託されたもの 7
夕暮れ迫る空を眺めながら、イクシリアは大きな穴の開いた道路を眺めていた。大きなハンマーによる傷跡は痛々しかった。周りにはコーンが置かれて立ち入り禁止のテープが張られていた。まだ、深いその穴を埋めるだけの土が用意されていない。現場はそのまま残されていた。
その穴は、何が原因で出来たのか、それを追求する者はいなかった。ただ、高橋輝の周りの人間だけが、それを知っていた。
「不思議な子、高橋輝」
イクシリアは、輝を思い浮かべながら笑った。周りには誰もいない。メリッサの家が近かったが、出てくる人影はいなかった。
立ち入り禁止のテープをくぐり、穴の淵に立つと、それが恐ろしく深いことが手に取るようにわかった。壮絶な戦いだったのだろう。そう言うことがすぐに分かるほどに、深く荒々しかった。
「時よ、少しだけその足を進め、定住の地を目指しなさい」
イクシリアは、青い砂の入った小瓶を取り出して、小瓶のふたを開けた。そして、その中の砂を穴の中にさらさらと落としていった。
「明日になれば結果が分かる。この地の人間がどういう人間なのか」
そう言い捨てて、イクシリアはその地を去った。
夕日は、とうに暮れていた。
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