力で、カリカリと少女の胸の頭頂部付近を引っ掻きながら 夢魔は甘い誘惑を口にする。

 それは快楽と言うには弱く、しかし無視できない微弱な刺激を少女に与え続ける。

 もどかしさしか生まないその行為に、少女の息は徐々に荒くなっていく。

 焦らされている事に対する期待感を表す様に、止めどなく溢れる雫が太腿を伝い流れ落ち続ける。

 やがて――。


「…………て下さい」


 滴り落ちる雫が靴下を変色させるほど濡らした頃。

 少女は短く呼吸を繰り返しながら、小さく呟く。

 体は小刻みに震えており、誰がどうみても限界だった。


「おねだりはもっと大きな声で、懇願しないと……ね」


 夢魔は少女の頬を伝う涙を舐め取りながら、下腹部あたりを意識させる様になぞり続ける。

 臍を隅々まで触れ、その下辺りを指軽く沈み込ませてそこに在る臓器に刺激を与えるかの様に指を動かす。


「さ、触って……触って下さい!!」

「どこをだい?」

「あそこを……私のあそこを掻き回して下さい!!」


 夢魔は妖艶に笑うと、少女の下着の中に手を突っ込んだ。

 それだけで少女は弓なりに反り返り、体を痙攣させる。

 水分を吸収しきれなくなった下着からはダムが決壊するかの様に液体が溢れ出し、夢魔の腕を濡らしていく。

 だが夢魔は構う事なく荒々しく指をねじ込み続ける。


「ひっ――?!」


 側でその光景を見ていた赤毛の少女は、グシャグシャに濡れた顔で引きつった声を上げた。

 仲間である少女から聞いた事もない様な嬌声ひめいが、憚る事無く響き渡っている。

 夢魔がねじり込んでいる指を動かすたび、拷問でもされているかの様に体を跳ね上げ痙攣させる。

 何より見知った顔が知らない雌の顔に変貌していく事が、何よりも恐怖を植え付けるのだ。

 魅了により、目を逸らす事も耳を塞ぐ事も禁じられており、少女に出来る事は速くこの悪夢が覚める事を祈るだけである。


「あぁ、キミ達のことを忘れたわけではないから安心してほしい。だが、見ているだけでは辛いだろうから、自分で自分を慰めることだけは許可しよう」


 夢魔がそう言うや否や、残る少女たち2人は自ら見せつける様に股を開き始めた。

 スカートを自らの口で咥え、マヌケな体勢で下着を晒す。

 そして己の腕が虫にでもなったかの様に、ぞわりぞわりと己のが体を這い回ってゆき。

 それぞれの獲物の場所に辿り着くと、乱暴に貪り始めた。


「や、やめて――っ?! 私はこんなこと、したくない!!」


 三人の嬌声と夢魔の笑い声が木霊する中、その宴はいつまでも続くのであった。

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