海 6

 輝たちが屋敷に帰って勉強を始めると、そこへミシェル先生が帰ってきた。少し怖い顔をしているのは、おそらく輝たちが助けを求めずに戦ってしまったせいだろう。

「いいのですよ、勉強を始めなさい」

 ミシェル先生はすました顔で輝たちの横に座って宿題をやる様子を見始めた。緊張する。輝たちは冷や汗をかきながら宿題を済ませる羽目になった。

 ようやく宿題を終えてなんとか一息つくと、芳江がお茶を出してくれた。今、イーグニスがマルコと一緒に夕食の準備をしてくれている。夕食までの時間、輝たちはトレーニングをする時間だったが、今日はミシェル先生に止められた。

「実戦の後です。休みなさい」

 そう言われたので、輝たちは諦めてそこでお茶をすることにした。お菓子は、芳江と仲良くなって意気投合した実花の母・瑞希(みずき)が作っておいてくれた。

「あ、パンケーキ! このところご無沙汰だったね!」

 町子は嬉しそうにパンケーキを頬張った。他の皆の分もあり、瑞希の使った粉の量を考えると、大変だったことがうかがえた。

 そんなときに、ケンが往診から帰ってきた。彼は町子たちに挨拶をすると、真っ先にナギのいる部屋へと入っていった。

 そして、ナギ一人だけを連れ出すと、そのまま待たせてあったタクシーでどこかへ行ってしまった。そのあとしばらくして、台所からいい香りがしだすと、医学会からの帰りであるアースとフォーラが戻ってきた。

「ナギが、ケンと?」 

 そこにいたみんなの話を聞いて、アースは驚いた。ケンがナギをあああいう形で誘うことはめったにないからだ。変に思ったのはアースだけではない。輝たちもだ。

「ケンさんは、ナギ先生にくっついていることはあっても、ナギ先生をエスコートするタイプじゃない気がするんです。デートにしては急いでいたし、服もその、往診から帰ってきたばかりで着替えてもいなくて。変でしょう」

 メリッサはよく見ている。皆が驚くくらい自分や他人のことをよく知っていた。

 そのメリッサの言葉を受けて、少し考えていたフォーラがハッと気づいて皆を見渡した。

「今日、何かあったの、あなたたち?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る